新潟コシ6月納会価格1万4110円を考える【熊野孝文・米マーケット情報】2021年6月22日
コメ先物市場では偶数月の20日に納会が行われる。20日が休日の場合、その前に行われるので6月納会は18日の金曜日になった。活況と言って良いほど売り買いが活発な新潟コシは1万4110円で116枚(2900俵)が受渡しされた。この価格はどのような要因で決まったのか? 先物市場の納会価格について考えてみたい。
2021年6月限の売り買いが始まったのは昨年の6月22日で、この時のスタート価格は1万4440円であった。その後、2年産米の生産量が確定し、全体的な過剰感もあってズルズルと値下がりしはじめ、今年5月始めには1万2500円まで下落した。それが反転したのは現物市場で民間玉の浮動玉が薄くなり始め、先物市場で現物を手当てしようという動きもあり急反発した。先週はじめには1万3800円まで上伸したが、さらに値上がりして納会では1万4110円になったというのが過去1年間の経緯である。
ここで重要なことは「先物市場の期近限月と現物市場の価格は常にパラレルである」という事である。なぜそうなるのかと言うと、例えば現物市場で新潟コシヒカリが1万3000円で売り買いされたとする。その時新潟コシ先物市場の6月限が1万4000円だったとすると現物を買って先物市場に売り繋げば1000円の利益が確保できる。反対に先物市場の6月限が1万3000円で、現物市場で1万4000円で売れるなら先物市場の期近を買ってそれを現受けして現物市場で換金すれば良い。こうしたことが出来るので、現物市場の価格と先物市場の期近限月の価格は並行して動く。先物市場の価格形成の役割として大変大きなものは「価格の平準化作用」と言うものがあり、投機により価格が乱高下するという指摘は当たらないどころか全く逆の作用が働くのである。先行きの価格が分かると言うだけでなく価格の平準化作用は先物市場の極めて重要な機能である。
価格の平準化作用は新古格差を決定する際にも起きる。6月18日の新潟コシ先物市場の終値は2年産米の最終受渡限月になる8月限は1万4200円であるのに対して3年産米の最初の受渡し限月になる10月限は1万3050円で、1150円もの新古逆ザヤの格差が生じている。それだけ2年産新潟コシヒカリの現物がひっ迫しているとの現れだが、この格差は3年産米の収穫時期が近づくにつれ縮小して行くことになると予測される。なぜなら2年産を手持ちしているところは8月限を売って10月限を買えば確実に利益を手にすることが出来るからである。将来の価格が現時点で分かるという事は生産者にとっても大変メリットがある市場だという事が出来る。
先週、仙台市で生産者を対象としたコメ先物セミナーが開催され、その席で宮城ひとめの受渡しについて詳しく説明がなされた。それによると、宮城ひとめの受渡しスケジュールが各限月ごとの納会日が示され、納会日後の2営業日が実際の受渡日になる。渡し方は納会日までに荷渡し指図書及び在庫証明書が受け方は受渡代金の預託が必要になる。在庫証明は倉庫会社が渡し方へ郵送。受渡倉庫は塩竃倉庫㈱(塩竃市)と朝日精麦㈱(登米市)の2ヵ所。倉庫保管料は受渡月末日までの保管料は売り方持ちで、月初から保管料が発生する。
取引までの流れは、口座開設→書面審査→約諾書交付→証拠金口座への入金→注文の発注→注文の成立。受渡シミュレーションの売りの例では、運送費用(現物を渡す会社から指定倉庫)、倉庫関係費用は指定倉庫の入出庫料50円40銭/1俵。保管料(2期:20日)30円/1俵、低温保管時40円8銭。商取業者への支払手数料62円22銭/1俵。総合計142円62銭/1俵。買い方の例は運送費用(指定倉庫から現物を買う会社)、商取業者への支払い手数料62円22銭/1俵。保管料(1期:10日間*受け渡し後すぐに引き取らなかった場合)15円/1俵:低温保管時は20円4銭。総合計77円22銭/1俵。
宮城県の生産者が先物市場を活用して宮城ひとめぼれを換金しようと思えば1俵143円程度の経費が掛かるということなのだが、この経費を高いと見るか安いと見るかはまさに経営判断である。その生産者が3年産米を先物市場の価格より高く買ってくれる卸等と事前契約しているのなら先物市場を使う必要はない。しかし、売り先も確定していない生産者であれば3年産米の収穫時に価格が下落した場合、その減収分は自己のリスクで賄わなくてはいけない。現在、宮城ひとめの先物市場10月限の価格は1万1310円になっており、この価格で売れば数量に合わせた所得が確保できるので、収穫時に値下がりしても価格下落のリスクは回避できる。
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