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五輪とコロナと食と農【記者 透視眼】2021年8月4日

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コロナと絡め〈五波五輪〉とも称される東京五輪は最終盤へ。五輪とコロナと食と農もさまざまな動きが出ている。記者の〈透視眼〉からは、五輪と共に変遷する日本と世界が見えてくる。

おにぎりパワー

まず食の話題から。JA全農所属の石川佳純を筆頭に、中国を脅かすエース伊藤美誠、強打の平野美宇がそろう女子卓球トリオ活躍のかげには、過酷な試合に耐え勝利をつかむ〈おにぎりパワー〉があった。腹持ちがして、厳しい心理戦も伴う試合中での胆力を保つ。柔道をはじめ日本代表選手の中には、力の源おにぎりを食べ大一番に臨むケースも多い。

一方でコメ過剰が深刻度を増す。コロナ禍での外食需要不振に加え、大きな要因は長年にわたる消費低迷だ。五輪とおにぎりパワー。そこを切り口に、何とか消費拡大につなげたい。

五輪関連食品に熱視線

卓球での日本選手団の活躍は関連食品にも波及し、関係者は熱い視線を送る。

象徴は「水谷隼カレー」と全国農協食品の「石川佳純カレー」。両商品とも選手が監修した。具材は国産にこだわる。両選手が五輪で活躍するに従い売れ行きが急増している。国産食材の底上げは日本農業へのエールにも結び付くはずだ。

選手村で「日本食」発信

国際的な和食ブームを背景に、「日本食」発信も東京五輪の大きなテーマだ。選手村の大食堂は1日最大4万5000食を提供する。「日本」「ハラル」「ベジタリアン」「ピザ・パスタ」などのコーナーに約700種類のメニューがそろう。日本の食文化をアピールする「カジュアルダイニング」では、たこ焼き、おにぎり、公募で決まった創意工夫ある具に野菜たっぷりのそうめん、おでんも提供する。おでんは冷たい夏バージョンだ。栄養バランスと夏ばて防止も兼ねる日本の食の知恵の結晶でもある。

食材は持続可能性重視

選手村提供の食材は、持続可能性に配慮し農業認証の取得促進も狙いとした。GAP認証は、農産物輸出など今後の海外戦略にも欠かせない。五輪の食材調達基準の一つになったことは、安全・安心な農畜産物づくりを一段と促す五輪レガシーともなる。

表彰者に復興ブーケ

東京大会のスローガンの一つ「復興五輪」は名前ばかりの虚構だが、それでも東日本大震災の被災地・東北を元気づけようとの試みはいくつかある。

メダリストに贈られるビクトリーブーケが勝利に彩りを添える。色鮮やかなヒマワリやリンドウなどから成る。提供するのは東北や東京都内の生産者だ。産地からエールを送り、表彰台に立つアスリートの笑顔を輝かせる。五輪用ブーケは福島県産トルコギキョウ、宮城県産ヒマワリ、岩手県産リンドウ、主開催地・東京都産のハランなどが使われている。パラリンピックでは宮城県産のバラも登場する予定だ。

全農は五輪開催中も含め花で被災地・東北を応援しようとネット販売などを駆使し、全農東北プロジェクト「東北六花」を展開中だ。ギフトカードで東北の花を買い飾り東北を元気にする応援プロジェクトはすそ野を広げている。

農系アスリート躍動

自宅での五輪観戦も、見方を変えれば興味がさらに増す。例えば農系アスリートに注目する。

大活躍は金メダルを獲得した体操男子、19歳の若き新エース・橋本大輝。代々続く千葉・成田の農家出身。大会ぎりぎりまで実家の農作業を手伝ったという。マウンテンバイク・クロスカントリーに出場した山本幸平は北海道・帯広農高出身だ。

100年前もパンデミック

史上初のコロナ禍の五輪開催だが、100年前にもパンデミック下の五輪があった。

1920年のアントワープ大会(ベルギー)。第1次大戦直後、スペイン風邪の世界的大流行の中での開催だった。世界の苦難の克服を目指し、5大陸の団結を示す五輪旗が初めて掲揚された。だが、今回の大会は変異株が猛威を増す中での異例の開催を余儀なくされている。

57年前の日本と世界

日本女子体操57年ぶりのメダル獲得ニュースに接し、半世紀以上前の1964年の東京五輪時の日本と世界はどうだったろうか。二つの東京大会の比較表を見たい。

◎二つの「東京五輪」時の比較表
1964年               2021年(一部2020年)
・人 口  9718万人        1億2623万人
・出生率  2.05          1.36
・65歳以上 6.2%         28.8%
・GDP  29.5兆円       538.6兆円
・食料自給率 72%        38%
※GDP順位米、西独、英、仏、日 米、中、日、独、英

あれから57年。日本は国力を増す一方で、少子高齢化の中で大きな転機を迎えつつあることが一目瞭然だ。1964年のGDPは先進国が並び日本は5番目。まさに東京大会は戦後の経済復興五輪の名にふさわしい。今は順位こそ3番目だが異質な新興国・中国の後塵を拝す。その中国は躍進を裏付けるように来春、初の冬季五輪も予定する。

問題なのは食料自給率だ。57年前の72%から先進国最低の38%にまで落ち込んだ。記者の〈透視眼〉で二つの東京五輪を見れば、いかに日本が農を軽視したかの道のりでもあったのも分かる。五輪から世界と日本の実態と課題も読み解ける。

(K)

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