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線路よつづけどこまでも【小松泰信・地方の眼力】2022年3月23日

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「線路はつづくよ どこまでも 野をこえ 山こえ 谷こえて はるかな町まで ぼくたちの たのしい旅の夢 つないでる♪」『線路はつづくよどこまでも』(佐木敏作詞・アメリカ民謡・吉川和夫編曲)。悲しいかな、その線路が続かなくなっている。

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北海道新幹線延伸と在来線の廃止

JR北海道が2月上旬に計3500本も運休したことは記憶に新しい。

「サンデー毎日」(4月3日号)は、「原因は自然現象とはいえ、除雪車が故障するなどして運行再開の時間を何度も変更したJRに批判が集まった。JRは近年、不採算路線を廃止し続けてきたこともあり、道民の不信感が高まっている」とする。

そして、2030年度開業予定の北海道新幹線延伸部(新函館北斗-札幌間)と並行する函館本線の長万部-余市間(約120キロ)の事実上廃止決定を取り上げる。

近年、開業新幹線と並行する在来線のほとんどは、JRから切り離され、地元自治体出資の第三セクターが経営を肩代わりしてきた。しかし、同延伸部の沿線9市町の首長は2月の会議で「町の財政を考えたら、第三セクターで鉄道を運営するのは無理」と判断し、バスへの転換を選んだ。

「JRが出してきた資料は廃止を前提としたものとしか考えられませんでした。存続するには自治体の負担が大きく、議論を深めるには至りませんでした」(バス転換を容認した佐藤聖一郎・仁木町長)

「せっかく先人が築いたインフラ。廃止は地方を縮小させます。しかし貨物輸送に使わない現状では赤字を解消できません。第三セクターにすれば、赤字が年間数億円にも上り自治体が負担するのは無理。国が支援するべきです」(JRや国土交通省との対決姿勢を鮮明にした齊藤啓輔・余市町長。役場に問い合わせたところ、当該区間を貨物が通っていない主な理由は、単線であることと、貨物重量に対する線路の耐性問題、とのこと)

「公共交通という大前提を考えて、国を動かせる政治家が今の北海道にはいません。新幹線と引き換えに在来線の廃止が決まり、地方がますます衰退することが分かっていても、結局はあきらめるしかないのです」(JR廃止問題と直面したある元町長)

まちづくりや生活の質にも影響を及ぼす減便

「地方鉄道の経営が厳しさを増し、運行本数を削減する動きが加速している」ではじまる、京都新聞(3月21日付)の社説は、「JR西日本が在来線で運行を取りやめたり運転区間を短縮したりした本数は530本で、昨年10月改正時の約4倍だ」として、「減便は通勤通学や外出の利便性を低下させ、まちづくりや生活の質にも影響する」と警鐘を鳴らす。

関西6府県などでつくる関西広域連合が「住民の生活基盤を揺るがしかねない」と危機感を表し、コロナ後は減便を元に戻すよう要望したことを紹介したうえで、「見通しは厳しい」とする。

「大都市部の路線や新幹線で稼いだ収益でローカル線の赤字をカバーしてきたやり方が成り立ちにくくなってきた」ことをJR西日本が強調し、不採算路線に関し、「今考えなければ地域の輸送自体が廃れてしまう。新幹線や都市圏のサービスに影響を与えかねない」という姿勢を示していることを伝えている。

「経営努力だけで乗り切るのが難しいのは確かだ」とJRの立場に理解を示し、「将来を見据え、鉄道事業者と沿線自治体が地域の公共交通の在り方を具体的に描いていくことが必要だ」とする。

厳しい被災鉄路の復旧

災害によって、不通が続くローカル線の復旧がいかに厳しい状況にあるかを伝えているのは、西日本新聞(3月23日付)。

国土交通省と熊本県が3月22日に、2020年7月の熊本豪雨で被災し、一部区間で不通が続くJR肥薩線の復旧方法の検討会議を初めて開いた。同会議では、230億円に上るとされる復旧費用の負担問題や復旧後の路線維持の方策が主要課題となる。

JRの負担軽減策はあるようだが、「JR九州としては、これまでに経験したことのない額。普及にはランニングコストも考える必要がある」と訴えるのは、古宮洋二JR九州取締役専務執行役員。

「肥薩線は観光のシンボル。国はJR側の負担を減らす手だてを考えて」と、早期復旧を願うのは、堀尾謙次朗・人吉温泉旅館組合長。

「災害復旧で財政が悪化しており、費用を拠出できるのか」とは、鉄道復旧後の維持費負担を心配する、ある自治体幹部。

つながってこその鉄道

中国新聞(3月13日付)の社説は、今ダイヤ改正で、中国地方で在来線の100本近くの減便に加え、廃線含みで赤字ローカル線を見直す方針を示していることに対して、「民間企業としてやむを得ない面はある一方、鉄道事業者として地域の交通手段を守る使命もあるのではないか」と問いかける。

この4月1日で国鉄の分割民営化から35年の節目を迎えるが、「鉄道は暮らしを支える『公共財』である。それを託された責任を考えれば、採算だけで路線切り捨てやサービス低下はできないはずだ。ローカル線の維持を事業者任せにしていた国や自治体も財政面を含めた支援へ乗り出す時だろう」と、分割民営化の負の側面に鋭く斬り込む。

欧州の国々が、「脱炭素化の切り札に位置付け、利便性向上や維持に政府や自治体が積極的に関わり、まちづくりの手段としても重視する」観点から、鉄道を積極的に活用し始めていることを紹介する。

「運営方法は、鉄道施設を自治体などが保有し、鉄道会社は運行に専念する『上下分離方式』が普及する。欧州連合(EU)は、輸送量を2050年までに3倍にする目標を掲げる」ことを示し、「事業者に任せきりで、採算が価値の物差しとなってきた日本の鉄道の在り方が問われよう。地域の生活を守るのは政府の役割である。今は中小の鉄道事業者に限られる補助制度をJRにも使えるようにするなど、財政的な支援で前面に出るべき」とする。

さらに「高齢者ら交通弱者の移動手段確保や中高校生の通学での教育支援に加え、二酸化炭素の排出の少なさや定時性など採算だけで計れない価値がある」と、その多面的機能を指摘する。

そして、「鉄道はネットワークであることが重要なインフラだ」との考えに立ち、「『残してほしい』と要望するだけでなく、まちづくりにどう位置付けるかをしっかり議論する必要がある」と、自治体に訴える。

たのしい旅の夢をつないでくれない、寸断され、ネットワークを形成していない、「つづいていない鉄道」の価値は低い。

「地方の眼力」なめんなよ

本コラムの記事一覧は下記リンクよりご覧下さい。

小松泰信氏のコラム【地方の眼力】

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