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【書評】『樹のように石のように Ⅱ ポロシリ庵雑記帖』時田則雄著2021年11月10日

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著者の時田則雄さんは、本紙新年号の扉を飾るエッセイを寄稿し、最近は「農協時論」のメンバーとしてもお馴染みの歌人だ。現代短歌で抜きんでた才能を開花させ、余人には真似のできない世界を確立している。

「農文一体」で「時代を穿つ」

『樹のように石のように Ⅱ ポロシリ庵雑記帖』時田則雄著
十勝毎日新聞社 本体1500円+税

『樹のように石のように Ⅱ ポロシリ庵雑記帖』『樹のように石のように Ⅱ ポロシリ庵雑記帖』

歌壇での受賞歴は眩(まばゆ)いばかりだ。1980年の作品50首「一片の雲」が角川短歌賞を受賞すると、第一歌集『北方論』(雁書館)で現代歌人協会賞を受賞。その後は北海道新聞短歌賞、読売文学賞、芸術選奨文部科学大臣賞など数々の賞を手にしてきた。エッセイ集の『北の家族』(家の光協会)や『陽を翔るトラクター』(角川文化振興財団)などでは、北海道帯広市の時田農場を舞台にした一家の暮らしを自在に綴っている。

帯広畜産大学別科を修了して1967年に就農した時田さんは、開拓初代の祖父から数えて3代目。十勝は凄(すさ)まじい離農の嵐に見舞われていた。「残るも去るも地獄」の嵐をかいくぐり、時田さんは離農跡地を買い取って規模拡大。往時を詠んだ歌がある。

離農せしおまへの家をくべながら冬越す窓に花咲かせをり

厳冬の十勝では昼夜を問わずストーブを焚き、窓辺に鉢植えの花を咲かせて春を待つ。ストーブの火を絶やさぬために、離農して去った仲間の家の廃材をくべ、極寒をしのいでいる光景を詠んでいる。一歩踏み外せば、自分も同じ境遇に陥りかねない。悲喜こもごもの綱渡りの果てに、先人や仲間の墓標の上で農業を営んできた。

この歌は、高等学校の国語教科書にも採用された。星の数ほど名歌を生み出してきた時田さんは、40数ヘクタールの畑作を経営。現在は娘婿が4代目を継ぎ、3人の男児の孫にも恵まれている。

茫々と、かつ赫奕と

本書は、十勝管内で最大のシェアを誇る夕刊紙『十勝毎日新聞』に書き継いだ「編集余禄」全編を収録するコラム集の第2弾だ。期間は2016年から2020年の5カ年。この間には農畜産物輸入自由化を促進する数々の貿易協定が発効している。こうした時勢に、時田さんは怒りの筆先を向ける。同時に、家族農業の物語を紡ぐ「農文一体」の見地から「農と食」の文化を守るメッセージを発信し続けてきた。先住民族のアイヌの人たちにも、深い思いを寄せている。

副題にある「ポロシリ」はアイヌ語で、時田さんの農場から望む海抜1846メートルの十勝幌尻岳を指す。このポロシリを、時田さんは「私の心を膨らませ、明日へ引っぱってくれる」同志に見たて、「樹のように石のように」生きてきた。四季に彩られたその「日乗」(にちじょう)が、「おのれを彫り、時代を穿(うが)つ」。

藤沢周平の傑作長編小説に『三屋清左衛門残日録』がある。当年とって75歳になる時田さんも「隠居」したとはいえ、現役の「野男」(のおとこ)だ。「日残リテ昏ルルニ未ダ遠シ」の意味合いからは、本書を「時田則雄残日録」と見做(みな)してよいかもしれない。茫々と、かつ赫奕(かくやく)と生きる「野男」のさらなる健筆を祈りたい。

(文芸アナリスト 大金義昭)

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