各県がコロナから解放される日【森島 賢・正義派の農政論】2021年6月7日
コロナのワクチン接種が、日本でも、ようやく始まった。
世界の主要国は、コロナに対する勝利宣言をしようというのに、日本は1周遅れで、始まったばかりだ。いったい、いつの日になったらコロナから解放されるのか。
政府は、1日100万回ワクチンを接種して、遅れを取り戻そうとしている。しかしその一方で、多くの国民が反対しているオリパラ大会の開催に執着している。
国民の反対の理由は、感染拡大の危惧だけではない。オリパラ大会のための医療関係者がいるのなら、また、器材や設備などがあるのなら、それらの全てを、国民のためのコロナ対策に使え、というものである。そうすれば、その分だけ確実にワクチンの接種が加速するし、その分だけ確実にコロナからの解放の日が早くくる。だが政府は、そうしない。オリパラ大会に固執していて、国民の不信をかっている。
最近では、専門家たちの間にも、オリパラ大会に反対する意見が広がり、開催を阻止するための反乱を起こそうとする気配さえある。
政府は、オリパラ大会の開催に固執する一方で、国民へのワクチン接種を促進しようとしている。しかし、接種の促進は掛け声ばかりで、実効が上がっていない。そして、実効が上がっていない責任を都道府県に押し付けようとしている。
しかし、都道府県には、そのための権限もないし、財源もない。政府が握っていて離さないからである。だから、最前線の知事たちは、思う存分に力を発揮できない。
そうした中で、知事たちは責任だけを押し付けられている。そうして、最前線で精一杯に頑張っている。だが、手足を縛られているので、その力の発揮には限界がある。それを主な原因にして、都道府県の間には、埋めきれない地域差がある。
都道府県民にとって身近なことなので、その差は歴然と見えてしまう。知事たちの悩みは深い。
◇
ここには、官僚によって歪められ、しかし、政治に糺す能力のない、国家としての政治体制の問題がある。
官僚が、無責任で無能な政治家を祭り上げておいて、行政と立法と、司法さえも壟断している。そういう政治が罷り通っている。政治は、それをいいことにして、黙認している。
しかし、都道府県の知事たちは、国民から近い位置から見られているので、無責任なことすれば、すぐに露見してしまう。
この点で、知事たちは、農協の組合長たちと同様な立場にいる。もしも、無責任で無能な組合長がいれば、つぎの選挙で罷免される。そして、有能で高潔な組合長だけが続く。この点で、知事たちは組合長と同じで、厳格な民主的統制の下におかれている。
ここには、政府の不当な制約の下で、奴隷の自由に近い状況ではあるが、そうした状況の中で、それぞれの民主主義がしたたかに息づいている。
さて、ワクチンの接種が進んでいるから、やがてコロナから解放される日がくるだろう。それは、いつになるのか。上の地図は、それを都道府県ごとに予測して示したものである。
ここでの仮定は、都道府県民の60%がワクチンを2回づつ接種すれば、集団免疫を獲得できて、コロナから解放される、というものである。
この仮定には、変異種のコロナに対する今のワクチンの有効性に対する、やや楽観的な予想があるかもしれない。しかし、多くの専門家は楽観的である。
◇
さて、図は2つの部分に分かれている。上の部分は、接種の早さを、今後も今のままで続ける、と仮定した場合である。下の部分は、接種の早さを、今後は今の1.96倍に加速する、と仮定した場合である。1.96倍にすると、菅 義偉首相が公約した1日100万回、全国で接種することになる。
ここで検討したいのは、ワクチンの接種を加速すると、コロナから解放される日を、どれほど早められるか、である、そうして、国民の苦難を、どれほど軽減できるか、である。上の図は、その日を都道府県ごとに色分けして示した
◇
この図をみて分かることは、2つの図が全く違う様相を呈していることである。
上の図は、赤系統の色が多い。つまり、ワクチンの接種を、今のままで増やさなければ、コロナから解放される日は、多くの都道府県が来年になってしまう。
しかし、下の図は緑系統の色が圧倒的に多い。つまり、今後、ワクチンの接種回数を約2倍に増やせば、大多数の都道府県が、今年中にコロナから解放できる。しかも、10月以前まで、という都道府県が多い。
それぞれの都道府県の接種の早さについて、論評する力量は筆者にはない。それぞれがおかれている状況と、それぞれの民主主義の色合いの違いが、その基礎にあるのだろう。
この図で示したいことは、ワクチンの接種を早めれば、これほどまで早期に集団免疫を獲得でき、これほどまでに早くコロナから解放される、ということである。
◇
さて、このような都道府県ごとの集団免疫に、どれほどの意義があるか、という疑問があるかもしれない。これは、この予測の目的に関わる問題である。
いったい、この予測の目的は何か。
それは、「当てる」ことではない。中央にいる首相と最前線にいる知事たちに、覚悟を迫ることである。
今の接種の速さでは、コロナからの解放日はいつになるか。加速すれば、どれほど早められるか。そのために、政府と知事たちは、いま何を為すべきか。
国民は、1日も早くコロナから解放され、1日も早く元の生活に戻り、いまの病苦と生活苦から解放されたい、と思っている。
国民の政治に対する最大の期待は、いま、この点にある。首相と知事たちは、この期待に応える覚悟があるか。この危機に敢然と対峙する覚悟があるか。
(2021.06.07)
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(150)-改正食料・農業・農村基本法(36)-2025年7月12日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(67)【防除学習帖】第306回2025年7月12日
-
農薬の正しい使い方(40)【今さら聞けない営農情報】第306回2025年7月12日
-
【注意報】水稲に斑点米カメムシ類 県下全域で多発のおそれ 茨城県2025年7月11日
-
【注意報】斑点米カメムシ類 県内全域で多発のおそれ 新潟県2025年7月11日
-
【注意報】果樹に大型カメムシ類 果実被害多発のおそれ 北海道2025年7月11日
-
【注意報】果樹カメムシ類 県内全域で多発のおそれ 福島県2025年7月11日
-
【注意報】おうとう褐色せん孔病 県下全域で多発のおそれ 山形県2025年7月11日
-
【第46回農協人文化賞】出会いの大切さ確信 共済事業部門・全国共済農協連静岡県本部会長 鈴木政成氏2025年7月11日
-
【第46回農協人文化賞】農協運動 LAが原点 共済事業部門・千葉県・山武郡市農協常務 鈴木憲氏2025年7月11日
-
政府備蓄米 全農の出荷済数量 80%2025年7月11日
-
【'25新組合長に聞く】JA加賀(石川) 道田肇氏(6/21就任) ふるさとの食と農を守る2025年7月11日
-
【'25新組合長に聞く】JA新みやぎ(宮城) 小野寺克己氏(6/27就任) 米価急落防ぐのは国の責任2025年7月11日
-
(443)矛盾撞着:ローカル食材のグローバル・ブランディング【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年7月11日
-
【2025国際協同組合年】協同組合の父 賀川豊彦とSDGs 連続シンポ第4回第二部2025年7月11日
-
米で5年間の事前契約を導入したJA常総ひかり 令和7年産米の10%強、集荷も前年比10%増に JA全農が視察会2025年7月11日
-
旬の味求め メロン直売所大盛況 JA鶴岡2025年7月11日
-
腐植酸苦土肥料「アヅミン」、JAタウンで家庭菜園向け小袋サイズを販売開始 デンカ2025年7月11日
-
農業・漁業の人手不足解消へ 夏休み「一次産業 おてつたび特集」開始2025年7月11日
-
政府備蓄米 全国のホームセンター「ムサシ」「ビバホーム」で12日から販売開始2025年7月11日