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平和世論調査は警告する【小松泰信・地方の眼力】2021年8月4日

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1945年8月6日午前8時15分、アメリカ軍が広島市に原子爆弾「リトルボーイ」を投下。同年同月9日午前11時02分、アメリカ軍が長崎市に原子爆弾「ファットマン」を投下。

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断られた8月6日の黙とう要請

西日本新聞(8月3日付)によれば、広島市は、IOCのバッハ会長に、広島原爆の日の8月6日に選手らに黙とうを呼び掛けるよう要請していたが、2日にバッハ氏から呼び掛ける方針はないとの返答を受け取ったと明らかにした。

広島市平和推進課によると、バッハ氏から届いたメールには、7月16日に広島を訪問したことへの感謝を述べた上で、8月8日の閉会式で亡くなった全ての人を追悼する時間を設けると説明があったとのこと。

どこが「平和の祭典」ですか

〈「平和の祭典」看板倒れ〉という見出しで、この黙とう拒否事件を報じる東京新聞(8月3日付)は、3人のコメントを紹介している。要点のみ抜粋する。

「残念としか言いようがありません」(広島市平和推進課長)。

「それぞれの国には、大きな悲劇が起きた記憶と結び付いて、市民が共有している日がある。日本ではその1つが8月6日。五輪を日本で開催するなら、市民感情を尊重すべきで、8日の閉会式で行うから6日を無視してもいいとはならない」(秋葉忠利氏、前広島市長)。

「五輪は平和運動で他のスポーツ大会とは違うと強調されてきたが、今回の黙とう拒否は平和の推進とは関係ないイベントだということをよく表している」(谷口源太郎氏、スポーツジャーナリスト)。

日本世論調査会が行った「平和世論調査」(6月16日から7月26日までの間、全国3000人を対象に郵送法で実施。有効回答1889、回収率63.0%)で、「『平和の祭典』とも呼ばれる五輪が世界平和に貢献していると思いますか」という問いに、「貢献している」56%、「貢献していない」42%、「無回答」2%であった。

4割が「貢献していない」としていることは、「平和の祭典」がIOCによる僭称であることを示唆している。

平和をいかにして守り抜くか

「平和世論調査」は、平和についての世論を知る手がかりを与えている。注目すべき項目を次のように整理する。(太字は小松)

(1)「8月15日の全国戦没者追悼式で、首相はアジア諸国への加害と反省に言及すべきか」については、「言及するべきだ」47%、「言及の必要ない」49%、「無回答」4%。

(2)「今後、日本が戦争をする可能性」については、「大いにある」4%、「ある程度ある」37%、「あまりない」41%、「まったくない」17%、「無回答」1%。大別すれば、日本が戦争をする可能性は、「ある」41%、「ない」58%。

「ある」と回答した理由では、「米中対立が強まり、有事が起きれば巻き込まれるから」が60%で最も多い。

「ない」と回答した理由では、「戦争放棄と戦力不保持を定めた憲法9条があるから」が55%で最も多い。

(3)「今後、自衛隊はどうあるべきか」については、「憲法の平和主義の原則を踏まえ『専守防衛』を厳守するべきだ」74%、「憲法9条を改正して『軍』として明記するべきだ」21%、「その他」3%、「無回答」2%。

(4)「今後、核兵器が戦争に使われる可能性」については、「大いにある」16%、「ある程度ある」50%、「あまりない」25%、「まったくない」4%、「無回答」4%。大別すれば、核兵器の使用可能性は、「ある」66%、「ない」29%。

(5)「今年1月発効の核兵器禁止条約への日本の参加」については、「参加するべきだ」71%、「参加するべきではない」27%、「無回答」3%。

「参加するべきだ」と回答した理由では、「日本は唯一の戦争被爆国だから」が62%で最も多い。

「参加するべきではない」と回答した理由では、「核兵器廃絶につながらないから」が45%で最も多い。

(6)「来年開催予定の、核兵器禁止条約の第1回締約国会議へのオブザーバー参加」については、「出席するべきだ」85%、「出席するべきではない」12%、「無回答」3%。

以上から、戦争の可能性を4割、核兵器の使用可能性を7割弱が予想している。だからといって好戦的ではない。民意は、憲法9条の精神を評価し、自衛隊に対しては「専守防衛」の厳守を求めている。政府には核兵器廃絶への積極的な取り組みを求めている。最大の不安材料は米中対立。だからこそ、わが国に求められているのは、アジア諸国への過去の加害とそれへの反省を繰り返し述べ、平和への貢献をアジアはもとより世界に誓い、まずは米中対立の解消に向けて骨身を惜しまぬことである。

沖縄のため息

沖縄タイムス(8月2日付)の社説は、この平和世論調査において、「米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設に向けた政府の姿勢」については、「支持しない」57%が「支持する」38%を大きく上回ったことにまずは安堵する。しかし、「支持しない」とする人への「普天間飛行場をどうすべきか」という質問に、「日本国外に移設する」29%に続いて、「普天間飛行場を引き続き使用する」24%が2番目であったことに落胆気味。それでも気を取り直して「発信力を強化する必要がある」と自らを鼓舞している。

重大事故の予兆

毎日新聞(7月28日付)によれば、7月27日午前9時25分ごろ、宮崎県串間市崎田の農地に米海兵隊普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)所属のAH1攻撃ヘリコプターが不時着した。搭乗員2人にけがはなく、建物などの被害もなかった。防衛省によると、米軍は「何らかのトラブルが発生し着陸した」と説明しているとのこと。

現場は最寄りの集落まで約500メートル。現場近くに住む無職女性は「海上を飛んでいるのはよく見かけるが、今日は自宅の上を何回も旋回していておかしいと思った。近所の人から『落ちたらしい』と聞いて不安になった。けが人が出なくてよかった」と胸をなで下ろしていたそうだ。

河野俊嗣(しゅんじ)知事は「九州防衛局から情報提供がなく遺憾。改善を求めたい」と、聞き飽きたセリフ。遺憾はいかん!

「地方の眼力」なめんなよ

本コラムの記事一覧は下記リンクよりご覧下さい。

小松泰信氏のコラム【地方の眼力】

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