【JCA週報】労働者協同組合と信用金庫-協同の協同-2022年3月14日
「JCA週報」は、日本協同組合連携機構(JCA)(会長 中家徹JA全中代表理事会長、副会長 土屋敏夫 日本生協連代表会長)が、各都道府県での協同組合間連携の事例や連携・SDGsの勉強会などの内容、そして協同組合研究誌「にじ」に掲載された内容紹介や抜粋などの情報を、協同組合について考える資料として発信するコーナーです。
今回は、にじ 2021年夏号に寄稿いただいた城南信用金庫名誉顧問 吉原毅氏の「労働者協同組合と信用金庫-協同の協同-」の一部を、紹介します。
全文はJCAのウェブにて掲載しておりますので、ご覧ください。
にじ 2021年夏号
吉原毅 城南信用金庫名誉顧問 「労働者協同組合と信用金庫-協同の協同-」
9.協同組合により民主主義を確立する
かつて福沢諭吉は「一身独立して一国独立す」と述べ、独立の気概ある国民を育成し、憲政=民主主義政治を確立しようと苦闘してきたが、世界恐慌の下に戦争と全体主義が世界を覆った。現在も長期にわたるデフレ不況の中で民主政治は弱体化しており、特にこのコロナ禍の緊急事態下、全てにおいて管理と統制が優先し、人と人が分断され、世界中で強権的政治が横行し、国家の主権を脅かすグローバル主義、覇権主義が世界に拡大している。その黒幕こそ、世界の国際金融資本とその追随者である大企業である。
この現状を打開するためには、福沢諭吉のいう国民意識の向上による国民主権=国の独立こそ必要だが、それには協同組合運動、とりわけ労働者協同組合が大きな可能性を秘めている。労働者協同組合は、「雇われ人根性」を捨て、全員が経営者として平等に話し合う全組合員経営を基本としている。誰の意見も否定しないし排除しないとして、職場において多くの時間をかけて徹底した話し合いが行われている。その結果、職場風土は思いやりと温かさがあり、共感性と主体性を持った人間的な魅力のある方が多い。また企業内部に閉じこもらず、企業の外部である利用者や地域住民との関係も緊密であり、貧困や差別などの社会問題への意識も高く、社会運動への取組みも活発である。まさに人間性の回復を目的とした協同組合運動の理想に近い活動を展開している。
既存の農協、生協、信用金庫などを見ると、こうした徹底した話し合いがなく、残念ながら上意下達による指示命令が中心であり、上からの人事管理により情熱と主体性のない「雇われ人根性」の人材を数多く生み出している。これでは株式会社と何ら変わりない、使命感も理想もない、自己保身だけが横行するただの営利企業に成り下がってしまう。我々は協同組合の原点を着実に実践している労協の全組合員経営の取組みを見て大いに反省し取り入れるべきである。
現代の日本は、かつてのアテネやローマ帝国の末期のように、民衆は無責任で享楽的になり、社会や他者への関心を失い、権力者が用意したパンとサーカスに熱中し、時として暴力で操られ、また徹底的に収奪されようとしている。こうした社会を変えるためには、自分で考え行動する自信と勇気と使命感を持った主体性のある国民を育成し、国民主権と国家の独立を勝ち取らなければならない。そのためには、株式会社の経済領域を減少させ、話し合いと共感を重視する協同組合企業が中心の地産地消経済を拡大し、労働者や利用者、地域住民など全員参加型の地域コミュニティーを再生して、皆が幸せになるよい国をつくるための社会参加、政治参加を活性化することが必要であり、それが協同組合の目指す本来の使命である。
コロナ禍において、各信用金庫では、コロナ治療に取り組む病院を支援し、資金繰りに苦しむ企業への融資に全力を挙げ、持ち帰りサイトを立ち上げて飲食店の売り上げ減少を防ぐなど、さまざまな活動をしている。その中で改めて知ったことは、人との心を繋ぎ、連帯を回復することで、生きる活力や、喜び、希望が生まれることである。それは協同組合としての理想を目指す労働者協同組合が先行して実施し、我々に教えてくれたことである。
これからも、信用金庫としては、労働者協同組合とともに、協同組合の精神に徹して、できるだけ多くの人たちと、共に学び、成長し、日本を、そして世界を明るく元気にして、健全で幸せな未来を築いていきたい。
全文はJCAのウェブサイトにて掲載しておりますので、ご覧ください。
https://www.japan.coop/wp/publication/9574
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