『女性の視点』忘れずに 山梨県・JA梨北元常務 仲澤 秀美さん【わたし発 今 女性が生きる意義と役割】2022年2月1日
「一人は万人のため…」共通の目的のために組合員が結集した協同組合。農協や全国連、研究組織など多彩な活動があるが、その中で女性の存在は欠かせないものになっている。それぞれの分野で活躍している人から寄稿してもらった。
山梨県・JA梨北元常務
仲澤 秀美さん
13年前、私が48歳でJA梨北の常務に就任した時、全国で女性の常勤役員は数人であり、私以外の方は監事だったと聞き及んでいる。当時、JAグループ全国常勤役員会議に出席すると、200~300人の出席者のうち女性はたった一人、しかも年若い(会場内では)女性では場違いも甚だしかった。
その後、私は異例の職員常務として4期12年を務め、定年を迎えると共に昨春退任した。この間に農林水産省の指導等により、JAの女性理事は全国的に増員した。但し、数値的な目標達成に留まらず、女性理事がJA運営に参画する意義を果たすためには、ここからの取り組みこそが重要かつ困難であると懸念される。
JAという組織は、長年にわたって生産者あるいは販売者が経営を担ってきたため、消費者目線が生かされる機会には恵まれなかった。重ねて、流通が言うところの「消費者ニーズ」に踊らされ、果実や野菜は芸術品に仕立て上げられた。そのような現場で〝農に疎かった〟私が臆することなく消費者目線の事業を展開できたのは、周りの理解があったからである。
なぜなら、JAという保守的な組織であったにも関わらず、私は〝男性になること〟を求められなかった(なるつもりもなかったが)。女も妻も母も捨てず、女性として有り体のまま仕事をすることができた。女性の地位向上には、何かを犠牲にすることが当たり前とされ、男勝りになって男性と競うことが必然とされる時代背景のなかで、女性としての仕事の在り方を実現させることができ、周りもそれを認めてくれた。
女性が男性の仕事の仕方を踏襲する必要はなく、女性としての観点から結果を導き出せばいいのであり、結果が正しく評価されることこそが重要なのである。
男性と女性は、根本的に違う。男性的な考え方の〝危うさ〟を制するのが女性であり、それは家庭でも社会でも共通の構図を成している。これは男性と女性の価値観の違いであり、男性は社会の発展に傾注し、命や環境や子どもの未来を危惧するのは女性の本能である。
災害時、途方に暮れる男性の横で、まず「食べること」を心配する女性、その女性の姿に奮起して行動を起こす男性、それぞれが秀でている役割を果たすことで社会は復興してきた。これからの社会は、この〝つながり〟がなければ持続し難いだろう。
ただし、つながるための仕組みはできているのだろうか。女性が社会に参画する間口だけを開いて「さあ頑張ってみろ」と言ったところで、これまでの社会構造が見直されなければ、家事や育児に翻弄(ほんろう)される女性の生活にゆがみが生じる。「働く者が仕事に支障なく生活できる社会づくり」を整えなければ、本当の意味で女性の社会進出は実現しない。
最後に、協同組合は、「人と人とのつながり」で地域の課題を解決する組織である。社会が混迷を極めるに連れて、協同組合の必要性が高まっている。疲弊しつつある地域社会を支えるのは〝結〟の活動であり、これは相互扶助の精神に基づく協同組合活動の原点である。今、社会が直面する危機を打破する契機は「人と人とのつながり」であり、協同組合の存在意義が評価されている。
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