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ウクライナ国民に平和を【小松泰信・地方の眼力】2022年3月2日

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「死にたくない」(地下シェルターの少女)
「3時間くらい歩き続けていたところで僕たちは助けてもらったんだ。でもパパはキエフに残ったんだ」(バスで国外に避難する少年)
「プーチンこの少女の惨状を見ろ。おまえにはこの悲しみがわからないのか」(医師。砲撃を受けた6歳の少女の蘇生を懸命に試みるが…)
(3月2日7時台NHK「おはよう日本」より)

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「安倍氏発言の愚」の見出しに愚ジョブ!

「ウラジミール、君と僕は同じ未来を見ている。ゴールまでウラジミール、二人の力で駆けて、駆けて駆け抜けようではありませんか」と、2019年9月5日のロシア・ウラジオストクにおける通算27回目の日ロ首脳会談で、時の安倍総理大臣は、浮いた歯が抜け落ちるようなセリフを吐いた。「こいつぁ、バカだな」と言わんばかりのプーチンの表情が思い出される。

バカさついでに、これまでの黒歴史を白に代えるくらいの気概を持って、クレムリンに乗り込みプーチンを説得するかと思ったが、そんな器量も度量もない。それどころか、ウクライナ危機に乗じた発言で黒の上塗り。

2月27日放送のフジテレビの番組で、北大西洋条約機構(NATO)加盟国の一部が採用している、米国の核兵器を自国領土内に配備して共同運用する「核シェアリング(共有)」政策について日本でも議論すべきだとの考えを披瀝した。

日本が非核三原則を持ち、核拡散防止条約(NPT)に参加している点に触れ、「被爆国として、核を廃絶する目標は掲げなければならない」と保険をかけたうえで、ロシアのウクライナ侵攻を踏まえ「世界の安全がどのように守られているのか。現実の議論をタブー視してはならない」とも述べている。

また、ソ連崩壊後にウクライナが核兵器保有を放棄する代わりに米国とロシア、英国が主権と安全保障を約束した1994年の「ブダペスト覚書」に言及して、「あの時、戦術核を一部残していたらどうだったかとの議論もある」と指摘するなど、核共有を巡り「日本もさまざまな選択肢を視野に入れて議論すべきだ」と強調した。

ちなみに、東京新聞(3月1日付)は「安倍氏発言の愚」という、見事な見出しで紙幅を割いている。

「核廃絶」で平和と安全な世界を

中国新聞(3月1日付)の社説は、「核戦争が現実のものとなりかねない状況の中、あろうことか、被爆国の元首相から、許しがたい発言」「危機に便乗した問題発言であり、日本が堅持する非核三原則にも反している」と指弾する。

「非核三原則を堅持するわが国の立場から考えて、認められない」と述べた岸田文雄首相に対しては、「安倍氏に発言撤回を求めるべき」とする。

さらに、「核兵器が存在する限り、使用される恐れがある。偶発的な事故やテロリストの手に渡るリスクだけではない。今回のように保有国の指導者が愚かな判断を絶対しないとは断言できない。ひとたび核が使用されれば敵も味方もない。抑止力が機能しないことは明らかだ。それに国際社会が気付いたからこそ、核兵器禁止条約はできたはずだ。平和と安全のためには廃絶しかない。究極の非人道兵器による悲惨を知る被爆国政府こそ、それを世界に発信すべきだ」として、「被爆国として、核に頼らない安全保障の議論をリードすること」を提言している。

確かに、わが国は言うに及ばず、世界中に刃物を持たせてはいけない指導者が続出している。

世界平和を目指すうえで、「核廃絶」は絶対不可欠の取り組みである。

警戒すべきは、民意を利用して独り歩きする安全保障政策

これも危機便乗の取り組みのようだが、信濃毎日新聞(3月1日付)の社説は、米海兵隊が2月、沖縄県内の米軍施設を離島に見立て、自衛隊の戦闘機も加わった大規模な訓練を実施したことを取り上げている。

岸信夫防衛相は「緊急事態での両国の対応に関わる。事柄の性質上、詳細は差し控える」と説明を避けたことなどから、「政府は、中国や北朝鮮の脅威を理由にすれば、どんな無理も通ると考えているのか」と憤る。

さらに、「専守防衛を転換する『敵基地攻撃能力』の検討は、議事内容も開示せず進めている。海兵隊が那覇港湾施設で主目的にない訓練を実施しても、国は『主目的に沿っている』と米側をかばう」と、怒りは収まらない。

愚かな安倍氏の発言を「非核三原則をないがしろにしており、聞き捨てにできない」と斬り捨て、「中国を封じ込めたい米国の戦略に追従するのでは、国内が戦禍に見舞われる危険はかえって高まる」としたうえで、「自立した地域の営みを求めるアジアの国々の声を糾合し、米中両国に関与して衝突を防ぐ―。妥協点を探って対立を和らげる外交を二の次にしてはならない」と、冷静で賢明な行動を希求する。

「米軍基地や自衛隊駐屯地の建造に、沖縄や鹿児島の住民がどんなに反対しても、政府は取り合わず受け入れだけを強要する」ことを指摘し、「いま警戒すべきは、中国の出方以上に、民意を利用して独り歩きする安全保障政策の方だろう」とはお見事。

こんな涙は誰も流したくない

西日本新聞(3月1日付)によれば、核兵器使用を示唆したプーチン大統領に発言撤回などを求めた、長崎の被爆者5団体が2月28日長崎市内で記者会見を開いた。長崎原爆被災者協議会の田中重光会長(81)は、核兵器禁止条約が発効した中での発言を「蛮行」と表現。抗議文ではロシアの発言について「条約を完全に無視し、欧米諸国をどう喝している」と批判し、軍の撤退なども求めた。

長崎市の田上富久市長と広島市の松井一実市長もこの日、連名でプーチン氏宛ての抗議文を大使館に送付したとのこと。

「核兵器がある限り(使用の)リスクは消えない。なくす方向へ議論を進めなければ」(田上長崎市長)
「核抑止力を信奉していることは明らかだ」とプーチンを批判(松井広島市長)
記者会見の写真には、涙を拭う田中氏の姿が。

「80数年前に体験した光景が目に浮かんでくる」(NHK長崎NEWS WEB 2月28日)と語る氏の人生は、戦争と原爆によって、涙と共にあったのだ。

恐怖のなかを逃げ惑う罪なきウクライナの人々も、生ある限り、プーチンの蛮行によって涙を流し続けなければならない。

「地方の眼力」なめんなよ

本コラムの記事一覧は下記リンクよりご覧下さい。

小松泰信氏のコラム【地方の眼力】

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