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憂慮すべき課題が山積 課題解決型の生産部会組織をめざそう!【JAまるごと相談室・伊藤喜代次】2022年5月10日

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A・ライフ・デザイン研究所 代表 伊藤喜代次A・ライフ・デザイン研究所
代表 伊藤喜代次

前回の本コラムで、集落ごとの組合員組織(農家組合とか営農組合などと呼ばれる)の活動の低迷や課題に触れました。今回は、JAの農業振興策や販売事業に直結する悩ましい問題として、生産部会組織について考えたいと思います。

JAによっても違いがあるとは思いますが、生産部会組織は憂慮すべき課題が数多くあります。あるJAでの部会組織ごとのヒアリングでは、生産者組織のメンバーの減少、高齢化、経営規模の格差の進展など、部会組織の問題は共通しています。さらに、部会員の生産量、出荷量、平均粗収入、平均所得率などの伸び悩みや減少も、作物によって違いますが、実績・数値の推移が問題の深刻度を表しているようです。

また、部会活動の内容にも課題が多く、部会組織によって違いがありますが、活動回数の減少、参加率低下などは共通の課題のようです。具体的な経営の改善につながる情報交換、研修などの部会活動への要望の声がもっとも多く聞かれました。

今年度から、新たな中期計画にもとづいて、農業振興計画がスタートするJAが多いと思います。農業振興の大きな柱の一つは、個々の農業経営の健全性や成長性をいかに確保するか、サポートするかです。これが「課題解決型」の営農指導、部会活動の必要性です。

もう一つは、JAの農業振興策に連動した生産部会組織の具体的な組織目標の設定、成果の確実な達成のための活動内容の変革と運営方法の改善であるといえます。

JAによっては、農業振興計画の策定プロセスで、部会組織との意見交換や目標づくりなどについての話合いなどが不足しており、JAサイドでの計画づくりが中心ではないという印象があります。部会組織や個別経営の改善を含めた農業振興策の議論が必要です。

各部会活動の実態把握と個々の部会強化策を

これまでJAの営農部門の生産部会組織への対応は、ほぼ一律で、前年踏襲型の印象があります。部会役員と前年の活動内容を振り返り、次年度の活動計画、栽培基準や出荷のためのルールづくり、具体的な生産・経営指標の策定などを行います。

この内容は、総会や部会活動で確認するのですが、ここから先は、個々の農業経営での取組みに任されます。これでは、「課題解決型」の営農指導、部会活動にはなりませんし、個々のメンバーの前向きな経営改善の実行、生産技術の向上・実践、経営数値改善のための具体策の実施などに取り組むことができにくいようです。

そこで、部会組織を構成する個々のメンバーの経営に関する課題や提案ができる状況をつくることです。

部会組織の改革を進めるためにも、前向きな経営改善に取り組む農家経営を創出するためにも、個別、グループを中心とした、新しい組織活動に取り組むことです。その前提作業は、3年前からの部会全体とメンバー個々のデータ・数値の収集と分析することで、課題の絞込みの作業です。

これを部会組織ごとに実態把握を進めますが、すべての部会を一斉に行うことは難しいので、データ収集し、調査・ヒアリングを実施する部会を絞り込むことも必要です。データの収集、経営者のヒアリングの例は、経営概要(収支、所得など)、生産・販売実績、反収、秀品率、経費率・所得率といった項目で、あれもこれもにならないように、項目を絞ることがポイントです。

部会組織内の個々の経営の実態、経営の分布などから課題を明らかにし、メンバーに提示し、個々の経営のポジションを理解してもらい、優先的に取り組むべき課題に気づいてもらいます。

課題ごとのグループ研究を活動の中心に据えることで、必要度の高い活動ができるようになり、活動の活性化を生み出します。JAの上から方針・指導ではなく、メンバー自身の課題解決に向かう条件づくりが大切です。

個別経営の課題解決型の活動強化へ

次のポイントは、個別経営の課題解決の方法です。ここでは、2:6:2の論理を活用します。組織のなかには、2割の先頭集団と、6割の平均的集団、2割の課題山積型集団の3つが存在するという仮説をもとにします。3つのグループをもとに、それぞれの経営内容の違い、改善策などを相互に確認します。このプロセスで、部会目標の再設定を行い、底上げを行うのです。

1年では大きな結果は出ませんが、数年で個別経営は変化します。2割の先頭集団には、もっと高次の目標をめざして経営課題の解決を図る個別対応型サポートを行います。その結果、部会全体の事業ボリュームは確実に増加します。

さらに、この先頭集団のもつ技術力や具体的な工夫を、部会組織内部に普遍化させ、組織内の技術・経営レベルの平準化、底上げ、経営力の向上策などの課題に絞り込んだ活動を行います。こうした活動の継続で、6割の平均的集団のなかから先頭集団に近い経営が生まれてきます。

部会組織の活動も、これまで以上にデータに注目し、成果のための経営全般の情報交流が活発になり、個別の経営課題の解決、改善が前進していきます。

JAの経営指導や部会運営では、部会メンバーの経営に入り込み、経営者の問題意識を変革し、経営課題の解決に結びつく提案につながる活動にしていくかです。営農指導員の活動も絞られ、質の高いアドバイスが可能になります。

◇   ◇

 本コラムに関連して、ご質問、ご確認などがございましたら、お問い合わせフォーム(https://www.jacom.or.jp/contact/)よりご連絡ください。コラム内又はメールでお答えします。

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