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五輪強行への世論誘導【森島 賢・正義派の農政論】2021年7月12日

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政府は、緊急事態の中で、五輪を強行しようとしている。そして、それを支持するように、世論を誘導しようとしている。

以前は、五輪を中止するか、強行するか、をめぐって激しい議論が行われていた。しかし、6月13日を境にして、議論は一変した。

この日、菅義偉首相はG7の会合で、7首脳に対して五輪の強行を宣言した。もう後へは引けない。国民の生命を賭け、自身の政治生命を賭けたのである。そういう無謀な賭けに出た。

それだけではない。外国からのお客様を「おもてなし」しようとしているのだが、それは、コロナつきの「おもてなし」になるだろうし、コロナをお土産にして、帰国してもらうことになるだろう。そういう危険な賭けである。

五輪強行への世論誘導

上の図は、五輪開催についての、これまでの主な発言である。

これまでも、IOCのバッハ会長は、緊急事態になっても五輪は強行する、といっていた。これに対して、分科会の尾身会長は、緊急事態のもとでの五輪強行を否定していた。

だが、G7での菅首相の発言によって、事態は急変した。そして、五輪強行は、国策のようになってしまった。

こうなると、多くのマスコミは、中止か強行か、という議論を封印した。そこから国民の目をそらした。そして、強行は国策だとして、観客を入れるか入れないかという議論を始めだした。いわゆる有識者を動員して、どちらが被害が少ないか、という議論にすり替えた。もちろん、無観客のほうが被害が少ない、という無意味な議論である。

しかし、国民はそれほど無知ではないし、お人好しでもない。依然として、いまも中止を厳しく要求している。

それが、7月4日の東京都知事選で噴き出した。自民党は敗北したと評価されているが、その原因は五輪の強行だ、といわれている。そして、次の総選挙にも影響がでる、と予想されている。

政府は、今からでも遅くない。五輪の中止を決断すべきである。

五輪を強行すれば、コロナ禍は深刻になるばかりだ。五輪のために医師や看護師や医療従事者が必要だし、医療機器や医療施設が必要になる。その分だけ、コロナ対策が確実に手薄になる。それをゼロにすることはできない。政府や一部の専門家が、どんな詭弁を弄しても、その分だけコロナからの解放の日は遠のく。

その犠牲になるのは国民である。コロナ禍が長引けば、五輪の分だけ確実に、国民の病苦は多くなるし、死者は多くなる。

だから、政府は一刻も早く五輪の中止を決断すべきである。

(2021.07.12)

(前回  コロナ対策の体制間格差

(前々回 かき消された五輪中止論

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