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横浜市長選から秋の政局を読む【森田実の政治評論】2021年8月25日

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8月22日、菅総理が横浜市長選で推した小此木候補がなぜ大差で敗れたのを鋭く分析。そして今後の政局への影響にも言及。そのなかでもし「小池新党」が結成されれば、台風の目になる可能性もあると示唆しています。

「勝利をえぬ政治は――或は勝利への道を歩まぬ政治は、失敗の政治である」(本多秋五)

「医の論理」と「政の論理」

横浜市長選挙で野党側が擁立したコロナ対策の専門家で元横浜市大医学部教授の山中竹春氏当選したことは、「医の論理」が「政治の論理」に打ち勝ったことを意味すると思う。いま大多数の日本国民が政治に求めているのは「医の論理」に立った政治を行うことである。野党側はこの「民の心」を掴(つか)んでいた。これが山中氏勝利の最大の原因である。

来るべき衆院選において、野党側が、日本の医療を強化する強い意思をもった医学の専門家を候補者として多数擁立することができれば、野党に大躍進の可能性が生まれる。

それにしても、横浜市長選における保守側の対応はあまりにも拙速だった。小此木八郎氏が横浜市へのカジノ導入に反対を宣言して、菅義偉内閣の閣僚を辞任して横浜市長選に立候補を表明した時には、期待が高まったが、菅総理が今までのカジノ推進の立場について政府の立場を変更しないまま、小此木支持を表明したことにより、事態は一変した。菅総理はカジノ推進の政府の方針を撤回すべきだったが、これを行わないまま小此木氏への支持を表明し、横浜市民に小此木支持を求めたことは、一種のダブルスタンダードと受け止められた。トップリーダーの二枚舌的行為は、国民の政治不信を強めた。菅総理の責任は重大である。

横浜市民が第一義的に求めたのは適切なコロナ対策である。横浜市民は、これを山中氏に期待した。しかるに小此木氏も林文子横浜市長もカジノを選挙公約の中心においた。小此木氏は反対を、林氏は推進を主張した。横浜市の自民党は分裂した。そして敗北した。

歴史は繰り返すか

政権が失敗する主たる原因は、党の分裂、腐敗、政策上の失敗である。この三つの要因が同時に起きた時は、政局の大変化が起こる。

1955年に結党して以後、自民党が初めて野党になったのは、1993年夏であった。この時、自民党は分裂し新生党が誕生した。同時に腐敗が続出した。さらに自民党内政治改革をめぐって混乱した。この結果、自民党は政権を失い野党に転落したが、新政権の基盤が弱く、自滅したため、一年以内に政権に復帰した。

次が2009年夏から秋にかけての政権交代だった。自民党は衆院選で大敗北し、結党以来初めて第二党に転落して政権を失った。この時も、分裂、腐敗、政策的失敗の三つが同時に起きた。この結果、鳩山由紀夫民主党内閣が成立した。だが、その民主党も3年3カ月後に同じ原因で衆院選において大敗北を喫し、野党に戻った。

自民党政権が復活してから12年が経ったが、菅政権はコロナ対策のおくれのため国民からきびしく批判されている。腐敗もあとを絶たない。しかし、今のところ党の分裂は起きていない。大きな党分裂が起きなければ、議席は減らしても第一党は維持するのではないかと私は予想する。

現在、大多数の自民党議員がおそれているのは「小池新党」である。小池新党が誕生すれば多くの地方議員、官僚そして女性が小池氏のところへ馳せ参じるであろう。台風の目になる可能性がある。小池新党が一定の議席数を獲得した時には、1955年の保守合同につづく大型保守合同が成立する可能性がある。

君子は径路を行かず

自由民主党総裁の任期はこの9月末である。それまでに総裁選を行わなければならない。

現在の衆議院議員の任期は、来る10月21日までである。その前に衆議院選挙を行わなければならない。

いまマスコミでは総裁選が先か衆院解散が先かが議論されている。

しかし政治家は姑息なことは慎むべきである。正々堂々と大道を歩まなければならない。

自民党はまず総裁選を行い新総裁を選出しなければならない。複数の立候補者が出れば総裁選規則に従って選挙を行うべきである。その上で、衆院選にのぞむべきである。

衆院選の時期について、10月中旬の臨時国会において衆院を解散すれば、衆院選の時期を11月28日まで延ばすことが可能になる、との見方があるが、このような姑息な対応を政権党指導者は考えるべきではない。衆院選の時期を11月下旬までおくらせれば、ワクチンが行きわたり、社会が落ち着き、菅政権にとって有利になるという思惑もあるようだが、政治指導者はそのような道を選ぶべきではない。

菅総理が自分の政権の延命を考えずに、自公連立政権の維持・存続を真面目に考えるなら、総裁選前に自ら内閣総辞職を行い、次の総裁に石破茂元幹事長か野田聖子幹事長代行を指名するのがよいと思う。石破、野田の両氏は政権を担当し運営する能力はあると私は判断している。いまさら自ら手をあげている政治家は、もう少し鍛錬を積む必要がある。

9月末の自民党総裁選で菅総理が再選された時は、その直後の衆院選は菅総理の信任を問う選挙になる。菅総理が今のままの国民に背を向けた姿勢を改めなければ自公連立危うしである。


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