農産物の画像取引まで提言した日本農業法人協会【熊野孝文・米マーケット情報】2022年4月12日
日本農業法人協会が7日に「日本農業の将来に向けたプロ農業経営者からの提言」を農相に提出した。提言書は政策提言として7項目を挙げ、それぞれの項目について詳細な内容が記されている。同協会の会員社約2000に対してアンケートを実施、7割を超える会員社から回答があり、それを半年かけて取りまとめたというものだけあって提言は多岐にわたっている。その内容は同協会のホームページにアップされているのでそちらを見て頂きたいが、コメに関連する提言を紹介したい。
コメ政策の課題については8項目上げられているが、それ以外にコメに関わる問題として、
〇インボイス制度の農協等特例によって、「買取販売」を行っていた集荷業者・団体が同特例の対象となる「無条件委託販売」に先祖返りする動きが見受けられる。これは、農業競争力強化プログラムに逆行するとともに、同特例の対象外の取引きを行っている農業者・集荷業者・団体においては、取引先の減少につながる。このため、消費税額の正確な把握及び納税というインボイス制度の趣旨に基づき、消費税を納税すべき者が確実に納税するよう制度運用を徹底すること。
〇米の価格形成に大きな影響を及ぼす「無条件委託販売」からリスクを負った「買取販売」へのさらなる転換を集荷業者・団体に求めるとともに、生産者の所得向上につながる実需者・消費者への直接販売を中心とする流通・加工構造への改革をさらに進めること。
〇市場取引における画像取引などIT化を進め、現物が無くても円滑な取引きができるよう取引環境を整備し、農産物が物理的に市場を経由することなく、流通する仕組みを推進すること―などを上げている。
『画像取引』まで言及しているのは驚きだが、実は日本農業法人協会は非公式にコメの画像取引を行っているコメ流通業界団体や実需者団体、機械メーカーとこの問題について意見交換したこともあるので、こうした提言が出てきたのだろう。
米政策の課題についての提言は以下の8項目
① 販路を有する又は販売の見通しがある農業者に対して生産抑制を強要することがないようにすること。このためにも、平成29年産以前のように、国・都道府県等の行政配分による生産調整に戻さないこと。また、行政による生産数量目標配分が廃止された平成30年産以降、各地域の地域農業再生協議会や集荷団体において、需要に応じた生産やこれに基づいた集荷及び販売がしっかりと行われていたか否かの検証をすること。
② 集荷業者や団体を通じて米を販売する生産者においても需要に応じた生産を強く意識し、責任をもって米の生産に取り組むため、生産者自らが各々の販路・販売状況を踏まえて生産調整を判断できるよう、集荷業者・団体は、集荷した米の販路・販売状況(特に販売未了が生じている場合にはその数量)を生産者に明確に伝える必要がある。この実施を大前提としたうえで、地域の再生協議会で生産者又は集荷業者・団体等関係者が公正かつ活発な議論が行えるように、集荷業者・団体は、集荷した米の販路・販売状況(特に販売未了が生じている場合にはその数量)を生産者に明確に伝えるなど環境を整えること。
③ 水田農業の生産振興に係る補助金については地域の再生協議会ではなく、需要に応じた生産及び販売にしっかりと取り組んだ者に対して直接支援すること。
④ 米でも転換作物でも、農業者自らが販路を確保し、売れるものを作り、収益を確保することが前提である。ついては、作るだけで収益が上がると誤認を招きかねない「高収益作物」という用語の使用は避けること。
⑤ 水田における転換作物の生産は、米の供給を抑制するためではなく、需要のある農産物を積極的に生産する目的とし、生産する農地の機能(将来、水田として活用するか否か)を問わず、国内で不足し、需要のある作目の生産に対して積極的に支援すること。また、水田を畑地化し、需要のある作目を低コストで効率的に生産するために必要となる基盤整備、機械・設備やスマート農業等の導入を推進すること。
⑥ 消費者・実需者ニーズを的確に捉え、需要に応じた転換作物を機動的に生産するため、同一作物の複数年契約や都道府県・市町村による転換作物の指定を廃止すること。
⑦ 転換作物によっては、乾燥施設などの設備の整備及び耕畜連携が密になされないと生産振興につながらないため、転換作物の生産に取り組みやすい環境整備をさらに進めること。
⑧ 米の現物市場については、農業法人等の現物市場外で行う適正な価格での取引きを歪めることがないように留意すること。また、米の価格変動リスクの軽減や需要に応じた生産を計画的に取り組むため、先を見越した公的な価格指標の公表を検討すること
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