最優先で「支店の変革・強化」に取り組もう!~まずは来店客データ共有から~【JAまるごと相談室・伊藤喜代次】2022年5月31日
「支店力」を高めることを最優先で
A・ライフ・デザイン研究所
代表 伊藤喜代次
地域銀行の21年度決算では、多くの経営者が「コロナ特需」でホッと胸をなで下ろしているのかと思いきや、金融本業で赤字の地域銀行は、全体の4分の1。今後、ロシアのウクライナ侵攻の影響で、不透明感は増すばかり。JAの経営者のなかにも、先行きの不透明さ、経営の厳しさに頭を痛めている人は少なくないでしょう。
JAの経営者が先行きを見通す時に、確かな数値で安心感を得られるのは、「支店の事業・経営の動き」でしょう。支店や事業所が、組合員や地域のみなさんから支持されて、利用され、実績をあげ、収益を確保することで、経営の主要な柱が確認できるからです。
JAは、長年にわたって事業のボリュームがどれだけ増えたかばかりに目を向ける傾向がありました。支店の年間目標もそこにありましたから、支店長も量的な拡大第一で仕事をしてきました。しかし、支店は「店」ですから、どんな利用者を、どのくらい抱えているかが重要です。毎日の来店客数、来店者の年齢層をはじめ、新規取引先数、1件あたりの事業利用度、総合口座のセット率(入金、出金、振替)など。主要な支店の目標値は事業の残高ではなくなりました。
合併によって、JAが大きくなればなるほど、最大の財産である組合員や地域社会との関係や接点の役割を担い、JA全体の収益の6割近くを稼ぎ出している支店の存在を強くしていくことが重要です。それは、農業の振興や農家の経営力を確実に高めることと合わせて、もっとも重要な要素であると思っています。
来客数と取引内容を把握しよう!
コンサルで支店訪問をします。その際、職員に「この支店の来店客数は平均で何人ですか?多い日は何人来られますか?」と聞きます。きちんと答えられる職員は、全くいません。来店客数は、支店での仕事の目標ではないのです。なので、支店長もその数字は当然のごとく知りません。
来店客数がわからないので、次の質問にも答えられないでしょう。60歳以上の割合はどのくらい? どんな窓口取引が多い? 共済窓口の利用者は何人? 40歳代以下の利用者の割合は? 来店者の多い時間帯は何時台? もっとも来店者が少ない曜日は? ATMの1日平均の利用件数は?
そもそも支店の来店客数調査をしたことがないのです。支店の職場での話し合いでも、話題にあがらないのです。だから、職員も支店長も、来客に関する数値がわからないのです。もっとも言えば、組合員やお客さんに注意を向ける、ということが、重視されていない、ということです。地域銀行と違い、差別化がされず、金融窓口の業務をこなしているだけ、という毎日なのではないでしょうか。
取引データから来店客数を計算することは可能ですが、支店の職員がどんな支店にしたいか、どんな組合員やお客さんに来て欲しいか、将来の支店を考えれば若年・中年層の利用者をもっと増やしたい、という前向きな気持ちで働いていないのではないか、と思ってしまいます。
私は、支店の窓口の職員に「来店者調査」を担当してもらいます。最低限の項目を簡単に調査できる調査票を渡して、記入し、集計もお願いします。「うちの支店の来店客はこれしかいない!」「こんなに高齢者が多い!」と驚きます。ここから、支店をどうするか、組合員や地域のみなさんに利用される支店にするには何が必要か、をみんなで考えることになるのです。
支店は、一つひとつ違います。支店の課題も違います。何が課題かを考え、職員がアイデアを出し合い、店づくりに取り組むことです。
※本コラムの読者で、ご希望であれば、私がコンサルで使用している「来店客数調査票」をお送りします。ご連絡ください。
◇ ◇
本コラムに関連して、ご質問、ご確認などがございましたら、お問い合わせフォーム(https://www.jacom.or.jp/contact/)よりご連絡ください。コラム内又はメールでお答えします。
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(139)-改正食料・農業・農村基本法(25)-2025年4月26日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(56)【防除学習帖】第295回2025年4月26日
-
農薬の正しい使い方(29)【今さら聞けない営農情報】第295回2025年4月26日
-
1人当たり精米消費、3月は微減 家庭内消費堅調も「中食」減少 米穀機構2025年4月25日
-
【JA人事】JAサロマ(北海道)櫛部文治組合長を再任(4月18日)2025年4月25日
-
静岡県菊川市でビオトープ「クミカ レフュジア菊川」の落成式開く 里山再生で希少動植物の"待避地"へ クミアイ化学工業2025年4月25日
-
25年産コシヒカリ 概算金で最低保証「2.2万円」 JA福井県2025年4月25日
-
(432)認証制度のとらえ方【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年4月25日
-
【'25新組合長に聞く】JA新ひたち野(茨城) 矢口博之氏(4/19就任) 「小美玉の恵み」ブランドに2025年4月25日
-
水稲栽培で鶏ふん堆肥を有効活用 4年前を迎えた広島大学との共同研究 JA全農ひろしま2025年4月25日
-
長野県産食材にこだわった焼肉店「和牛焼肉信州そだち」新規オープン JA全農2025年4月25日
-
【JA人事】JA中札内村(北海道)島次良己組合長を再任(4月10日)2025年4月25日
-
【JA人事】JA摩周湖(北海道)川口覚組合長を再任(4月24日)2025年4月25日
-
第41回「JA共済マルシェ」を開催 全国各地の旬の農産物・加工品が大集合、「農福連携」応援も JA共済連2025年4月25日
-
【JA人事】JAようてい(北海道)金子辰四郎組合長を新任(4月11日)2025年4月25日
-
宇城市の子どもたちへ地元農産物を贈呈 JA熊本うき園芸部会が学校給食に提供2025年4月25日
-
静岡の茶産業拡大へ 抹茶栽培農地における営農型太陽光発電所を共同開発 JA三井リース2025年4月25日
-
静岡・三島で町ぐるみの「きのこマルシェ」長谷川きのこ園で開催 JAふじ伊豆2025年4月25日
-
システム障害が暫定復旧 農林中金2025年4月25日
-
神奈川県のスタートアップAgnaviへ出資 AgVenture Lab2025年4月25日