地方をなめんなよ【小松泰信・地方の眼力】2021年10月20日
「この国の針路を決める選挙戦が幕を開けた。さまざまな状況下で苦しい思いをしている人たちの声を、政治はすくい上げられるか。マイクを握った候補者は、どれほど私たちの苦楽を肌で知り、当事者意識を持ち合わせているだろうか。各候補者の声に耳を傾け、確かな目で選び抜きたい」(わかやま新報、10月20日付、コラム「しんぽう抄」)
「VOICE PROJECT 投票はあなたの声」
14人の俳優やミュージシャンが、「これは広告でも政府の放送でもなく、僕たちが僕たちの意思で作った映像です」という説明に続き、一人一人が投票への思いを語っている。衆院選での投票を若者に呼び掛ける「VOICE PROJECT 投票はあなたの声」と題された約3分半の動画。16日に「ユーチューブ」に公開され、20日11時時点で視聴回数が42万回を超えている。
朝日新聞デジタル(10月19日11時)によれば、この動画は「いっさいの政党や企業に関わりのない、市民による自主制作プロジェクト」として、映像作家ら3人が発起人となって企画したもの。関根光才(こうさい)氏と映像プロデューサー菅原直太氏が朝日新聞の取材に応じた。
2人は数年前から、投票率の低さに問題意識を寄せ、「影響力のある俳優やミュージシャンと動画を発信したらより多くの人に伝わるかもしれない」と7月下旬から、衆院選を見据えて構想してきた。今回は特に「自分たちの生活と政治が地続きであると多くの人が感じた」コロナ下の選挙で、「今やるべきアクションだと思いました」とは関根氏。応じてもらえそうな俳優やミュージシャンらに声をかけ、約1カ月で出演者が固まる。
インタビュアーは関根氏。出演者本人の言葉を尊重する。誰かを批判したり説得したりするのではなく、自分がなぜ投票するのかを大事した。全員の言葉をつなぎ合わせ、ひとつのメッセージを紡いだ、とのこと。
老若男女、必見の3分半。
争点にならない「地域活性化」
その衆院選に対する有権者の関心や政党支持傾向を探る全国電話世論調査(第1回トレンド調査)を共同通信社が16、17の両日に実施した。回答者数は1257人。注目した調査概要は、次のように整理される。質問項目は当コラムの責任で要約している。
(1)衆院選への関心度合いは、「大いに関心がある」23.5%、「ある程度関心がある」46.1%、「あまり関心がない」23.7%、「全く関心がない」6.7%。
(2)小選挙区で投票する候補者の政党で、最も多いのは「まだ決めていない」40.3%、これに「自民党」32.9%が続いている。
(3)比例代表で投票する政党は、最も多いのが「まだ決めていない」39.4%、これに「自民党」29.6%が続いている。
(2)(3)から、選挙告示直前において4割が投票先を決めておらず、この4割をどう引き寄せるかが各党の課題となる。
(4)投票時に一番重視する争点として、最も多いのが「経済政策」34.7%、これに「新型コロナウイルス対策」19.4%、「年金・医療・介護」16.5%が続く。なお、「地域活性化」は3.3%で11項目中7番目。「憲法改正」は1.5%で10番目。
下降曲線に耐えうる国づくり
さて、経済政策やコロナ対策のはざまに埋没しているのが、地域活性化であり地域創生という課題である。
「自民・公明の連立政権による地方創生は、はかばかしい成果を残していない。今後の地方の在り方に関わる政策は、その反省に基づくべきだ。19日公示の衆院選でも、与野党で大いに論じ合ってほしい争点だと私たちは考える」で始まるのは、西日本新聞(10月16日付)の社説。
「地方創生は人口減少への強い危機感から、2014年に安倍晋三政権の看板政策となった。人口減少が現在と近未来の社会に与える影響を考えれば、国と地方自治体が協力して取り組む意義は大きかったと言える。特に期待されたのは東京一極集中の是正だ」と続くが、「現状は達成に程遠い」「政府機関の地方移転も文化庁など一部にとどまり、規模は小さい。掛け声倒れである。何より人口減少の要因である少子化に歯止めがかからない」と、慨嘆が続く。
気を取り直して、「地方創生は経済や働き方、福祉、教育などを包括した政策であり、多角的な検証が必要だ。併せて、国と地方の関係を捉え直す議論を求めたい」と、まなじりを決す。
そして、「地方分権一括法の施行から20年が経過し、分権改革は国の重点政策ではなくなった。逆に集権回帰の傾向が強まっている」と指弾し、「国主導の集権的な地方創生では行き詰まる。地方に関する国の政策は『集権・統制型』から『分権・自立支援型』に改めるべきである。長く棚上げになっている国と地方の税財政改革にも取り組みたい」と、重要課題を提起する。
秋田魁新報(10月19日付)の社説も、「前回選挙で国難の一つとされた少子高齢化の対策はこの間、遅々とした歩みだった。その影響が大きい地方の経済や社会の疲弊に対し、国政はしっかり目を向けてこなかった。地方再生も忘れてはならない課題」とする。
紀伊民報(10月20日付)は「論」において、「コロナ後の社会を考える上で、大きな課題が人口減少である。政府が『地方創生』を看板政策に掲げたのは7年前。前々回の総選挙を前にぶち上げ、多額の予算を投入したが、地方から首都圏への人口流出は止まっていない。和歌山県は『人口流出グループ』の先頭集団にいる」と、地域の実情を憂えている。
そして「私たちはいま、人口の増加を見込んでつくられた政治と社会を、下降曲線に耐えられるものに造り替える歴史的な分岐点にいる」と鋭い情況分析ののち、「自分の1票だけで一気に未来が変わることはない。有権者が1億人いたら、1億人の考えがある。しかし、それぞれの1票が大きな流れを生み出す力を秘めている。等身大の1票で、理想の社会へと続く道を選択しよう」と語りかける。
聞こえますか見えますか考えていますか
同日の紀伊民報のコラム「水鉄砲」は、米価下落を取り上げ、「想像してみよう。コメの価格が下落し、農家が耕作を放棄して、田畑が荒れ放題になった光景を。(中略)いま手を打たないと、4割を切っている食料自給率の改善は夢のまた夢。農家の営農意欲も失われ、地域の過疎化を一気に進める恐れがある。米作農家の危機は地域存亡の危機でもある。米価の問題にとどまらず、地域振興、都市と農村の均衡ある発展、という視点での対策が必要だ」と訴える。
論と水鉄砲に睨まれるような所に和歌山3区の候補者4人の写真付きプロフィールあり。もちろんそこには自民党前幹事長の二階俊博氏の姿も。二階さん、あなたの地元の新聞が発する叫びが聞こえますか、理解できますか。
「地方の眼力」なめんなよ
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