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「反菅」世論の高揚と菅自民党政権の命運【森田実の政治評論】2021年7月31日

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「勢い、もし使い尽くさば、禍必ず至る」(日本の諺)


内閣支持率3割割れ

7月17日の「東京新聞」等で報道された時事通信の7月9~12日の世論調査は衝撃的なものだった。菅義偉内閣支持率が前月比3・8ポイント減の29・3%になり、不支持率が5・6ポイント増の49・8%となった。内閣支持率3割割れは危険水域とみられている。

その後の各報道機関による世論調査は、ほとんどすべて同じ傾向を示している。菅政権の内閣支持率は低下の一途をたどっている。最近の世論は「反菅政権」の傾向を強めている。

しかし、菅内閣は「オリ・パラ」の実施をめざしてまっしぐらである。菅総理らには「オリ・パラ」を成功させれば世論の流れを逆転できると考えているのかもしれないが、そうだとすれば「病膏肓(やまいこうこう)に入る」と言わざるをえない。

歴史は繰り返す!!

最近の菅総理の動きをみていると、2007年の第一次安倍晋三内閣と2009年の麻生太郎内閣の時代と少し似てきた感じがしてくる。

2007年の安倍内閣の時代、安倍晋三総理は「戦後レジュームからの脱却」(憲法改正のこと)をメインスローガンにして参院選に駒を進めた。対抗する民主党は小沢一郎の「政治は生活である」を国民に訴えた。国民は、安倍晋三総理の意味不明の「戦後レジュームからの脱却」ではなく、小沢一郎の「生活」を支持した。参院選は自民党の無残な敗北に終わった。参院において与野党の勢力は逆転し、自民党は法律を制定する力を失った。安倍晋三総理は辞任を拒否してねばったが二カ月後に病気を理由にして退陣した。

菅総理と自民党は「オリ・パラ」を成功させれば、国民の支持はもどると期待しているようだが甘い。すでに多くの国民はオリンピック・パラリンピックが本来の理想を失い、商業主義に毒されてしまっていると思っている。「2020オリ・パラ」には、1964年の東京オリンピックのような大いなる理想は感じられないのである。

最近の菅自民党政権の状況は、2009年の麻生太郎内閣の時代にも似てきている。2009年の麻生内閣にはスキャンダルが頻発していた。さらに政府与党内の内紛が顕在化していた。その上麻生太郎総理の不規則発言連発で総理大臣のイメージは傷ついていた。

8月30日の衆院選の結果、自民党の議席数は119まで低下した。記録的な大敗北だった。自民党が衆議院で第一党を失ったのは1955年の結党以来初めてのことだった。勝利した民主党の議席数は自民党の3倍近くに達した。

たしかに今の立憲民主党には、2007年、2009年当時の民主党ほどの力はない。枝野幸男立憲民主党代表は、2007年当時の小沢一郎、2009年当時の鳩山由紀夫に比べると小型であり、パワー不足である。力不足を補うため共産党との連携をめざしているが、党内はまとまっておらず、勝算はない。しかし、国民の大多数が「菅離れ」を起こせば、「立憲民主党・共産党連合」が反菅世論の受け皿になることは不可能ではない。歴史は繰り返さないとは言えない状況にある。

すべては衆院選で決まる

菅総理の前には二つの道がある。一つはパラリンピック終了直後に臨時国会を召集し、衆院を解散すること。これにより、菅総理は9月末の総裁任期切れに伴う自民党総裁選を回避できる。衆院選で負ければ退陣せざるを得ないが、勝てば自民党総裁選を行わずに済む。

政治マスコミの主流は、この道を予想しているが、この道は正しい政党政治の道ではない。自民党はまず総裁選を行い、党として選んだ新総裁のもとで衆院選で信を問うべきである。マスコミは正論を主張すべきであり、政党政治の理念を放棄してはならない。

菅総理が自民党総裁選を回避する意図をもって総裁選前の衆院解散に踏み切ることは邪道である。

2021年10月と予想される衆院選は、歴史的意味をもつ重要な国政選挙となるであろう。

2021年の世界情勢は混沌としている。米中対立は長期化する様相を呈している。米国政府は日本と中国とを対立させて、日本を全面的に米国側に立たせようとしている。すでに自民党議員の大半は「反中国・米国とともに」の方向へ動いている。中国と軍事的対立を煽る幹部もいる。

しかし、日本が米国政府の手先となって中国と戦争すれば、日本は瞬時に滅亡するであろう。日本が平和に生きるためには自主外交により米中両国を和解させなければならない。

国内政治も大改革を迫られている。小選挙区制の導入が失敗だったことが明白になった以上、選挙制度改革は急務である。経済政策の基本を改めなければならない。これらの問題のすべてが秋の衆院選の課題である。


【コラム:森田実の政治評論の記事一覧はこちら】

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