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躊躇なく消費税減税、そして廃止【小松泰信・地方の眼力】2021年12月1日

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晴れの国・岡山とはいえ、冬は寒い。ほんの一週間ほど前、寒さに耐えられず灯油を買いにガソリンスタンドへ。灯油もガソリンも、高っ!

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「暫定税率」と「二重課税」という手口

「原油価格の高騰が新型コロナウイルス禍からの回復途上にある世界経済に水を差している。事態の打開に向け、政府は石油備蓄を放出する方針を決めた」ではじまるのは山陽新聞(11月26日付)の社説。「原油高に伴う燃料高は既に家計を圧迫している。岡山県でも22日時点のレギュラーガソリンの店頭平均価格が1リットル当たり165円台と、年初と比べて約33円上がった。重油や灯油も高値水準が続いており、農業や漁業、運輸などへの影響も深刻だ。政府には支援策を充実させることが強く求められる」と訴える。

荻原博子氏(経済ジャーナリスト)は「幸せな老後への一歩」(「サンデー毎日」12月12日号)において、ガソリン価格のカラクリを示しています。

11月15日時点のレギュラーガソリンの給油所小売価格(現金払い、全国平均)は1リットル168.9円。その内訳は、ガソリン本体価格96.95円、税金71.95円。われわれが支払っているガソリン代の42.6%が税金。

ここまで税金を膨張させているのが、「暫定税率」と「二重課税」。

「暫定税率」とは、1974年に道路特定財源として暫定的に課せられたものだが、現在も徴収されている。ただし、その使用目的は道路財源ではなく、一般財源に充てられている。荻原氏は、この「暫定税率」分の廃止を提案する。

さらにトリガー条項(ガソリン価格が3か月連続で1リットル当たり160円以上になった場合、25.1円の暫定税率分を停止する)の発動を求めている。

そして、ガソリン本体に揮発油税、地方揮発油税、石油石炭税などを加えたものに消費税が課せられる、というのが「二重課税」問題。

家計が危機的な状況となる一方で、国の税収は増えて潤う状況を「それはいくらなんでもおかしいでしょう」と憤る。

地方経済への打撃

河北新報(11月26日付)の社説は、「ガソリン価格の高騰対策には、揮発油税などの税率を時限的に引き下げる『トリガー条項』があるが、政府は実施には関連法の改正が必要で時間がかかるとして見送った」ことに言及し、「気に掛かるのは、いずれも『スピード重視』を口実に小手先の対策に終始していることだ。意地の悪い見方をすれば、価格抑制効果が表れなくても、政府は『備蓄油種の入れ替えが目的だった』『元売りとスタンドが適切な対応を取らなかった』などといった言い逃れが可能になる」ことを危惧する。

そして、「ガソリン価格の高騰は、施設園芸農業や遠洋漁業、運輸業などを中心に体力の弱い事業者に深刻な打撃を与えている。必要な法改正のために汗をかく最低限の責任に背を向けることは許されない」と、厳しく追及する。

琉球新報(11月25日付)の社説も、「価格高騰を抑える方法として、ガソリンにかかる揮発油税などの税率を一定条件で時限的に引き下げる『トリガー条項』がある。発動には関連法改正が必要だが、なぜこの方法を採用しないのか。理解に苦しむ」とする。

秋田魁新報(11月25日付)の社説は、「岸田文雄首相は農業、漁業など業種別の対策も行うことを表明した。農家や漁民、中小事業者の経営や一般の家庭生活を守るため、実効性のあるきめ細かい対策」を求めている。

新潟日報(11月25日付)の社説も、「冬場を迎え、暖房用に灯油を多く消費する本県の家庭やビニールハウス栽培で使う農家などは、価格高騰に大きな影響を受けている。感染が落ち着き、景気回復が期待される中で、原油高騰が足かせにならないよう、政府は実効性ある支援を講じてほしい」と訴える。

身も心もフトコロも寒々とする

1面に「食卓厳冬」という見出しを掲げ、食料品の値上げが12月から相次ぐことを報じているのは東京新聞(11月30日付)。

原因は、「世界的な食料需要の高まりに加え、原油価格の高騰で原料費や物流費が上がっている」ことで、「家計負担がじわりと増す冬になりそうだ」としている。

永浜利広氏(第一生命経済研究所首席エコノミスト)は、「穀物価格の上昇がパンや調味料などの値上げにつながった」と指摘し、「家計に占める食費の割合が高い低所得者の負担が増えかねない」と、コメントを寄せている。

同紙は3面でも、相次ぐ値上げが、コロナ禍から回復途上の飲食店や個人消費にブレーキをかけそうな状況を伝えている。

「お客さんの財布のひもが固くなっている」「菓子類など食パン以外のものは売れにくくなった」と現状を語るのは、東京都区内のパン店の店主。売り上げが減る中、仕入れ先から年明けに小麦を値上げすると通知を受けており、「店頭価格を上げざるを得ない」と嘆いている。

「輸入牛肉の値上げを仕入れ先から伝えられた」「緊急事態宣言の解除後に戻って来た利用客に負担をかけたくない」と値上げはしないと語るのは、東京都区内のビアレストラン経営者。肉の部位を変えるなどで原価を抑え、持ちこたえる考えとのこと。

性悪な政治家と役人ども!900億円をもてあそぶな

同紙同日によれば、財務省は26日の衆院予算委員会の理事懇談会で、18歳以下への10万円相当の給付に関し、現金とクーポンに分けると現金一括にした場合と比べ約900億円余計に費用がかかり、トータルの事務費は1200億円程度に膨らむことを明らかにした。

政府関係者によれば、「給付金が貯蓄に回されたり、子育て以外に使用されたりするのを避けるため」に現金一括を避けたそうだが、貯蓄や目的外使用を防ぐために900億円をつぎ込む姿勢のほうが罪深い。この程度の端金でも、将来のために取りあえずおいて置かねばならぬ人や、緊急を要する出費に用いなければならない人を罪人扱いする、性悪説に立った政治家や役人こそ性悪(しょうわる)そのもの。性悪な政治家と役人だらけの世界に長年棲息していれば、市井の人びと皆が性悪に見えてしまうのだろう。

900億円、ねんごろの業者に渡すぐらいなら、消費税の減税や廃止に躊躇なく取り組むべし。どれだけの人が助かるか。

オミクロン株による第6波に備えるためにも、先手先手で速やかに取り組め。菅の二の舞はいやなんでしょう、岸田さん。

「地方の眼力」なめんなよ

本コラムの記事一覧は下記リンクよりご覧下さい。

小松泰信氏のコラム【地方の眼力】

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