(245)麦茶を飲みながら...【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2021年8月20日
北米が減れば豪州が増える…。昨年は世界で1.6億トン生産されていた大麦ですが、今年は1.5億トンと約1千万トンの減産です。世界最大の生産地であるEUは5440万トンと前年比△100万トン程度ですが、北米はカナダも米国も減産です。
かつて日本の食生活の中でいつでも目にした大麦だが、現在では大半を輸入に依存している。わが国の大麦の歴史をここで全て記すことは出来ないが、簡単に言えば国内の大麦生産量は1960年の121万トンから2019年には20万トン、つまり6分の1になった...と、これだけで十分であろう。
麦の全体像を示せば、同じ1960年には小麦153万トンと裸麦110万トンを合わせ、この3麦で384万トン生産していたが、2019年には小麦104万トン、裸麦2万トンと、3麦合計で126万トンにまで減少している。
話を大麦に戻すと、この間、大麦の輸入量は3万トンから最盛期は260万トン、そして現在は170万トンへと変化している。同時期の国内消費は117万トンから最盛期は281万トン、そして現在は186万トンである。
筆者は休日の早朝、運動を兼ねて自転車で海を見に行くことが多いが、その途中に〇〇精麦の倉庫がある。「精麦」と「製粉」、社会人になりたての頃、この字の違いが持つ意味について、具体的な加工方法から学んだものだ。そして、精麦を生業とする企業には各地域に根付いた地元の名士や古くからの店舗が多いこと、創業者の名前がそのまま会社名として残る企業が多いことも実際に取引を通じ、工場に足を運ぶことにより、肌で感じることができた。地産地消やローカルフードなどという言葉がほとんど聞かれなかった時代である。時々、スーパーなどでこうした会社の製品に出会うと無性に嬉しくなるときがある。筆者の社会人スタートは名古屋であり、直接には東海・北陸地方の精麦関係が中心だが、その後、関西・九州・東北といろいろな仕事をさせて頂いた。その結果、いつの間にか、全国各地の大麦製品が何となく見えるようになったのかもしれない。
誤解を恐れずに言えば、日本の大麦とその関連業界は、変動する農政の中で翻弄され、それでも何とか頑張ってきた逞しさがある。1990~2000年代以降の世の中の流れはグローバル化を正面に掲げていたが、ここへきて地方や地域を重視する動きが大きく出始めている。全国至るところで同じ企業名の同じ製品が流通するのは企業家にとっては1つの夢であろうが、特定地域だけで流通し消費される製品があっても良い。その意味で、生き残っている20万トンの国産大麦の今後がどうなるのかには大いに期待したい。
さて、海外に目を向けると、昨年1074万トンの大麦を生産したカナダが今年は880万トン、360万トンの米国が230万トンと、北米2国で324万トンの生産量減少である。また、昨年は1300万トンの大豊作であった豪州も今年は1100万トンだが、それでも数字は大きい。豪州国内の大麦需要を年間600万トン程度と見れば、十分な輸出余力があると考えられる。
昨年の大麦の国際貿易は3394万トンであり、今年もほぼ同数の3307万トンが見込まれている。日本は、ここ数年120~130万トン程度の大麦を輸入しているが、今年はカナダ産が減少し、豪州産が増えそうである。米国産は農務省見込みですら18万トン程度に過ぎず、この数量は過去数年安定している。
なお、大麦の年間需要量約1000万トンのほぼ全量を輸入する中国はここでも輸入最大手であることを忘れてはならない。直近の見通しでは、世界の輸入量の3割が中国、2割がサウジ・アラビア(750万トン)であり、この2か国で大麦輸入の半分を占めている。残りが日本を含む100万トン規模の数か国と無数の小国と理解しておけばとりあえずは十分であろう。
* *
麦茶を飲みながら、いろいろと考えてみました。日本の麦と精麦業界の歴史はそのまま農業と農政、そして食の現代史の一面を表しているようです。
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三石誠司・宮城大学教授のコラム【グローバルとローカル:世界は今】
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