総選挙は中間派の戦略的敗北【森島 賢・正義派の農政論】2021年11月8日
コロナで多くの経済的弱者が呻吟しているさ中に行われた総選挙が終わった。その結果をみて、中道派の圧勝だった、という人がいる。自民と立憲が直前の議席数と比べて減らした一方で、維新と国民が大幅に増やしたからである。
だが、政党名で投票した比例区の結果をみると、そうではない。全く逆である。つまり、前回の総選挙の結果と比べると、自民も立憲も、ともに得票数を増やしている。
その一方で、中間派である維新と国民の得票数の合計は減らしている。つまり、中間派は惨敗したのである。戦略的には敗北である。中間派が議席を増やしたことは、選挙戦術の勝利、というべきである。
上の図は、比例区の得票数である。前回の2017年の結果と比べてある。最下行の2行は棄権者数である。
ここでは、維新と国民と希望を中間派とし、自民と公明を保守派とし、立憲、共産、れいわ、社民を革新派とした。
公明を保守派とするのは、少し無理があるかもしれない。しかし、保守派政権の与党だから、まぎれもなく保守派である。
ここで、改めていっておこう。保守主義とは、古き良き風習を守る主義だ、という人がいる。だが、そんなうわべだけの、ふやけた考えではない。
保守主義とは、これまでの社会の根幹を、あくまでも守る、という考えである。これに対して革新とは、これまでの社会を、その根幹から革新する、という考えである。
◇
このように考えると、選挙結果を、保守派と革新派がともに負けた、と見るのは誤りである。
上の図のように、国民が政党名を直接投票用紙に書いた比例区の結果でみると、保守派と革新派は、ともに勝ったのである。
それにもかかわらず、保守派も革新派も、ともに議席数を減らしたのは、選挙戦術的な負けで、戦略的な負けではない。戦略的に負けたのは、中間派である。
◇
この図をみながら、今後の政治状況を考えよう。
今後も、保守派の自公は連携を続けるだろう。そうしないと、自公の多くの議員が落選すると予想されるからである。これと同じ理由で、こんど初めて本格的に行った革新派の4野党の連携は、今後も続けるだろう。
こうした政治状況が今後も続き、固定化すれば、それは、以前の55年体制に似たものになるだろう。それは、自民を中心にした保守派政権の固定化であるし、革新派の万年野党化である。この状況を、一部の評論家がいうように新55年体制といってもいいだろう。
だが、決定的に違う点がある。
◇
それは、立憲と共産の連携であり、それを中心にした革新派の固い連携である。こんどの総選挙を契機にして、革新派の4野党の連携は、解消できなくなるだろう。
もう1つは、中間派の固定化の可能性である。中間派の中心になっている維新が、保守派政権に入ることはないだろう。維新が主張する地方自治権の強化は、今後も農協などの協同組合の支持を得て、国民の支持を拡大する可能性がある。
さらに、見逃せないのは、労組の全国組織である「連合」の保守化である。「連合」は、今度の総選挙で、一部の保守派の候補者を支持した。
◇
今後、この新55年体制を震撼させるものは何だろうか。それは、風ではない。支持組織の強化である。
この点で、とくに強調したいのは、立憲の支持組織である。立憲は、組織政党といわれる自民、公明、共産から多くを学ばねばならない。この点で、地元の支持組織の強化は急務である。
立憲はいま、その最大の支持組織といわれる「連合」との関係を見直すときである。労組の全国組織である「連合」に依存するのではなく、現場の労組員に支持を求めるべきだろう。
このことは、組織政党といわれる公明や共産にも言えることである。現場の農協や労組の中に深く入り込み、支持を求めることで、支持基盤を拡大できる余地は大きい。
◇
こうすることで、いまの政治は、経済的弱者にとって、希望の光になるだろう。いまの弛緩した政治に、緊張感を与えることができるだろう。
そうすることで、民主主義を復活し、上の図で示した最大多数派である棄権派を、切り崩すことができるだろう。そうして、経済的弱者のための政治になるだろう。そうしなければならない。
(2021.11.08)
(前回 「ゆ党」の台頭)
(前々回 コロナ被害の県間格差)
(「正義派の農政論」に対するご意見・ご感想をお寄せください。コチラのお問い合わせフォームより、お願いいたします。)
重要な記事
最新の記事
-
【注意報】水稲に斑点米カメムシ類 県内全域で多発のおそれ 高知県2024年7月16日
-
【注意報】イネカメムシ 県内全域で多発のおそれ 鳥取県2024年7月16日
-
30年目を迎えたパルシステムの予約登録米【熊野孝文・米マーケット情報】2024年7月16日
-
JA全農、ジェトロ、JFOODOが連携協定 日本産農畜産物の輸出拡大を推進2024年7月16日
-
藤原紀香がMC 新番組「紀香とゆる飲み」YouTubeで配信開始 JAタウン2024年7月16日
-
身の回りの国産大豆商品に注目「国産大豆商品発見コンクール」開催 JA全農2024年7月16日
-
秋元真夏の「ゆるふわたいむ」鹿児島県で黒酢料理を堪能 JAタウン2024年7月16日
-
日清食品とJA全農「サプライチェーンイノベーション大賞」で優秀賞2024年7月16日
-
自然派Style ミルクの味わいがひろがる「にくきゅうアイスバー」新登場 コープ自然派2024年7月16日
-
熊本県にコメリパワー「山鹿店」28日に新規開店2024年7月16日
-
「いわて農業未来プロジェクト」岩手県産ブランドキャベツ「いわて春みどり」を支援開始2024年7月16日
-
北海道で農業×アルバイト×観光「農WORK(ノウワク)トリップ」開設2024年7月16日
-
水田用除草ロボット「SV01-2025」受注開始 ソルトフラッツ2024年7月16日
-
元気な地域づくりを目指す団体を資金面で応援 助成総額400万円 パルシステム神奈川2024年7月16日
-
環境と未来を学べる体験型イベント 小平と池袋で開催 生活クラブ2024年7月16日
-
ポーランドからの家きん肉等の一時輸入停止を解除 農水省2024年7月16日
-
JAタウンのショップ「ホクレン」北海道産メロンが当たる「野菜BOX」発売2024年7月16日
-
「野菜ソムリエサミット」7月度「青果部門」最高金賞2品など発表 日本野菜ソムリエ協会2024年7月16日
-
「幻の卵屋さん」本駒込に常設店オープン 日本たまごかけごはん研究所2024年7月16日
-
地元の食材を使ったスクールランチが累計20万食に コープさっぽろ2024年7月16日