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史上空前の税収に浮かれるな【小松泰信・地方の眼力】2021年7月21日

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7月5日、財務省は2020年度の税収が60.8兆円となることを発表した。18年度の60.4兆円を超え、過去最高とのこと。上位三税目は、消費税(21.0兆円)、所得税(19.2兆円)、法人税(11.2兆円)となっている。

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「景気としては悪い方向ではない」と言われましても

翌6日の閣議後記者会見で麻生太郎副総理兼財務大臣は、税収への受止めと今年度の見通しを問われて、「去年11月頃、みんな55兆円ぐらいに大幅に下がると書いたけど、大幅に違った。それに比べて60兆円を超えましたから、(中略)史上空前ということになっちゃうんでしょうけど、受け止め方、新聞が書くほど、そんな世の中、経済悪くなっていなかったということ」「これがどうなっていくか、まだよくわかりませんけれども、いずれにしても景気としては悪い方向ではない、そう思っていますね」と答えた。

「消費税の存在感が際立つ結果」は良い結果?

朝日新聞(7月6日付)は、「当初の予想に反し、コロナ禍の税収への影響は限定的で、消費税、所得税、法人税の基幹3税がそろって前年度実績を上回った。巨額のコロナ予算の使い残しもあり、20年度決算で余った『剰余金』も過去最高の4兆円台に達した。衆院選を控え、与党などからは歳出圧力が強まりそうだ」と報じている。

消費税が初めて最大の税目となったことについて、「税率が10%になった増税分が通年で寄与したことが大きく、一般に景気動向に左右されにくい安定財源と言われる消費税の存在感が際立つ結果となった」と評価する。

「税収は過去最高でも、20年度の歳出は多くが国債発行に支えられており、借金頼みの財政状況に変わりはない。無駄な歳出が膨らめば、財政悪化に拍車がかかりかねない」として、衆院選を口実に、剰余金目当ての「補正予算などで追加の経済対策を求める声」が与党内から出始めていることを牽制する。

法人税の上ぶれが意味するもの

「麻生氏の発言を額面通りに受け取ることはできない」とする毎日新聞(7月14日付)は、実質成長率は戦後最悪のマイナス4.6%というように「新型コロナウイルスの影響で日本経済が冷え込む中、なぜ税収だけが拡大したのか」と疑問を呈し、企業が納める法人税の仕組みに言及する。

「飲食などサービス業はコロナ禍の打撃を強く受けたものの、製造業の大企業は外需の回復傾向を受け業績は悪くなかった。この違いが法人税収の動きに影響した」と解説するのは、宮前耕也氏(SMBC日興証券シニアエコノミスト)。

そもそも赤字企業には法人税の納税義務が発生しない。法人税の主要な納税者は例年、「大企業・中堅企業」で、安定した利益を上げられる企業群が法人税収を支えている。故に、コロナ禍がサービス業に打撃を与えたとしても、法人税収全体に、大きな影響を与えないわけである。

よって、法人税が上ぶれしたことが、わが国の多くの企業の経営が順調であることや、まして「経済悪くなっていなかった」ことを意味しているわけではないことに注意しておかねばならない。

そして同紙も、「21年度も当初予算段階で一般会計歳出が106兆円に達している。税収が上振れしても、『出口』である歳出を抑制しない限り、借金頼りの日本の問題点は解決しないのが現状だ」とくぎを刺す。

税収増を格差対策に

東京新聞(7月20日付)の社説も、「コロナ禍で経済成長が大きく落ち込む中、税収だけが伸びるという異例の事態だ」とし、「その背景には深刻な所得差の広がりがあり、予算の配分を通じた格差対策が急務だ」と訴える。

「多額の税を納める企業が続出する一方、観光関連や航空、鉄道、飲食などの多くは納税どころか存亡の機に直面している。消費税増税が低所得者により大きな負担を課している実態も強く認識せねばならない」と危機感を募らせ、政府に「予算編成を通じて格差是正に取り組む」ことを求めている。

「税収増を格差対策に充てるのは税の持つ所得の再配分機能から考えてむしろ当然である」として、「生活苦に直面している人々や、苦境に立つ業界にスムーズに流す政策」の速やかな実行を提言する。

それは、「社会の分断を防ぐ高い視座からの政策」を政府に求めてのものである。

国は本当に困窮する庶民を救う気があるのか

荻原博子氏は「サンデー毎日」(8月1日号)で、麻生氏の発言を「うそっぱち」と斬り捨てる。

荻原氏は、消費税が19年度よりも2.6兆円増えたことに注目する。法人税(4375億円)、所得税(191億円)の増加額合計の約6倍。

大切なことは、法人税、所得税と異なり、消費税は「赤字経営で倒産しそうな店の経営者も、失業して路頭に迷っている人も、災害に遭って途方に暮れている人も、食べたり飲んだり電気を使ったりする以上、納める」ものであること。

また雇用主が20年度中に労働者に支払った現金給与総額は前年度比1.2%減だったが、「消費税率は19年、8%から10%に上がりました。つまり、平均的な家庭では、給与が下がったのに消費税の負担が増し、生活が苦しくなった」ことを指摘する。

故に、「麻生氏が『史上空前』と喜ぶのはおかしいでしょう」と一喝。さらに、コロナ禍において、「各国が税収を減らしてまで国民生活を窮状から救おうとしているのに、日本の副総理が『史上空前』『景気は悪くない』と喜ぶのは恥ずかしい話」と嘆く。

加えて、全国知事会が4月、国が新型コロナ対策費として地方自治体に分配する地方創生臨時交付金の都道府県分が2月末時点で6000億円ほど不足していることを公表したことなどを紹介し、「国は本当に困窮する庶民生活を救う気があるのか」と、正直な疑問を吐露している。

減らない自殺者

警察庁が集計した6月における自殺者数(7月14日の暫定値)は、総数1780人(男性1169人、女性611人)。20年同月は総数1572人(男性1061人、女性511人)であった。増加割合を見ると、総数が13.2%、男性が10.2%、女性が19.6%で、女性の増加割合が男性のほぼ倍となっている。減る傾向を示さない自殺者数は、日々の生活が困難さを増していることを訴えている。

昨年の自殺者は8月から10月にかけて急増した。そうならぬために、為政者は、今すぐ、打てる手を打て。

「地方の眼力」なめんなよ

本コラムの記事一覧は下記リンクよりご覧下さい。

小松泰信氏のコラム【地方の眼力】

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