【JCA週報】くらしを見つめて、支える協同組合~これまでとこれから~2022年2月21日
「JCA週報」は、日本協同組合連携機構(JCA)(会長 中家徹JA全中代表理事会長、副会長 土屋敏夫 日本生協連代表会長)が、各都道府県での協同組合間連携の事例や連携・SDGsの勉強会などの内容、そして協同組合研究誌「にじ」に掲載された内容紹介や抜粋などの情報を、協同組合について考える資料として発信するコーナーです。
今回は、「くらしを見つめて、支える協同組合~これまでとこれから~」です。
協同組合研究誌「にじ」2021年冬号の座長をお願いした摂南大学農学部 北川太一教授の特集改題を紹介します。
協同組合研究誌「にじ」2021年冬号
「くらしを見つめて、支える協同組合~これまでとこれから~」
摂南大学農学部教授 北川太一
摂南大学農学部 北川太一教授
新型コロナウィルスの感染拡大は、改めて私たちのくらし(生活様式)を見つめ直すきっかけとなったが、協同組合には、自らのくらしを見つめ、そこから改善課題を明らかにし、それを事業や活動を通じて解決してきた歴史がある。
例えば農協では、戦後間もない頃から旧農協婦人部を中心としたくらしの改善活動が展開していたが、1950 年から60 年代にかけて、農村女性のくらしの様子を紹介する次のような記述がある。
「眼病を招くかまどでの煮炊き、"冷え"を生む土間での仕事、体を酷使する水くみ、便所からのハエや防火用水からの蚊の発生、望まない妊娠による母体への悪影響や家計への負担など、改善すべき課題は山積みでした。このようなとき、煙を外に排出する改良かまどの作り方を学び、仲間で一斉害虫駆除や『家族計画』に取り組むなど、成果が確実に出る対策を実践する農協婦人部の活動は、多くの女性にとって魅力あるもので、加入が急速に進みました」
くらしが豊かになり、都市と農村での生活環境の差がほとんどなくなった現在では、想像もできないことである。
当時のくらしの改善活動を農村女性と一緒になって支えたのが、農協の生活指導事業であり、そこには、農協の役割は物心両面でのくらしの豊かさを実現することにある、という確固とした考え方があった。例えば、1961 年(昭和36 年)に開催された第9回全国農協大会の決議では、次のように記されている。
「...協同組合運動の究極の目的は、人間の住みよい、より豊かで民主的な人間生活を多数の人びとの" 協同" によって実現しようとするものである。我々はとかく営農改善と生活改善を並べて使うけれども、本来は生活改善が目的であり、営農改善はそのための手段である。従って農協としては、農家の生活文化の向上を目的とする活動を今後重視すべきである...」
さらに、農村の生活改善に生活改良普及員制度が果たした役割も見逃すことはできない。農産物活用(加工)、農家経営、農業労働・農村環境、高齢者活動、地域づくりや男女共同参画など、生活改良普及員は、さまざまな分野で役割を果たしながら、今日において重要な課題になっている食と農に関する先駆的な活動を展開してきた。
本特集では、こうした生活改良普及員の問題も取り上げながら、今一度、協同組合がくらしの改善に果たしてきた歴史的な役割について、さまざまな観点から明らかにする。このことを通じて、これから迎えるウィズ・コロナの時代のくらしのあり方について示唆を得たい。
(略)
新型コロナ禍により、私たちは改めてくらしの足元を見つめる重要性に気づかされた。くらしの実態をできる限り客観的に把握し、そのことを通じてくらしの点検・再構築に向けた活動が改めて求められているのではないか。協同組合の歴史的経験に学び、そこで蓄積された資源やノウハウを活かしながら、ウィズ・コロナ時代におけるくらしのあり方を模索していくことが必要である。公務ご多忙の中、ご執筆・ご協力いただいた方々に心より感謝申し上げるとともに、今号を契機としてさらに議論が深化することを期待したい。
※以下全文および各論考は、全てJCAウェブサイトにて公開しております。
協同組合研究誌「にじ」 2021冬号より
https://www.japan.coop/wp/publication/10673
(紙媒体での購読のご案内)
日本協同組合連携機構(JCA) 基礎研究部まで電話・FAX・Eメールでお問い合わせください。
(TEL:03-6280-7252 FAX:03-3268-8761 E-Mail:kenkyu@japan.coop )
JCAは、「学ぶとつながるプラットフォーム」をめざしています。
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(119) -改正食料・農業・農村基本法(5)-2024年11月23日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践 (36) 【防除学習帖】第275回2024年11月23日
-
農薬の正しい使い方(9)【今さら聞けない営農情報】第275回2024年11月23日
-
コメ作りを担うイタリア女性【イタリア通信】2024年11月23日
-
新しい内閣に期待する【原田 康・目明き千人】2024年11月23日
-
基本法施行後初の予算増確保へ JAグループ基本農政確立全国大会に4000人 生産者から切実な訴え2024年11月22日
-
「適正な価格形成」国関与で実効的に JA群馬中央会・林会長の意見表明 基本農政確立全国大会2024年11月22日
-
JAグループ重点要望実現に全力 森山自民党幹事長が表明 基本農政確立全国大会2024年11月22日
-
農林水産省 エン・ジャパンで「総合職」の公募開始2024年11月22日
-
鳥インフル 米モンタナ州、ワシントン州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入を一時停止 農水省2024年11月22日
-
鳥インフル オランダからの生きた家きん等 輸入を一時停止 農水省2024年11月22日
-
11月29日「ノウフクの日」に制定 全国でイベント開催 農水省2024年11月22日
-
(411)「豚ホテル」の異なるベクトル【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2024年11月22日
-
名産品のキャベツを身近に「キャベツ狩り選手権」開催 JA遠州中央2024年11月22日
-
無人で水田抑草「アイガモロボ」NEWGREENと資本業務提携 JA三井リース2024年11月22日
-
みのるダイニング名古屋店開業2周年「松阪牛ステーキ定食」特別価格で提供 JA全農2024年11月22日
-
【スマート農業の風】農業アプリと地図データと筆ポリゴン・eMAFF農地ナビ2024年11月22日
-
自動運転とコスト【消費者の目・花ちゃん】2024年11月22日
-
イチゴ優良苗の大量培養技術 埼玉農業大賞「革新的農業技術部門」で大賞受賞 第一実業2024年11月22日
-
「AGRIST Aiサミット 2024」産官学金オープンイノベーションで開催2024年11月22日