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食の貧困と腹の虫【小松泰信・地方の眼力】2021年8月25日

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パラリンピック開会式当日に、政府は、東京都など13都府県に発令中の緊急事態宣言について、27日から北海道、宮城、岐阜、愛知、三重、滋賀、岡山、広島の8道県を対象に加える方針を固めた。また、緊急事態宣言に準じた対策が可能な「まん延防止等重点措置」の適用対象に高知、佐賀、長崎、宮崎の4県を加えることも検討に入った。正式に決定されれば、宣言の対象は21都道府県、まん延防止措置の対象は12県。33都道府県が厳しい状況下にある。

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コロナ禍が襲う低所得世帯の食事

24日、国立成育医療研究センターは、「コロナ流行下のこどもの食事への影響に関する全国調査」の結果概要を発表した。

同調査は、同センター社会医学研究部の森崎菜穂部長と新潟県立大学の村山伸子教授らによるもので、新型コロナウイルス感染症の流行が全国の子どもたちの食事に与えている影響、また影響がどのように家庭の経済背景により異なるのかを調べたもの。2020年12月に、全国の小学5年生・中学2年生がいる世帯から無作為に選ばれた3000 世帯の家庭を対象に実施し1551世帯(52%)からの回答を得た。

プレスリリースのデータに基づき、当コラムの責任で若干の再整理を試みた。注目したのは次の3点。

(1)「バランスの取れた食事」(「肉、魚、卵」と「野菜」を両方1日に2回以上含む)を取れている子どもの割合が、緊急事態宣言前(2019年12月)、緊急事態宣言中(20年4-5月)、緊急事態宣言後(20年12月)の3時点で、「高所得世帯」「比較的高所得世帯」「比較的低所得世帯」「低所得世帯」の4分位でどのように変化するかを見ている。宣言前と宣言後は世帯所得にかかわらず90%前後がバランスの取れた食事をしている。しかし、緊急事態宣言中(2020年4-5月)には、「高所得世帯」75%、「比較的高所得世帯」74%、「比較的低所得世帯」69%、そして「低所得世帯」は62%にまで低下している。

緊急事態宣言下では、全体的にバランスを崩す世帯が増えるが、低所得ほど崩す割合が多い。

(2)緊急事態宣言が解除された時点(20年12月)における、食事を作る心の余裕を感染拡大前と比べると、「高所得世帯」だけが「余裕増」(17%)が「余裕減」(13%)を上回っている。他の世帯はすべて「余裕減」が「余裕増」を大きく上回っている。

(3)(2)と同時点での比較において、食材を選んで買う経済的余裕については、「少なくなった」とする割合が、「高所得世帯」3%、「比較的高所得世帯」8%、「比較的低所得世帯」17%、「低所得世帯」33%となっている。低所得となるに従って、経済的余裕をなくしていることが分かる。

プレスリリースでは、「本研究からは、2020 年4-5月の初めての緊急事態宣言中ではバランスが取れた食事を取れていない子どもが増加したこと、感染拡大後は保護者の食事準備への負担感が増えていること、そしてこれらの影響は特に世帯所得が低い家庭でより大きいことが分かりました」と総括している。

またこの調査結果を取り上げた日本農業新聞(8月25日付)では、「休校でバランスの取れた給食の代わりに、親が食事を用意するようになったことが一因だろう。特に影響があった低所得世帯は、野菜や果実は価格が比較的高いため、安価な食材に偏ってしまったのではないか」と分析し、「旬な食材を活用しバランスの取れた食事を取ってほしい」とする、森崎部長のコメントが紹介されている。

「子どもの食の貧困」と「食品ロス」

東京新聞(8月12日付)に掲載された、日本世論調査会による「『食と日本社会』世論調査」の詳報も興味深い。調査は、6月16日から7月26日の間に実施された。全国18歳以上男女3000人が対象。有効回答1889で有効回答者率63%。

注目したのは、「子どもの食の貧困」と「食品ロス」に関する次の3項目。

(1)「あなたは子どもの食の貧困は深刻だと思いますか」については、「深刻だと思う」81%、「深刻だとは思わない」17%。

(2)子どもの食の貧困の問題を解消するために、最も必要だと思うことは、「国や自治体の金銭的支援」29%が最も多く、これに「学校給食の無料化」22%、「家族・親族による努力」20%、「『子ども食堂』などの民間活動の拡充」17%、「近隣住民による助け合い」7%が続いている。

(3)「食品ロス」について配慮していることは(2つまで選択)、「余分な食品・食材は買わない」77%、「購入した食品・食材は廃棄せずに食べる」72%、「外食で食べきれなかったものは持ち帰る」12%、「食品ロスに取り組む生産者や店舗などで購入する」4%、「特に配慮していない」3%、「その他」2%、「『フードバンク』などの活動をする団体に寄付をする」1%、となっている。

8割もの人が「子どもの食の貧困」の深刻さを意識していることには、正直驚いた。さらにその解消策として、「国や自治体の金銭的支援」「学校給食の無料化」という、現政権が最も下位に置く「公助」の回答率が、51%であることにも注目しなければならない。

手厚い公助を求める世論・民意に、政府は謙虚かつ誠実に向き合わねばならない。

また「食品ロス」については、個人的な購買・消費行動での解決策を多くの人が回答している。「食品ロスに取り組む生産者や店舗などで購入する」「『フードバンク』などの活動をする団体に寄付をする」の回答率が極めて少ないことは、そのような活動の活発化と広報の充実が求められていることを示唆している。

「女性不況」の克服に欠かせぬ「公助」

高知新聞(8月22日付)の社説も、日本世論調査会の調査結果に注目している。

 困窮子育て世帯を対象として、支援団体が今夏行った調査から、「コロナ感染拡大前と比べ『食事の量が減った』は47%、『食事の回数が減った』も23%に上った」「給食がない夏休み中の食事に不安を抱えている家庭も87%に達した」ことから、「貧困は家庭の外に実態が見えにくいが、日本社会にこうした現実があることを広く認識する必要がある」と警告する。

「コロナ禍は『女性不況』とも呼ばれている」として、「『自助』だけで解決できない構造的な問題がある」が故に、「子どものいる困窮世帯への支援策を強化しなければならない」とする。

子ども食堂やフードバンクという「共助」を評価し紹介するが、「『共助』には限界もある。住む地域や状況にかかわらず、誰でも支援を受けられることが肝心だ。貧困対策はやはり国や自治体による『公助』が欠かせない」ことを強調する。

さらに、「コロナ後も中長期的な対策が求められる。最低賃金を保障し収入を上げ、不足分を児童手当などで現金給付するなど、所得の再分配を機能させて経済格差の解消を図りたい」とする。

政治家がオリパラに現を抜かしている間に、腹の虫が治まらない有権者が増え続けていることを近いうちに思い知らせてやる。

「地方の眼力」なめんなよ

本コラムの記事一覧は下記リンクよりご覧下さい。

小松泰信氏のコラム【地方の眼力】

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