朝ドラ60年「おかえりモネ」 大震災10年と天気と循環【記者 透視眼】2021年6月1日
NHK朝ドラが始まってからちょうど60年。「還暦」を迎えた104作目は「おかえりモネ。大震災から10年、舞台は東北・宮城だ。気候変動が話題となる中、記者の〈透視眼〉からは気象と地域と自然循環の物語が見えてくる。
海と山を結ぶ自然循環
番組テーマは国連の持続可能開発目標のSDGsとも絡む自然循環の視点が潜む。東北・三陸沿岸の島に生まれたモネが山間部で働き始める。牡蠣養殖の名人・祖父の龍己が言う。「海と山はつながっていて恵みをもたらす」と。
今週は「あの日」の場面も
今週の「おかえりモネ」は、森林組合に勤める主人公が、気象急変に伴い山で豪雨に見舞われたことをきっかけに、いよいよテーマの気象予報士に興味を持つ。
夏の休暇で海に囲まれた実家に帰る。モネは懐かしい人々と交わる中で、故郷を巨大津波が襲う2011年3月11日の「あの日」の出来事を思い浮かべる。
実は、朝ドラと関連し、5月27日、甲子園でプロ初勝利を手にした19歳の速球163キロの記録を持つロッテ・佐々木朗希投手の活躍と重なった。岩手・陸前高田出身で10年前の「あの日」、津波で父と祖父母を失った。佐々木が亡き父も考えウイニングボールを「両親に渡したい」と答え、その話を聞き母親は号泣したという。
今なお被災者にさまざまな葛藤を残す大震災の傷跡。番組でどう描くも注目したい。
清々しい朝日と〈観天望気〉
番組は朝ドラにふさわしく、雨後の雲の切れ間からやさしい日差しが濡れた体を包み込む暖色にあふれる。雨のち曇り、時々晴れとまるで人模様、人生を示唆するようだ。
番組ラストの「観天望気」という小コーナーにもにやりとする。気象用語でもあるこの四字熟語は奥深い。政治。経済の先読みとも絡む。周囲の気配を肌で敏感に感じ取りながら〈次〉を見通す。この四字は奥深い。
コラムの題材は分かりやすく共感を得るのが一番だ。蕩々と自説を述べる独りよがりはなるべく避けたい。そこで誰でも目にするNHK朝ドラや大河などは格好のテーマとなる。大河「青天を衝け」の渋沢栄一などは典型だ。ただ前作朝ドラ「おちょやん」はお笑いを扱う割には寒色の深刻さが漂った。大阪の吉本新喜劇を扱った4年前の「わろてんか」も同じ。お笑い芸人らの人間模様と喜怒哀楽だが、笑えない内容だった。したがってコラムで取り上げようもない。今回は真逆で、暖色に包まれ書きやすい。
「なつぞら」以来、農水省が特設コーナー
今回の朝ドラに農水省も張り切っている。森林組合が登場し、林業に注目が集まっているからだ。番組と歩調を合わせ林野庁がホームページで解説欄を設けた。森林とSDGsとの関連や森林ESD(環境教育)などを分かりやすく説明している。
こうした試みは、2年前の北海道・十勝の開拓農民を扱った広瀬すず主演の「なつぞら」以来だ。この時は酪農乳業問題を多角的に取り上げていた。だが、課題山積の改正畜安法と絡む指定生乳生産者団体や農民資本の乳製品工場建設なども話題となり、やがて政治的配慮から解説ページも立ち消えとなった。
タイトルの妙
番組タイトル「おかえりモネ」はやや説明が必要だろう。
主人公は後に気象予報士になる〝モネ〟こと永浦百音(ももね)。
〈おかえり〉の意味は、東京での仕事の経験を経て、やがて故郷に戻り気象予報で役立つ成長物語、希望のストーリーから来ている。
ヒロインの名前にフランス印象派の巨匠クロード・モネも思い浮かべた。モネは戸外で写生を続け朝や夕方などの天気の微妙な変化と光を描こうとした画家だ。
60年紡いだ「家族の物語」
朝ドラは60年前の1961年4月の作家・獅子文六の自叙伝とも言うべき「娘と私」から始まった。その後「おはなはん」「おしん」「梅ちゃん先生」など数々の名作を世に出す。昨年の福島出身の国民的作曲家・古関裕而を描く「エール」も心に残る。大震災・原発事故10年目も踏まえ、厄災に苦しむ福島に〈エール〉を送る意味も込めた。全てに共通するのは心を紡ぐ家族の物語という点だ。
宮城・登米でコメ問題も想起
農業の視点で忘れてはいけないのは森林組合の舞台、宮城・登米。番組では山間部の設定だが、実際は東北を代表する穀倉地帯で大米地帯だ。記者もコメの取材で何度も訪れた。〈透視眼〉で見れば、全国的な有名な地元・JAみやぎ登米の環境保全米の取り組みはSDGs、有機農業の時流ともマッチする。
今年は過剰で米価低迷が懸念される。朝ドラが登米を通じ、稲作産地にも元気なエールを届けてくれないか、とも思う。
(K)
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