【JCA週報】非常事態と協同組合2021年11月1日
「JCA週報」は、日本協同組合連携機構(JCA)(会長 中家徹JA全中代表理事会長、副会長 土屋敏夫 日本生協連代表会長)が、各都道府県での協同組合間連携の事例や連携・SDGsの勉強会などの内容、そして協同組合研究誌「にじ」に掲載された内容紹介や抜粋などの情報を、協同組合について考える資料として発信するコーナーです。
今回は、「戦争と協同組合」です。
協同組合研究誌「にじ」2021年秋号に執筆いただいた関西大学商学部 杉本貴志教授の論考を紹介します。
協同組合研究誌「にじ」2021年秋号 特集「非常事態と協同組合」
戦争と協同組合
1 究極の緊急・非常事態としての戦争
杉本 貴志
関西大学商学部教授
かつて「戦場における兵士と兵士との闘い」であった戦争は、近代になって、「国家と国家との総力戦」となった。そこでは、戦場における兵術のみならず、軍事に関わる生産、科学技術、流通、土木、建設、輸送、運輸、交通、情報、宣伝、娯楽、保健衛生、医療、消費、福利厚生等々社会のあらゆる局面で敵対する国家の優劣が競われ、兵員のみならず老若男女すべての国民が否応なくその渦に巻き込まれ、数名~数十名といった単位
ではなく、数百人~数百万人という単位で繰り返し人命が失われてしまう。20世紀になって、人類社会に文字通りの地獄が出現したのである。
それは当然、相互扶助を掲げて助け合いの社会をめざす協同組合をも巻き込まずにはいられない。事実、2度の世界大戦によって、世界の協同組合はとてつもなく大きな変化を経験した。たとえば、ロッチデール以来長く「政治的中立」を掲げてきたイギリスの協同組合運動は、第1次大戦における英国政府の仕打ちに憤激して、中立破棄を宣言、以来独自の政治的主張を掲げる政党「協同党」を擁して国政に進出している。
戦争はいわば究極の非常事態であって、協同組合の性格を根本から変えるものであるが、多くの場合、それは協同組合の存在自体を脅かす。したがって協同組合運動は、一般に戦争に強く反対し、平和を切実に希求する運動である。「平和とよりよい生活のために」という日本の生活協同組合陣営が掲げるメッセージが、「生活」よりも先に「平
和」を掲げているのは、まさにその典型であり、象徴である。
しかし実は歴史の詳細を振り返ってみれば、協同組合の歴史の中には、平和を求めて抑圧・弾圧され、戦争の中で消えていった協同組合だけでなく、それに消極的あるいは積極的に加担し、戦争を遂行・拡大する一翼となった協同組合も存在することに気づかされるだろう。
少なくとも日本国内では、協同組合のあゆみをたどり、そのあり方を論じる書物の中に、そして協同組合と戦争・平和の問題をテーマとして取り上げる文章の中にさえ、そうした協同組合の姿が登場することは今日ほとんどないけれども、緊急事態における協同組合のあり方を考え、論じるにあたっては、そうした協同組合史の「負」の側面にも目を配ることが必要ではないか。このような考えから、本稿ではあえて究極の非常事態における協同組合のいわば "誤った" 対応にも目を向けつつ、協同組合が戦争にどう向き合ったのか、振り返ることとしよう。
※ 以下全文は、JCAウェブサイトにて公開しております。
協同組合研究誌「にじ」 2021秋号より
https://www.japan.coop/wp/publication/10090
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