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過疎に拍「車」を走らすJR【小松泰信・地方の眼力】2022年4月20日

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総務省が4月1日に公表した、2020年度国勢調査の結果に基づく「過疎地域」に、65の市町村が追加された。これによって「過疎地域」は、全国1718市町村のうち885となり、初めて全国の半数を超えた。

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過疎対策に近道はなし

「過疎集落が国土保全に果たす役割も改めて認識したい」とするのは、福島民報(4月16日付)の社説。

福島県は今年度から9年間で新たな過疎・中山間地域振興戦略を推進するが、「過疎地域の再建が全国共通の課題である以上、重点させる事業は似通ってくる。人口を維持、増加させる取り組みと同時に、他に秀でた特色を生かし、磨いて地域を支える人材を呼び込む視点が一段と求められる」と提言する。

そして「過疎地域の自然は美しい国土を形成する。山林は水源を守り、地球温暖化を抑える上でも欠かせない。過疎地域の意義に照らせば、選挙向けに法律を書き換えるような次元ではない。恒久的な法律に格上げし、少人数でも存続できる長期的な策を見いだすべきではないか。過疎対策に近道はない」と訴える。

「地方回帰」の流れに注目

「地方の衰退を端的に示す事象であり、人口偏在問題への危機感を強めねばならない」とは、高知新聞(4月19日付)の社説。

1970年に議員立法として制定されて半世紀、「手が打たれてこなかったわけではない」とする。

市町村側は、過疎債で生活環境の整備などを進めてきた。しかし、「箱物に偏った、依存体質が強まった」などの指摘を紹介し、「自立への意識が問われる面はあるかもしれない」と課題を示唆する。

国側については、安倍政権が2014年に「地方創生」を掲げ、東京一極集中の是正と人口減対策を看板政策にし、多額の財源を投入したものの、「選挙向けの看板の掛け替えとも批判され、『異次元の政策』と銘打ったほどの効果は出なかった」とする。

過疎の底流に、「都会の仕事が魅力的で給与も高い」「都会の生活は便利で華やか」といった人々の価値観が流れていることを指摘し、新型コロナウイルス禍を契機として確実に広がっている、「地方回帰」の価値観を発信、浸透させる取り組みに力点を置くことを求めている。

「日本の半分超は過疎地-。改めて現実を思い知らされる」で始まる京都新聞(4月5日付)の社説も、「日常を一変させた新型コロナウイルス感染の拡大は、都市部の人口密集のリスクを再認識させた。地方へ向けられつつある人々の注目を、地域社会の持続性にどうつなげていくかが問われる」とする。

ただし、東京23区の人口が2021年、流出を示す初の「転出超」となったが、転出先は近郊の首都圏内が多いことに注目する。

地方都市において、「移住者に定着してもらうのは容易でない」とし、「週末を過ごす『二地域居住』を含め、特色を生かして交流人口を増やす取り組みも重要だろう」とする。

後世に禍根を残しかねない鉄路廃線

交通インフラの整備状況は、交流するにしても定住するにしても気になる所。

3月23日の当コラムで取り上げた、2030年度開業予定の北海道新幹線延伸部(新函館北斗-札幌間)と並行する、函館本線の長万部-小樽間(約140.2キロ、通称;山線)の廃止が決まった。並行在来線の廃止は全国2例目で長大区間では初めて。当該地域は、明治期以来の幹線を失うことになる。

北海道新聞(3月29日付)は、「在来線による国土軸整備を放棄した国は重い責任を感じるべきだ。広域交通網維持を担うはずの道も赤字線廃止の時と同じく自ら将来像を示すことをしなかった」とし、「決定は後世に禍根を残さないか。各首長も胸に刻んでほしい」と指弾する。

また、「新函館北斗開業でも政府・与党の事前試算では収支改善効果が年45億円程度あるとされた」が、「実際はコロナ流行前から赤字が続く」ことに言及し、「札幌延伸で新幹線利用が大幅に増える胸算用も楽観視できない」とする。そして、「住民の足確保だけでなく、農林漁業などの産業振興を図る手だてを地域一体で時間をかけ模索する必要がある。過疎化に歯止めをかけるのは道の役割だ。今後のバス網構築にも消極的ならば、道に対する全道市町村からの不信は増すだろう」と警告する。

鉄道の維持は国策

「100円の収入を得るために2万5416円の費用がかかる」と、芸備線の東城(広島県)-備後落合(同)間25.8キロの収入対費用から始まるのは、JR西日本が4月11日に公表したローカル路線の収支に関する記事(毎日新聞、4月12日付)。

JR西日本の飯田稔督(としまさ)地域共生部次長は「廃線を前提に議論する考えはない。ゼロベースで最適な交通体系を地域と話し合っていきたい」としつつも、「このままの形で100%、JR西の負担でやっていくのは難しい」とも述べている。

しかし、額面通りに受け取るわけにはいかない。

中国新聞(4月13日付)の社説は、「西日本豪雨では呉線が寸断し、都市機能が長期間不全になった」ことから、「赤字路線が主要幹線の不通時に迂回路となることもある。大量輸送が可能な鉄道貨物が、運転手不足のトラック業界に対し、巻き返すこともあり得る。全国に連なる鉄道網が再生の契機になる可能性は小さくない」と、「鉄道の底力」を捨て難きものとする。

そして「公共性より経済性を重視して国鉄を分割したのは政府である。経済の負の側面が強まったからといって、安易に路線廃止を認めることは無責任」「鉄道の維持は国策」として、「赤字ローカル線の将来はどうあるべきか。政府がまず明確な再生ビジョンを示すべきだ」と訴える。

ぽっぽやのプライド

筆者は2021年10月から岡山市が運賃を半額負担する制度の恩恵に浴している。町中まで140円が70円になっただけで、無理をしてもバスを利用する自分に、正直驚いている。さらに昨年、11月と12月に2日だけではあるが、路線バス・路面電車の運賃無料DAYが実施された。車内はここ数年見たこともないくらいの密状態。経済への好影響も確認されている。

JRのすべきことは、赤字路線の減便、運賃値上げで、過疎に拍「車」を走らせることではない。ぽっぽやのプライドにかけて、増便し運賃の値下げか無料化で、客車を走らせ地域に貢献すること。鉄道事業者、自治体、国の三者での検討を提案する。

「地方の眼力」なめんなよ

本コラムの記事一覧は下記リンクよりご覧下さい。

小松泰信氏のコラム【地方の眼力】

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