【JCA週報】協同組合運動と「土づくり」2022年3月7日
「JCA週報」は、日本協同組合連携機構(JCA)(会長 中家徹JA全中代表理事会長、副会長 土屋敏夫 日本生協連代表会長)が、各都道府県での協同組合間連携の事例や連携・SDGsの勉強会などの内容、そして協同組合研究誌「にじ」に掲載された内容紹介や抜粋などの情報を、協同組合について考える資料として発信するコーナーです。
今回は、にじ 2012年春号のオピニオン「協同組合運動と「土づくり」です。
にじ 2012年春号 オピニオン
松岡公明(当時 JC総研 常務理事)「協同組合運動と「土づくり」
土壌学用語で「不可給態」という言葉がある。土壌中に養分はあるが、その物質循環がうまく機能せず作物に吸収されない状態のことである。日本の農地でも、土壌・作物診断に基づかない不適切な施肥により、土壌中の養分の過剰(「土のメタボ」)やバランスの悪化が顕在化している。農業生産力の向上、気候変動に強い安定した農業生産という生産技術面のみならず、農業の持つ自然循環機能の保全からも土づくりや土壌管理の重要性が指摘されている。
東日本大震災の復興においては、それぞれの地域社会の「土壌」を顧みない「お仕着せの復興」が幅を利かせているようだ。枝ぶりもよく、一見、まことしやかに見える復興プランも、当事者意識がないままでは、その地域の土地には根付かない。復興に向けて、その地域の「不可給態」を可給態化するようなエンパワーメントのあり方が問われているのではないか。
今日の協同組合運動は、レイドローが指摘した「信頼」「経営」「思想」の危機が同時進行の状態にあると言えよう。それぞれの3つの危機の源泉は何なのか、なぜ、そういう危機に直面してしまったのか、さらにはそれぞれの危機がどのようにリンクしているのか、危機の「本質」を問い直してみることが重要である。「レイドロー報告」は、単なる「報告」ではなく、協同組合関係者に対する「警告」とも言うべき「問い掛け」であったことを忘れてはならない。
「戦略的な意思決定では、範囲、複雑さ、重要さがどうあっても、初めから答えを得ようとしてはならない。重要なことは、正しい答えを見つけることではない。正しい問いを見つけることである。意思決定において、最初の仕事は問題を見つけ、それを明らかにすること。この段階では、いくら時間をかけてもかけ過ぎることはない」(ドラッカー)
これからの協同組合の革新も、ビジネス手法で性急な答えを求めるのでなく、危機の源泉をたどりながら、まずは土壌診断、健康診断によって「正しい問い」を探りあてることから始めなければならない。いくらいい種を蒔いても、いい作物は育たない。「国際協同組合年」という種を蒔くだけでは、いい協同組合は育たない。「正しい問い」・・・地域社会と協同組合内部の「不可給態」と向き合い、作物が育つためにどういう「土づくり」が必要なのか、そしてわが国の「協同の大地」を今後どのように耕していくのか、じっくり、しっかり考える国際協同組合年としたい。
JCAは、「学ぶとつながるプラットフォーム」をめざしています。
重要な記事
最新の記事
-
災害乗り越え前に 秋田しんせい農協ルポ(2)今後を見据えた農協の取り組み 営農黒字化シフトへ2025年1月23日
-
災害乗り越え前に 秋田しんせい農協ルポ(3)水田に土砂、生活困惑2025年1月23日
-
災害乗り越え前に 秋田しんせい農協ルポ(4)自給運動は農協運動2025年1月23日
-
人づくりはトップ先頭に 第5次全国運動がキックオフ 150JAから500人参加【全中・JA人づくりトップセミナー】(1)2025年1月23日
-
人づくりはトップ先頭に 第5次全国運動がキックオフ 150JAから500人参加【全中・JA人づくりトップセミナー】(2)2025年1月23日
-
人づくりはトップ先頭に 第5次全国運動がキックオフ 150JAから500人参加【全中・JA人づくりトップセミナー】(3)2025年1月23日
-
元気な地域をみんなの力で 第70回JA全国女性大会2025年1月23日
-
【JA女性組織活動体験発表】(1)新しい仲間との出会い 次世代へつなげるバトン 青森県 JA八戸女性部 坂本順子さん2025年1月23日
-
【JA女性組織活動体験発表】(2)この地域を、次世代に繋ぐ、私たち 山梨県 JA南アルプス市女性部 保坂美紀子さん2025年1月23日
-
【JA女性組織活動体験発表】(3)私たちの力で地域をささえ愛 愛知県 JA愛知東女性部 小山彩さん2025年1月23日
-
旧正月【酒井惇一・昔の農村・今の世の中】第325回2025年1月23日
-
地元産米を毎月お届け 「お米サポート」スタート JAいずみの2025年1月23日
-
定着するか賃金引上げ 2025春闘スタート 鍵は価格転嫁2025年1月23日
-
鳥インフル 米アイオワ州など5州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入を一時停止 農水省2025年1月23日
-
鳥インフル 英シュロップシャー州、クルイド州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入を一時停止 農水省2025年1月23日
-
スーパー売り上げ、過去最高 野菜・米の価格影響 「米不足再来」への懸念も2025年1月23日
-
福島県産「あんぽ柿」都内レストランでオリジナルメニュー 24日から提供 JA全農福島2025年1月23日
-
主要病虫害に強い緑茶用新品種「かなえまる」標準作業手順書を公開 農研機構2025年1月23日
-
次世代シーケンサー用いた外来DNA検出法解析ツール「GenEditScan」公開 農研機構2025年1月23日
-
りんご栽培と農業の未来を考える「2025いいづなリンゴフォーラム」開催 長野県飯綱町2025年1月23日