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COFCOが中国国内で販売するブランド米は400万トン【熊野孝文・米マーケット情報】2021年7月6日

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「COFCO(中糧集団)が中国国内で販売しているブランド米は400万トンもあるんですよ。かりにその1%でも4万トンですから」と日本米輸出商社の担当者がやや興奮気味に答えた。中国向け日本米輸出の可能性について聞いた時にそう答えたのだが、現実はどうか? 万トンレベルどころか数百トンレベルに留まっている。農水省がコメ・コメ加工食品の輸出先国別で中国を最重要国に挙げているのにかかわらず一向に輸出数量が増えない。

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なぜ中国向け日本米輸出数量が増えないのか? その原因を知るためには少し過去に遡る必要がある。北京常設展示館事業と言うものがあったことを覚えている方は少ないと思われるが、駐日中国大使館職員のスパイ事件で大頓挫した事業だと言われれば思い出す方もいるかもしれない。

当時この事業に一番前のめりになっていたのが某薬局チェーンで、当時すでに訪日中国人が日本製の薬を買い求めていたこともあって、北京に常設展示館が出来れば大きなビジネスになると踏んでいた。展示館は薬だけでなく日本産農畜産物も展示・販売出来るという触れ込みで、農水省も後押し一般社団法人中国農産物等輸出促進協議会を作り、その説明会も実施されたことから大手食肉加工メーカーやコメ卸等も参加した。展示館に自社の商品を置くには初期出資金の他、商品ひとつ一つに有料のシールを貼る必要があったが、それでもコメを輸出したいという企業の関心は高かった。その理由は展示会事業の運営者から「燻蒸しなくても日本米を展示・販売出来る」という情報が一部のコメ事業者にもたらされたからである。当時から中国側はカツオブシムシ防除のための燻蒸を義務付けていたが、これをクリアーする方法として金属で出来た回転する筒の中に熱源を装着、それでカツオブシムシを死滅させるという装置を開発していたのである。そうした装置の動画を見せられるとこの事業に参画したくなるコメ事業者がいても不思議ない。それが大頓挫した原因はスパイ事件よりも大きい中国側の政治闘争があったと言われるが、それは置くとして結果的に霧散してしまった。

その後さらに東日本大震災に伴う原発事故で、中国側が10都県で生産される農産物食品の全てを輸入禁止にしたことから一気に中国向け日本米輸出の熱が冷めてしまった。ようやく2018年に新潟県が解除されたことから少しずつ日本米輸出が増えていったが、カツオブシムシ燻蒸義務が撤廃されたわけではなく、中国側が指定した燻蒸倉庫や精米工場で精米して輸出しなければならない。しかも中国側検査当局の承認が必要で毎年の経費負担に見合わないと指定を返上した倉庫業者もいる。このため新潟県のコメを輸出しようとしても一端北海道に持って行き、そこで燻蒸してから輸出しなければならない。それ以上にコストがかかるのが中国へ輸出してからで、中国はコメについて関税割当制度を導入しており、割当枠を持っている輸入業者であれば関税率は1%で済むが、そうでなければ65%の関税が課せられる。この他、増値税と言うものが9%課せられるため、日本側の輸出業者とすれば関税割当枠を持っている中国側の輸入業者向けに輸出することになる。その代表がCOFCO(中糧集団)で、いったんCOFCOに輸出してからそれを買い戻した形にして、中国で日本米COFCOブランドとして販売する形をとっている。それだけではなくCOFCOの下には販売業者がおり、そこを通すことになるため2重、3重にマージンが加算され、最終的には現地のブランド米に比べ3倍から5倍もの価格になってしまうのである。こうした流通構造があるため、日本側が輸出価格を引き下げても現地価格が下がるとは限らないというのが実態。

こうした規制やコスト増要因があるにも関わらず、日本側が中国に熱い視線を送っているのは、それだけ巨大なマーケットがあるからで、COFCOが販売している「福臨門」という高級ブランド米だけでも400万トンもあり、その中のKINGFOODに新潟コシヒカリが上級ブランドとして採用されたとなれば、それに賭けてみたいという日本輸出業者の思いも分かる。しかし、日本のコメに関してこれほどまでに厳しい規制や2重、3重の流通マージンが課せられるような仕組みになっているのかを考えると、コメを政治的に利用しているとしか考えられない。それは日本のコメが政治物資であることを中国側が熟知しているからにほかならず、最大限に利用できると思っているからだろう。真に日本米を中国に輸出しようと思うなら、まずは隗より始めよという事になる。

本コラムの記事一覧は下記リンクよりご覧下さい。

(株)米穀新聞社記者・熊野孝文氏のコラム【米マーケット情報】

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