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米国次期農業法での気候変動関連対策の行方に注目【ワシントン発 いまアメリカでは・伊澤岳】2022年5月27日

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代表的な温室効果ガスのひとつである二酸化炭素について、2019年の世界の総排出量は約335億トンとされている。国別にみると、中国が総排出量の29.5%を占めトップ、次いで米国が14.1%を占めるという状況となっている。日本は3.2%となっており、世界で5番目に排出量の多い国となっている。

一人当たりの二酸化炭素排出量 日本もワーストに近く

国ごとに人口が大きく異なるなか、一人当たりの排出量を見てみると、米国が14.5トンでトップ、ロシアおよび韓国が11.3トンと続き、日本は8.4トンとなっている。国別の排出量トップである中国は、一人当たりの数値を見てみると7.1トンとなっている。

トランプ前大統領によるパリ協定(地球温暖化対策の世界的枠組み)からの離脱に象徴されるように、米国の一人当たり排出量が大きいのはある意味イメージ通りかもしれないが、改めて数字を眺めてみると、日本も世界のなかではワーストに近い数字であることに気づく。

バイデン政権は気候変動への対応重視

バイデン大統領は大統領就任直後に「パリ協定」への復帰を決定したり、気候サミットを開催するなど、現政権・民主党は、かねてから気候変動や環境対策への対応を重視した政権運営を行ってきている。

こうした気候変動や環境対策を重視する姿勢は、米国が排出する温室効果ガスの約10%を占めると言われる農業分野でも顕著であり、今年2月には、米国農務省は「気候変動配慮型農産物パートナーシッププログラム」と題した政策が発表されている。

この政策は、単に気候変動に配慮した農法の採用(による農業生産)を支援するのではなく、その農法によって実際に削減された温室効果ガスの排出量や、増加した炭素固定量を調査し、定量化する取り組みも合わせて行うことで支援を行うこととしている。また、こうした気候変動に配慮して生産された農畜産物について、市場でどの程度"気候変動配慮型の農畜産物であること"に対して付加価値が認められたのか、という点も調査することとされている。

従来行われてきた「環境にやさしい取り組み」が実際に現場でどの程度効果を上げ、市場ではどのように評価されているのか、きちんと検証しようという意欲的な取り組みである。

農業由来の温室化ガス排出量は減少と報告

米国最大の農業団体アメリカファームビューローは、今年4月に米国環境保護庁が公表したレポートを紹介する形で、2020年の米国の温室効果ガス排出量は前年比で約10%減少し、1990年以降で最低の排出量になったと報告している。もちろんこの排出量減少の主要因は、新型コロナウイルスのパンデミックにより人の移動や経済活動が制限された結果ということになる。

一方、農業分野については、パンデミック下でも食料生産が継続して行われたわけであるが、温室化ガス排出量は4.5%の減少となっている。

農業分野からの総排出量は直近30年間で6%増加しているものの、同期間の単位生産量当たりの排出量を比較すると、例えば豚肉の排出量は21%減少、牛乳の排出量は26%減少となるなど、農業分野では確実に生産性の向上が図られてきたとされている。

米国では直近30年間で人口が33%(約8000万人)増加していることや、農地が約1200万ha減少していることをふまえれば、食料を安定的に供給するために、実際に相当な生産性の向上が行われてきたとみてよいだろう。

次期農業法でも気候変動や環境対策に議員が関心

議会では、次期5か年の農業政策の基本となる農業法の制定に向けた議論がまさに今行われているところであるが、現時点での議会多数派である民主党は、やはり気候変動対策の拡充を次期農業法における優先事項として掲げ協議を進めている。これに対し、共和党は気候変動関連対策の予算拡充に難色を示していると言われている。

11月に行われる中間選挙の結果次第では、議会の多数派が変わり、次期農業法の議論にも影響が出る可能性がある。世界的に食料問題が注目を集める中、農業大国である米国が、気候変動や食料の安定供給に向けてどのような方向性を打ち出すか注目したい。

伊澤 岳(JA全中農政部農政課<在ワシントンD.C.>)

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