新米の価格はどうやって決まるのか?【熊野孝文・米マーケット情報】2021年7月20日
新米の価格はどうやって決まるのか? ちょうどその時期に来たので3年産米の価格がどうやって決まって行くのか具体的に触れたみたい。最初の事例として卸団体の子会社が主催するFAX取引会が16日開催されたので、それを引き合いに新米の価格決定要因を探ってみたい。
コメ卸団体の全米販(全国米穀販売事業共済協同組合)の100%子会社のクリスタルライスは、毎年この時期に行う取引会でその年に収穫される早場米中心に売り物を提示する。昨年から会場に集まっての取引会はコロナ禍で出来なくなり、FAX取引会に切り替えた。7月16日に開催されたFAX取引会では、午前9時までに参加卸等に一斉に売りメニューが掲載されたFAXが送信され、買い手はそのメニューを見て買いたい産地銘柄に価格、数量を書き込んで返信する。成約決定はその日の午後4時に通知される。
この日提示された売りメニューは、64産地銘柄5万8537俵(前回比83%)で、上場価格は加重平均で1俵当たり1万2439円(前回比103%)となっている。主な産地銘柄の関東持込みの売り唱え価格は、北海道ななつぼし1万2200円、ゆめぴりか1万4100円~1万5300円、東北あきたこまち1万2000円~1万2600円、東北ひとめぼれ1万1000円~1万3200円、関東コシヒカリ1万1800円~1万2700円、関東あきたこまち1万2000円、新潟コシヒカリ1万4600円、北陸コシヒカリ1万3100円~1万3400円。
個別銘柄では、青森まっしぐら1万1300円~1万1600円、岩手ひとめぼれ1万2650円、宮城ひとめぼれ1万2300円~1万3200円、だて正夢1万6300円、秋田あきたこまち1万2350円~1万2600円、山形はえぬき1万2300円、つや姫1万7330円~1万7750円、福島会津コシヒカリ1万3600円、中通りコシヒカリ1万2200円~1万2400円、茨城ミルキークイーン1万2600円、チヨニシキ1万450円~1万800円、群馬ゆめまつり1万600円、埼玉彩のかがやき1万600円~1万1450円、千葉ふさおとめ1万1100円~1万2100円、新潟魚沼コシヒカリ2万5400円、佐渡コシヒカリ1万5500円、岩船コシヒカリ1万5200円、富山コシヒカリ1万3100円など。
3年産新米は宮崎コシヒカリの他、千葉ふさこがね、茨城あきたこまち、秋田あきたこまちの売り物が先渡し条件で出ている。
この時期の条件で最も重視されるのが受渡し時期である。過去、新米セールが賑々しく行われていた時期は、どこの卸が最も早く新米を量販店に並べられるか競っており、早ければ早いほど価格が高値に踊った。その頃は7月中に受渡しされる宮崎コシヒカリの価格は新潟コシヒカリと同値かそれ以上と言う時もあった。現在はそうした第一便の争奪戦は鳴りを潜めたが、それでも7月中に東京に到着する新米はプレミアムが付く。
今回の取引会での提示価格は、宮崎コシヒカリが7月末まで渡し条件で1等1万4000円、8月2日から7日まで渡しが1万3600円。千葉ふさこがねは8月末から9月10日まで渡し条件で1万1100円。茨城あきたこまちは8月末から9月3日まで渡し条件で1万2100円。秋田あきたこまちは9月末から10月15日まで渡し条件で1万2600円になっている。
買い手の卸はどういうポジションかと言うと、宮崎コシヒカリを新米セールとして早めに量販店に提案するところもあるが、その場合の店頭の価格は5キロ1580円を念頭に置いている。少し前までは1680円という価格もあり得たが、6月ごろから量販店での2年産銘柄米の安売り合戦が激化、5キロ1280円や1割増量で1480円と言った銘柄米のセールも珍しくなくなった。こうした2年産精米の店頭価格の値崩れにより、新米といえども消費者に割高感を抱かせるような価格設定が難しくなっているというのが現状。
では、秋田あきたこまちがなぜ1万2600円で売り物が出ているのか? これは分かり易い。コメ先物市場では秋田こまちの新穀限月の最初の受渡し限月の10月限の7月16日の引値は1万700円である。この価格は産地置場価格であるので東京までの運賃と先物市場で現受けする費用を加算しても1万2600円は十分に利益が出る価格である。
コメ先物市場で、新潟コシヒカリや秋田こまちや宮城ひとめぼれといった特定銘柄が売買出来る市場が出来たことによって、現物市場での先渡し条件での取引が簡単に出来るようになったのである。
重要な記事
最新の記事
-
地方みらい共創研究会を設置 農水省2024年12月26日
-
紅葉期のインバウンド、過去最高 旅館・ホテルの業績もV字回復 米需要押し上げ要因にも2024年12月26日
-
キャベツ、レタス、はくさい 「野菜の高値、年明けも」と農水省 12月の低温も影響2024年12月26日
-
米農家の「時給」、23年は97円 農水省・農業経営統計調査から試算 深刻な実態続く2024年12月26日
-
耳開げ、正月、小正月【酒井惇一・昔の農村・今の世の中】第322回2024年12月26日
-
年末商戦の締めくくりは梅【花づくりの現場から 宇田明】第50回2024年12月26日
-
リジェネラティブ農業 テーラーメイド化軸に 「健全な土」から バイエルクロップサイエンス・大島美紀社長に聞く(1)2024年12月26日
-
リジェネラティブ農業 テーラーメイド化軸に 「健全な土」から バイエルクロップサイエンス・大島美紀社長に聞く(2)2024年12月26日
-
【役員人事】石原産業(2025年1月1日付)2024年12月26日
-
JA共済「全国小・中学生書道・交通安全ポスターコンクール」入賞者決定2024年12月26日
-
こども食堂やフードバンクに農畜産物 富山、三重、秋田のJA 地産地消促進で社会貢献、食育も2024年12月26日
-
「年末年始のなす消費拡大フェア」熊本・福岡の直営飲食店舗で開催 JA全農2024年12月26日
-
2025国際協同組合年に賛同する個人・団体の名簿を公開 全国実行委員会2024年12月26日
-
グテーレス国連事務総長の国際協同組合年に向けたビデオメッセージを公開 全国実行委員会2024年12月26日
-
国際協同組合年全国実行委員会が代表・副代表の年始あいさつ動画を提供2024年12月26日
-
福島県産ブランド米「福,笑い」WEBショートフィルム「おじいちゃん篇」公開2024年12月26日
-
過去最多の出店数 知多半島農業マルシェ「にこもぐ」27日に開催 愛知県半田市2024年12月26日
-
2024年度研修No.14「日射比例式灌水システム作成実習」開催 千葉大学植物工場研究会2024年12月26日
-
「日本酒イベントカレンダー20254年1月版」発表 日本酒造組合中央会2024年12月26日
-
適用拡大情報 殺菌剤「ベルクート水和剤」 日本曹達2024年12月26日