知事たちのコロナ戦争【森島 賢・正義派の農政論】2021年8月23日
都道府県の知事たちは、コロナ戦争の最前線に立って、奮闘を続けている。しかし、奮闘の意気込みには強弱が見られる。ある知事は懸命に奮闘しているが、そうでない知事もいる。ここには、民主主義の違いがある。
政府は、コロナ対策の基本に、軽症者は自宅療養、という反国民的な方針を据えた。
この基本方針に忠実に従っている知事もいるし、無視している知事もいる。ここには、中央政府の権限を縮小して、地方自治体の権限を拡大するか否か、という国家体制の問題がある。いったい、どちらが民主主義に沿っているか。もちろん、権限には財源が伴う。
ここで参考になるのが、農協であろう。そして、農協などで構成する協同組合国家であろう。
上の図は、自宅療養者が全感染者に占める割合である。つまり、コロナの感染者全員のうちで、「軽症者は自宅療養」という政府のコロナ対策の基本方針に従って、自宅に押し込められ、必要で最低限の治療さえ受けられない自宅療養者の割合を示したものである。自宅療養者の中には療養先調整中の感染者を含んでいる。
この図をみると、首都圏のように90%近い都県がある一方で、福井、山梨、和歌山、佐賀のようにゼロの県もある。
この基礎になる数字は、実態を忠実に反映したものではないが、これほどの隔絶した差異があることは確かだろう。
この割合の分母になる感染者全員の数だが、それは実際の感染者の、ごく一部である。実際の感染者は、ここでいう感染者の数倍いる。検査を極端に制限していて、実際の感染者数を把握していないからである。隠蔽している、といった方が事実に即した言い方だろう。だから、この差異は、もっと隔絶したものになる。
◇
さて、この差異の原因を解明するのだが、ここには、種々の原因があるだろう。人口密度も関わっているだろうし、経済活動の集積も関わっているだろう。
だが、ここで重要なことは、知事たちの人間観であり、世界観であり、政治観である。コロナ禍が猖獗を極めるなかで、医療体制の拡充を怠り、医療が逼迫しているからといって、感染者を市中の自宅に放置しておいて、いいのかどうか。そして、その自宅療養者が市中感染を拡大していることを傍観していて、いいのかどうか。それが、国民の生命を守る、という政治の最高の目的に合致しているか。他の全ての目的を犠牲にしてもいい程の崇高な目的に沿っているかどうか。
◇
4県の知事たちは、そのことを熟考して、あえて政府の基本方針を無視して、自宅療養者ゼロを実現したのだろう。そこには、知事の政治観だけでなく、それを熱烈に支持する県民がいただろう。
ここには、知事を頂点にした県民の、真の民主主義が息づいている。
そして、ここには、国家の最適規模を考える糸口がある。それは、農協の最適規模と合致するのもだろう。
そして、そこには、巨大な権限と財源を持っている中央政府と、僅かな権限と財源しか持っていない地方政府、という中央集権の国家体制への疑問がある。
(2021.08.23)
重要な記事
最新の記事
-
プロの農業サービス事業者の育成を 農サ協が設立式典2025年10月21日
-
集落営農「くまけん」逝く 農協協会副会長・熊谷健一氏を偲んで2025年10月21日
-
【サステナ防除のすすめ】水稲除草剤 草種、生態を見極め防除を(1)2025年10月21日
-
【サステナ防除のすすめ】水稲除草剤 草種、生態を見極め防除を(2)2025年10月21日
-
随契米放出は「苦渋の決断」 新米収穫増 生産者に「ただ感謝」 小泉農相退任会見2025年10月21日
-
コメ先物市場で10枚を売りヘッジしたコメ生産者【熊野孝文・米マーケット情報】2025年10月21日
-
【JA組織基盤強化フォーラム】②よろず相談で頼れるJAを発信 JA秋田やまもと2025年10月21日
-
【中酪ナチュラルチーズコンテスト】出場過去最多、最優秀に滋賀・山田牧場2025年10月21日
-
11月29日はノウフクの日「もっともっとノウフク2025」全国で農福連携イベント開催 農水省2025年10月21日
-
東京と大阪で"多収米"セミナー&交流会「業務用米推進プロジェクト」 グレイン・エス・ピー2025年10月21日
-
福井のお米「いちほまれ」など約80商品 11月末まで送料負担なし JAタウン2025年10月21日
-
上品な香りの福島県産シャインマスカット 100箱限定で販売 JAタウン2025年10月21日
-
「土のあるところ」都市農業シンポジウム 府中市で開催 JAマインズ2025年10月21日
-
コンセプト農機、コンセプトフォイリングセイルボートが「Red Dot Design Award 2025」を受賞 ヤンマー2025年10月21日
-
地域と未来をさつまいもでつなぐフェス「imo mamo FES 2025」福岡で開催2025年10月21日
-
茨城大学、HYKと産学連携 干し芋残渣で「米粉のまどれーぬ」共同開発 クラダシ2025年10月21日
-
まるまるひがしにほん 福井県「まるごと!敦賀若狭フェア」開催 さいたま市2025年10月21日
-
北〜東日本は暖冬傾向 西日本は平年並の寒さ「秋冬の小売需要傾向」ウェザーニューズ2025年10月21日
-
平田牧場の豚肉に丹精国鶏を加え肉感アップ 冷凍餃子がリニューアル 生活クラブ2025年10月21日
-
誰もが「つながり」持てる地域へ 新潟市でひきこもり理解広める全国キャラバン実施2025年10月21日