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サクラチレ【小松泰信・地方の眼力】2021年8月11日

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7月31日付の新聞各紙は1面で、安倍晋三前首相の政治団体が「桜を見る会」前日に主催した夕食会の収支を巡り、東京第1検察審査会(以下、検審と略)が、公選法違反や政治資金規正法違反の疑いで刑事告発された安倍氏を不起訴とした東京地検特捜部の処分について、一部を「不当」と議決したことを報じた。

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真っ黒に限りなく近いブラック

予断と偏見はいけないとは言われても、衆院調査局は、安倍氏がこの問題に関連して、国会において少なくとも118回の「虚偽答弁」を重ねていたことを明らかにしている。嘘八百には遠く及ばないから、まあイ・イ・ヤ~で済ますわけにはいかない。

どう考えても、「真っ黒に限りなく近いブラック」というのが、法律にはド素人の見立てだが、外れてはいないはず。

「国権の最高機関である国会で、首相が虚偽答弁を繰り返したことは民主主義の根幹を揺るがす重大な行為だ。答弁修正で済む話ではない。議員辞職を含めて責任の取り方を熟慮すべきではないか」(東京新聞・社説、2020年12月26日付)に同感。

検審の議決に関して、東京新聞(7月31日付)の解説記事は、「検察審査会が『不当』だと突きつけたのは、『安倍晋三前首相の関与はない』とする秘書や本人らの供述中心の捜査で不起訴とした検察の姿勢だ」とする。そして、「検審は、検察が一部支援者や安倍氏らの聴取だけで不起訴と判断したことを問題視し、『メールなど客観的資料も入手した上で認定すべきだ』と積極的な捜査を迫った」ことから、徹底的な再捜査を求めている。

市民による議決は重い

秋田魁新報の社説(8月3日付)も、「11人の市民から成る審査会が、再捜査を求める決定をした事実は重い。検察は徹底的に捜査し、真相を解明しなければならない」とする。

議決において「首相だった者が、秘書がやったことだと言って関知しない姿勢は国民感情として納得できない」と異例とも言われる付言によって、安倍氏自身に説明責任を果たすよう強く求めた点に注目する。そして、「審査員は広く国民から選ばれ、法律に詳しくなくても『自身の良識』に基づいて判断することが求められる。その点で今回の議決はまさしく、市民感覚に近いのではないか」と評価する。さらに、検察が安倍氏本人を1度任意聴取しただけで、事務所の家宅捜索も行っていないことなどから、「これでは不起訴は既定路線で、首相経験者への『忖度』があったのかと疑わざるを得ない」とする。

安倍氏は説明責任を果たせ

「おざなりな捜査は認めない。市民による妥当な判断である」で始まるのは、信濃毎日新聞(8月3日付)の社説。

「功績があった人を公金で招待する『桜を見る会』に、首相が後援会関係者を多数招待して、『私物化』した」こと。「参加者名簿が不自然に廃棄」され、実態が解明されていないこと。そして、「事実と異なる答弁を国会で繰り返した」こと。

これだけでも大問題なのに、「刑事処分が問われたのは一部にすぎない。それすら十分な捜査が行われなければ、事実の解明は遠のくだけだ」と憤る。そして、野党が安倍氏の証人喚問を求めていることから、「夕食会だけでなく、桜を見る会の参加者や、名簿廃棄の経緯など全体」について説明責任を果たすことを求めている。

「本人や自民党にすれば一刻も早く幕引きにしたいところだろうが、市民感覚ではそれは到底許されないということだ」で始まる西日本新聞(8月4日付)の社説は、特捜部の再捜査後の判断が最終的な結論となるため、「特捜部は議決の指摘以上に踏み込んで捜査を尽くし、国民全体が納得に足る結論を出さねばならない」とくぎを刺す。

安倍氏が「野党からホテル発行の明細書などの提示を求められても、検察が捜査して不起訴としたことなどを理由に応じていない」ことを「大きなすり替え」と斬る。すなわち、「検察の不起訴は、手持ちの証拠では刑事責任を問うに至らなかったという判断であり、行為自体に問題なしとのお墨付きを与えるものではない。政治家の説明責任やモラルの問題は全く別だ」として、国民から抱かれている数々の「疑念を直視し、払拭に努めねばならない」とする。

政権病の病根を絶て

高知新聞の社説(8月3日付)は、「新型コロナウイルス対策を巡り、政治家の言葉が国民に響かない現状が危惧されている。その場をかわしさえすれば何とかなるという国会軽視のつけが顕在化しているようにも思える。この風潮を断ち切らなければ政治不信は深まるばかりだ」として、今回の不起訴不当議決を、政権病の病根を絶つ契機とすることを求めている。

「最近の検察判断には国民感情との乖離が目立つ」とするのは愛媛新聞(8月3日付)の社説。公選法違反(寄付行為)の罪で略式起訴された菅原一秀前経済産業相の事件と比べて、「桜を見る会の問題は、金額が大きく手口も巧妙で『悪質性が高い』との声が専門家から上がっている。証拠に基づき厳正に対処できるかどうか再捜査の行方を注視したい」とする。

もう終わろうよ

東京新聞(8月1日付)で前川喜平氏(現代教育行政研究会代表)は、東京地検特捜部の再捜査に「あまり期待はできない」と本音を吐露する。しかし安倍氏の政治責任は生じているので、「自ら説明をしないのなら、国会で証人喚問するしかない」とする。

さらに、「普通の廉恥心があれば政治家を続けられないはずだが、この人にそういう廉恥心はない」としたうえで、「投票用紙にまた安倍晋三と書くのですか」と、山口4区の有権者に問いかけている。

この問いへの答えを毎日新聞(7月31日付)が、安倍氏地元の声として紹介している。

「何か問題があるから不起訴不当になったのだと思う。お父さんの代から応援してきたが、安倍さんは問題が多くてもう支持できない。再捜査するなら徹底的にしてほしい」(無職女性)

「安倍さんを支持した人を優遇し、接待する場と化していたのが『桜を見る会』の実態だ。安倍さんが補填を知らなかったはずはなく、まさしく寄付だと思う。審査会の判断を受けて、検察は全体像をしっかりとらえて判断すべきだ」(会社役員男性)

「検察にも説明したが、会費は料理の割には高すぎると感じた。事務所の補填を聞いた時は驚いたが、周囲の誰も寄付や供与を受けたなんて思っていなかった。審査会が判断したのなら、もう一度しっかり捜査すればいい。それで終わりにしてほしい」(「桜を見る会」に呼ばれた経験のある会社社長男性)

社長! こっちこそ終わりにしてほしい。だから、もう書くのはヤメシンゾウ!

「地方の眼力」なめんなよ

本コラムの記事一覧は下記リンクよりご覧下さい。

小松泰信氏のコラム【地方の眼力】

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