立地を生かし国消国産の確立を JA東京みなみ常務理事 志村孝光【リレー談話室・JAの現場から】2021年7月10日
都市型農協の直売所
東京都が実施したインターネット都政モニター「東京の農業・水産業」(令和2年6月)によると、回答者の約8割が「東京に農地・農業は必要だと思う」と回答しており、「東京産農畜産物を購入したことがある」が55・7%。購入先はJA直売所(38・9%)を上回る59・5%が「スーパーなどの量販店で購入した経験」があるという結果が出ている。
さらに、東京産農畜産物への期待は、「新鮮であること」51・8%、「安全・安心であること」42・7%、「味や品質が良いこと」37・9%が高く、「価格が安いこと」17・2%を大きく上回った。このように、農業振興における、都市型JAの最大の強みは、大消費地を抱える立地と「食」への関心の高い顧客層が数多く存在することにある。
地産地消・国消国産を推進するためには、この恵まれた立地を最大限に発揮できる都市型JA直売所が大きな役割を果たさなければならない。
管内超えた品揃え
東京都内には、60カ所のJAが設置する農産物直売所があり、年間約62億円(令和2年度)の売り上げがある。一方で、少量多品目・小規模農地といった農業環境の下では、安定的・計画的な出荷が困難である。加えて、出荷者組織自主運営による委託販売が大半を占める現状から慢性的収支赤字を抱え、端境期の品不足と、特定品目の出荷過剰が繰り返され、消費者ニーズを満たすことが困難な状況にある。総じて出荷量の不足が発生し大きなチャンスロスをしている状況といえる。
こうした状況に対し「施設栽培の推進」「JAによる買い取り販売」「契約栽培」「生産者庭先集荷」「出荷基準・規格の徹底による品質向上・ブランド化」などの推進が不可欠である。このため、地場産農産物の枠を都内全域に拡大し、JA管内を超えた地産地消を思考する必要がある。
都市型JAの直売所では、先に指摘したように都市農業の置かれた環境から、すべての野菜や果実等の消費者ニーズを満たすことは不可能である。一方で、他県のJAでは特産品の直販強化で有利販売のチャネルを模索している。この二律背反の課題を解決するには、都内JA直売所で積極的に他県特産品を販売することが必要である。その際、重要なことは近隣の競合先との差別化であり、一定比率の地場産比率を維持することや高品質の他県農畜産物を販売することがあげられる。
JA連携で体制整備
こうした課題を効率的に実現するためには、都内直売所を結ぶ「効率的物流体制の構築」や都内全直売所の共通ブランド化(安心・安全・高品質な農畜産物を適正価格で販売する店)を推し進めること等があげられるが、何より東京14JAと連合会を含めた協同事業が不可欠となる。
都市型JA周辺の恵まれた環境・立地は、スーパーマーケット等競合先にとっても同じ市場となる中、都市部のJA直売所は新鮮で高品質な「食」を求める消費者層をターゲットにした「とがった店」になる必要がある。
一方で「大消費地」を抱える立地と「食に関心の高い顧客」が数多く存在するという環境を別の面から見ると、准組合員問題に対する一つの解決策を導くことができる。それは、食と農の協同組合として「農業振興は、生産者たる正組合員と食の消費者としての准組合員により行う」といった考えにほかならない。
「食」を通じて農業振興を支える構造を具体化するため、「食」を軸にした准組合員組織を作り県域・ブロック域・全国組織までの発展が必要と思われる。こうした組織化は、JA直売所を起点として、最も関心が高い「食」を通じてJAの経営参画の道をつくることにつながる。
今、JA東京グループでは、こうした機能強化を目的に、直売所を持つ全てのJAによる仕組み作り等の検討を進めている。農業生産県ではない都市型JAの行う事業の多くは、競合他社が近くに存在するため、強みを活かした「差別化戦略」が不可欠となる。
農業者の所得増大・農業生産の拡大のためには、価格競争によらない高品質な農畜産物を提供する店、ターゲット顧客を定めたマーケッテイングによる差別化戦略・販売力が必要である。
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