GOTOトラベルは金持ち優遇策【森島 賢・正義派の農政論】2021年10月18日
コロナは、格差社会のなかで、ことに低所得者に過酷な災禍を強いている。つまり、コロナは格差を広げている。
そうした中で、いまは中断しているGOTOトラベルを復活しようという考えがある。GOTOトラベルとは、旅行する全ての人に対して政府が補助金を払うという制度である。そうして経済を回復する、という政策である。
だが、低所得者にとって、旅行などという生活の余裕はない。だから、GOTOトラベルは、高所得者だけに恩恵を与えるものである。つまり、金持ち優遇策である。
しかも、財源は税金だから、そのなかには低所得者が払った税金もある。つまり、低所得者から高所得者へ所得を移転する政策である。この点をみても、GOTOトラベルは格差を拡大している。
この植民地根性まる出しの、外国語名の、恥知らずな政策で、経済を回復しよう、というのである。
コロナで、旅館業などが特別に深刻な被害を受けているのなら、飲食業などと同様に、被害分を救済すればいいのだ。
同時に、コロナで失職、休職した労働者の所得の直接補償も必要だ。
上の図は、コロナ以前の平常時の2019年について、世帯ごとの年間収入を横軸にとり、宿泊のための支出額を縦軸にとって、その関係をみたものである。宿泊費は、旅行のための費用の主要な部分である。
この図から分かることは、高所得者ほど宿泊費の支出が多いことである。しかも、格別に多い。高収入世帯の宿泊費と、低収入世帯の宿泊費との間には、1ケタほどの隔絶した差がある。
◇
このように、宿泊費には明白な階層性がある。つまり、GOTOトラベルで宿泊費に補助金を出すことは、金持ち優遇策である。だから、低所得者との生活水準の格差を拡大する政策である。
税金には、そもそも格差を縮小するために、高所得者から低所得者へ所得を移転する役割りがある。それと逆行している。つまり、ビンボー人の税金がカネ持ち優遇に使われている。これは不正義である。
◇
与党も野党も、格差の縮小を重要な政治課題にしている。もしも、わが国が民主主義を標榜するのなら、経済の民主主義にとって格差解消は最重要な政治課題である。
それが本気なら、使い切れないほど多額の財源を用意したGOTOトラベルなどやめるべきである。そうして、その財源で低賃金労働者や非正規労働者に対して、コロナによる賃金の減少分を補填すべきである。
そして、この政策の先に、最低賃金の大幅な引き上げや、非正規労働の厳しい規制を見据えるべきである。この労働政策こそが、コロナが終息した後にも続く政策の、中心部に据えるべき格差縮小策である。
総選挙が2週間後に迫っている。この政策を、公約の最重要部に据えれば、その政党が、国民の大多数を占める低所得者から支持されて、総選挙で勝つことは間違いないだろう。
◇
もうひと言。コロナと農政にかかわる点を、1つ指摘しておこう。それは自民党の選挙公約についてである。
いま、コロナの影響で、米、ことに業務用米の需要が大幅に減退している。その結果、米価が大暴落している。
この対策として、自民党は政府米を「こども食堂」の支援に使うことを、こんどの総選挙の公約にしている(令和3年 自民党政策BANK)。
「こども食堂」とは、コロナの影響が主な原因で、必要な食事が食べられない子供たちに、無料か超安価で食事を提供する、尊い志のある人たちの食堂である。農協も支援している。
NPOの「全国こども食堂支援センター・むすびえ」のHPによれば、全国の各地には4、960か所(2020年12月23日)もの多数のこども食堂があって、多くの若者やお母さんたちも利用している。
◇
こども食堂には、ベーシックインカムに繋がる思想がある。その実物版である。「必要に応じて消費する社会」という社会主義や協同組合主義の理想に近い。
自民党の、こども食堂を支援する政策は、保守党を名乗りながら、何もかも呑み込んでしまう同党の1つの側面である。
立憲党など、いくつかの野党は、党首が言葉の意味を吟味せずに保守主義者を名乗っている。また、保守党の一部を支持する労働組合の「連合」の支配に忠実に服している。それらを反省して、こども食堂の支援を重要な選挙公約にしたらどうか。
(2021.10.18)
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