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パチンコ店にデイサービスの役割も?【酒井惇一・昔の農村・今の世の中】第191回2022年4月7日

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以下は、コロナ自粛騒ぎが起きる2年前、パチンコ店でアルバイトをしていた孫との一問一答である。

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「客の入りはどうだ」
「いつもほぼ満員だ」
「そうはいってもウィークデーの日中は少ないだろう」
「たしかに若干は減る、だけどまあまあ入っている」
「どういう人が入っているの?」
「日中は退職者・高齢者が多い、毎日のように通って来る人もたくさんいる」
「だって、毎日通えるほどお金があるわけはなし、結局は大損して来られなくなるんじゃないの」
「いや、1円玉や0.2円玉などがあり、それで安く長い時間楽しむことができ、損はそんなに大きくならない、だから大丈夫なんだ」
「はあ?玉は100円で25個、一個4円だろう、しかも自動だからあっという間にお金をすって終わってしまうんじゃないの」
「それは普通の貸し玉料金の場合であって、今は一玉0.2円、0.5円、0.8円、1円、2円、4円と、料金はさまざまになっている。普通つまり一個4円であれば千円で250発打つのだが、0.2円玉なら同じ千円で5000発打てる、つまりそれだけ長時間安く遊べる。ただしもうかるお金も20分の1になる、でも損も少ない。だから高齢者の暇つぶしには非常にいい。店の方も客がたくさん入るのでいいのだ」
「へえ、パチンコ店もうまいことを考えたものだ」

なるほど、納得。それにしても驚いた、感心した。パチンコ店も変わったものだ、まったく知らなかった。私の世間知らずにも改めて「感心」した。

さらに孫は付け加える。

「パチンコ屋は、夏の暑いときは涼しく、冬の寒いときは暖かい、自宅にいるときよりずっといい環境だ。音はうるさいがその昔にくらべたら格段の差、しかも暑いというと従業員がクーラーを強め、寒いと言えば温度を上げてくれる等、老人の体調、意見に合わせて快適な環境を維持してくれる。
また、誰かが何かぐあいが悪そうだとなれば従業員が見つけ、あるいは周囲の年寄りの客が従業員に知らせてくれ、従業員は必要に応じて救急車を手配する等の対応をしてくれる、一人暮らしの老人などにはこんないいことはない。
しかも、客の老人同士が顔見知りになって休憩所等でおしゃべりしたり、仲良くなったりする等、パチンコ屋は交流の場になっており、孤立感から解放されている。
だからパチンコ屋は老人のボケ防止、孤立防止に役立っており、デイサービスと同じ役割を果たしているようなものだ。
従業員はみんなこう言っている、今のパチンコ店は『第二老人ホーム』だと」

思わず笑ってしまった。パチンコ店もよく考えたものだ。時代に対応して生きる道をよく探したものである。

同時に、私がいかに世間知らずになっていたかもよくわかった。パチンコ業界がこのような動きをしているなんてまったく知らなかった。「負うた子に教えられ」ならぬ「負うた孫に教えられ」、自分も年をとったものだ。半分(というよりものすごく)うれしかったが。

十数年前ころから今のやり方が始まったのだそうである。「変わった」と今書いたが、私たち子どももパチンコがやれた戦後は一玉1円だったから、パチンコの一部の料金は70年前に戻ったことになる、機械は大きく進化しているのにである。

ともかく使い勝手がよくなった。これでは老人はやめられない。

となるとパチンコ店も休むわけにはいかないことになる。

これもパチンコ店の当初の自粛不服従の理由となったのではなかろうか(これは褒めすぎ、もうけ第一のためだろうとは思うが)。

本コラムの記事一覧は下記リンクよりご覧下さい。

酒井惇一(東北大学名誉教授)のコラム【昔の農村・今の世の中】

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