林外相転出で自民農林インナー再編【記者 透視眼】2021年11月9日
総選挙を経て、岸田政権の新たな権力構図が固まってきた。自民党農林幹部も同様だ。特に岸田文雄首相の側近、林芳正の外相起用は、農政を事実上担う自民農林インナーの再編に結び付く。(敬称略)
総合力に長けた林
林は経済政策に通じ、人当たりがよく分かりやすくテレビ出演も多い。厚相、蔵相を務めた元通産官僚の父親・林義郎譲りの才覚で早くから自民党若手のホープと目されてきた。
個人的には8年ほど前の2013年、萬歳章全中会長(当時)の地元・新潟で開いた世界農業者機構(WFO)での林の存在感を覚えている。農相として、ユーモアを交えた流ちょうな英語であいさつした。英語力は、外相から幹事長に回った茂木敏充とも並ぶ。
林は、防衛相をはじめ、農相を2度、さらには文科相など数省庁の閣僚を歴任した。万能ぶりから政権では「苦しい時の林頼み」とされた。農相時代、農水官僚から「林の理解力、のみ込みの早さには驚いた」と何度か聞いた。東大法からハーバード大学院。三井物産勤務、米国では上下議員政策スタッフの経験もある。いわば、総合知に長けた政治家の代表だ。
元来、商社出身から商工畑と見られてきたが、農相就任を機に自民農林幹部の道を歩み、特に農業と食品産業の関係強化、農産物輸出などをライフワークとしてきた。
旧農林インナー・イレブン
自民農林幹部のインナー会議は、菅政権時の1年余り前までイレブンと言われる11人の重厚な布陣で行われてきた。
メンバーを振り返ろう。農林・食料戦略調査会長の塩谷立、安倍・菅政権で国対委員長を務めた森山裕をはじめ、江藤拓、齋藤健、林芳正、吉川貴盛、宮腰光寛、小野寺五典、野村哲郎、宮下一郎、山田俊男の11人だ。2020年秋の菅政権発足に伴い、メンバーは厚みを増した。この時、前農相だった江藤が復帰し、宮下農林部会長が新たに加わる。森山、江藤、齋藤、林、吉川と農相経験者が5人も数えた。
さらに、自民農林合同会議には、長年、農林幹部を務めた落選中だった西川公也が内閣官房参与として政府側の立場で前列に座った。次期衆院選をにらみ引き続き党内に存在感を示す意味合いもあっただろう。
〈栄枯盛衰〉の1年
だが、この1年余りでメンバーの置かれた立場は激変した。
まずは〈政治とカネ〉に絡む。元農相の2人、吉川、西川は大手養鶏業者「アキタフーズ」元会長からの現金授受事件で政界から外れた。同問題に関連し現職の農水事務次官をはじめ当時の生産局畜産幹部も処分された。
また、地元の政治事情からコメや農地制度に精通した政策通の宮腰が衆院選不出馬で国会を去った。
今回、インナー11の1人、林の外相就任で、当時の11人の幹部のうち、少なくとも林、宮腰、吉川の3人は外れ、現状は8人となる。さらに、総選挙結果を経て今後の党内人事でメンバーの入れ替えの可能性もある。
一方で自民国対トップとして政治力を増した森山は、党幹部職を外れ農林業務への専念が見込まれる。
林外相起用で政権基盤固め
語学堪能で国際経験も豊富な林の外相起用は順当とも言えるが、首相の岸田にとっては別の狙いもある。岸田派幹部の林を重要閣僚に据えることで、自身の政権基盤を強めることだ。
2012年に自民総裁選に立候補した経験を持つ林にとっても、外相経験は自らのキャリアアップにつながる。10月31日の衆院選で参院から衆院にくら替えし当選した。将来、解散権を持つ政権トップを狙うには衆院議員の資格が欠かせない。元幹事長だった二階俊博率いる二階派と岸田派の派閥間権力闘争の側面も強い。林の衆院選出馬で、同じ選挙区・山口3区の二階派幹部・河村建夫は政界引退を余儀なくされた。
インナー交代で政策変化も
いずれにしても、1年前の〈インナー・イレブン〉は大きく入れ替わる。問題となるのは、党内あるいは野党との調整役の存在だ。
これまでも全体を仕切ってきた森山は、農林に戻りさらに力を増す。与野党激突となった衆院選小選挙区で農林幹部の塩谷や農林部会長を務めたこともある小里泰弘は立憲民主に苦杯をなめ、比例復活で議席をどうにか保った。その影響が党農林幹部人事にどう出るのか。
さらにはコメに精通した宮腰レベルの農政通の不足だ。宮腰の議員引退は、今後のコメ政策をはじめ、農政全般で農水省との力関係や野党農林議員との調整で変化を及ぼしかねない。今後の自民農林インナーの動向と、農政の動きに目が離せない。 (K)
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