パチンコから考える高齢者問題【酒井惇一・昔の農村・今の世の中】第192回2022年4月14日
コロナ騒ぎで自粛を要請されても休もうとしない、自粛騒ぎの最初のころパチンコ店はそう言われてマスコミ等に叩かれた。
私も最初はそう思った。しかしそのとき孫の言ったことを思い出した、パチンコ店は第二老人ホームである、とすると休むわけにもいかない、「社会的使命」があるのだと。
高齢者(もちろんその一部だが)にとってはパチンコ店が休みとなればどうしようもない、どこかにお茶飲みにいくわけにもいかない、散歩も遠慮しろと言われている。家でジーッとしていたら、ますますボケてきて、また身体もさらになまってしまう。だから高齢者も強く開店を希望している。その希望に応えないわけにはいかない。こういうこともあったのではなかろうか。
ただしそんなことを考えるのは末端の店員のみ、オーナーたちは自粛で休まざるを得なくなって時間を持て余している人たちを吸収してさらに儲けようということで自粛に応じなかっただけのことだろうが。
コロナ緊急事態宣言でとうとうパチンコ店も自粛休業となった。パチンコ店は大もうけしてきたのだからいいが、従業員はどうなるのか、そしてなじみの高齢者はどうやって時間を潰すのかが心配だ。これで認知機能が低下するなどということがなければいいのだが。
また十数年前の話となるが、まだ幼かった孫たちと仙台の郊外の大型量販店に買い物にいく、孫たちはそこの3階の一角にある子どもの遊技場に行き、いろんな遊具で遊ぶのが楽しみだ。そのなかにパチンコやスロットマシンがある、といってもそれで金儲けなどできないが。ところがそこはお年寄りの定席になっている。いつも年寄り(女性が多い)が座っているのである。当然トイレなどに行きたくなる、ましてや老人のことだ、そのときは空くはずなのだが、傘とか荷物とかをそこにおいて他人が座ることができないようにする。一日そこを占拠しているのである。
子どもに帰って遊ぶのもいいが、子どもを追い払って朝から夕方まで占領してしがみついているあの姿、いくら暇つぶしとはいえあまりにもみじめ、見たくないものだった。
パチンコ店でバイトをしていた孫もそれを幼心に感じていたらしい、それで笑いながら言う、あのお年寄りたちに教えてあげたい、子どもを押しのけたりしないで今のパチンコ屋に行ってくれ、前と違って安く遊べるからと。
それはそれとして、パチンコ店を老人ホームとして安く利用しているのは私と同じ高齢者、戦中・戦後を生き抜いてきた世代である。さすがである、ともかくしぶとく生きている、感心する。
しかし、とも考える、できればそのエネルギーを、損金(若干ではあっても)を、もっと外に出て健康増進に、社会に役立つものに向けてもらえればさらにいいのだがと。
でも、またこんなことも考える、ろくなおもちゃも遊具もない時代、食うや食わずの時代からこれまで、がんばるだけがんばってきたのだ、もういいではないか、好きにしたらいいだろう、一人家に閉じこもって何することなく孤立して暮らし、ぼけていくよりはパチンコ屋に通うのもいいではないか。そもそも少ない年金が損金で減ってしまうが、若干であれば第二老人ホームに支払う介護費用だと思えばいい。どうせ介護施設のデイサービスに行っても幼稚園並みに歌わされたり、子ども並みのお遊びに付き合わされたりする程度なのだ。
とは言ってもパチンコに払う金は結局は損、パチンコ業界の儲けになるだけ、何かもっといいことがないか、とは思うのだが。
しかし、カジノよりはましである。最近政府はカジノを中核とする統合型リゾート=IRなるものをつくると躍起になっているが、政府が博打場を整備してやる、つまり博打を推奨する、ちょっと信じられない。こんなことに金と人を使うなら、もっともっとやるべきことがあると思うのだが。
コロナはいまだに治まらない、でも以前と違って日常は平常、パチンコ店も完全にもとに戻ったよう、相変わらず第二老人ホームの役割を果てしているのだろうか。
などと考えているうちに東北は桜の花も終わって稲作についてはそろそろ農繁期に入る、本稿もそれにあわせて農業の話にもどろう。この前までは稲作を中心にして農業、農村、農家の変化を見てきたが、今度は農基法農政で成長農産物の一つとして位置づけられてきた野菜作について、東北地方の私の生まれ育った地域を例にして語らせていただきたい。
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