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北海道・日本海側の防風林【酒井惇一・昔の農村・今の世の中】第201回2022年6月16日

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防風林と言えば北海道の畑作地帯にもあった。
1999年、網走に赴任した(注)ばかりの4月、物干し台を買って三階のベランダにおいた。翌朝、カラッと晴れた日だったので、家内はそこに洗濯物を干した。まわりを眺めてみた。外に洗濯物を干している家がほとんどない。どうしてなのかわからないが、ともかく干した。1時間くらいたってベランダに行ってみた。何と洗濯物がガチガチに凍っている。慌てて洗濯物を外した。日光は照ってもまだ気温は低いのである。後で気が付いた、干しているのはそういうことを知らない転勤族だけだったと。

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連休ころになると急に暖かくなる。そこでまた家内は洗濯物を干すようになった。ところがやはり干している家は少ない。そのうちわかった。4月末ころから強風が吹く日が多くなり、その風が畑の土を運んできて洗濯物を黒くするときがあるのである。

ある日突然真っ黒い風が吹き、目の前が見えなくなったのには驚いた。地吹雪で目の前が見えなくなるのは知っていたが、土煙でそうなるのは初めて体験した。

畑の土が飛ぶ、これは養分のある土壌が流亡するということだから、当然農家は困る。しかも春先の耕起で表面の土が粒状になっているし、作物も育っていないので、ますます飛びやすい。ビートの種をまいたら土と一緒に全部強風でもっていかれてまったく芽が出ず、収穫皆無になるなどということも起きる。

こうした風害を防ぐために畑のまわりに防風林(防雪を兼ねる場合もある)をおく。並木のような防風林もあれば、10mくらいの幅の防風林が何百メートルも続く場合もあり(ここには山菜や山ブドウなどがよく生える)、急傾斜地はもちろん林となる。また堆厩肥を投入して土の飛ぶのを抑えるとか、ビートの場合などは直播(種を直接畑に撒く)を移植栽培に切り替え、耕起の時期を遅らせるなどして強風による被害を軽減する努力をしている。

6月から秋にかけて畑は緑で覆われる。それで土ぼこりのたつことはほとんどなくなる。しかも網走には梅雨がない。日照時間も都府県から比べると長い。その日光を旺盛に吸収して緑に変わった景色を眺めながら、家内は洗濯物を干す。あっというまに乾いてしまう。

網走にいるときよく家内は自動車を洗っていた。私は運転できないのでこれは家内の車、乗せてもらうだけなので私も時々は手伝った。

仙台に帰ったら、都会の汚れた空気で、北海道から比べると格段に数の多い車による排気ガスで汚れて、さらに洗車が必要になるだろう、こう家内は考えていた。ところが、不思議なことにそんなに汚れない。乗る回数、距離が網走にいるときよりも減ったからかもしれないが、それにしてもどうしてなのだろう、こう家内は言う。

網走では融雪剤や雪解けのときの汚れが加わるからだろう、最初はそう考えた。しかし、雪のない季節でも仙台の汚れが少ない。あるときふと気が付いた。そうだ、これは稲作地帯と畑作地帯の違いからくるものではないかと。

仙台も関東並みにからっ風が吹く。これは冷たい。肌身に沁みる。網走から入試の監督などで仙台に出張で来る農大の同僚教職員は網走よりも寒いという。山形から来る人もそういう。ともに気温が仙台より低いにもかかわらずだ。これは雪の有無、つまり湿度の差からくるものだろう。

春先の強風もひどい。これにフェーン現象による高温・空気の乾燥などが加わって強風害や野火が発生することもある。

それでも土ぼこりは関東や網走ほど立たない。田んぼがほとんどだからだ。田んぼの土は粒子が強く結びついており、湿ってもいることから風が吹いても飛ばないのである。夏から秋にかけては水があるし、稲が大きくなっているのでもちろん土は飛ばない。畑だといくら作物が成長していても風でその土が飛ぶことがあるが、田んぼではそんなことはない。

だから宮城県で防風林・平地林が見られないのではなかろうか。

また、水田地帯だから仙台での自動車の汚れが少ないのではなかろうか。仙台では屋外に駐車しているのに汚れず、網走では屋内なのに汚れたということは、それを証明しているのではないか。

しかし屋敷林はあった。仙台平野での農家調査で「いぐね」という言葉が出てくるときがある。最初は何だかわからなかったが、屋敷林のことだった。そういわれてみれば、農家の屋敷裏の方に何本か大きな木が植えてあり、藪になっているところもある。しかもそれは西側・北側にある。それでわかった。さっき言った冬のからっ風、つまり北西季節風から家屋敷をまもるための屋敷林だったのである。

水田地帯だから耕地をまもる防風林までは要らないが、とくに仙台平野は散居村、農家個々にいぐねをつくって家屋敷を風からまもる必要性があったのだろう。そしてその落ち葉や枯れ枝、幹を肥料や燃料、建材としても利用した。

日本海沿岸の山形県の酒田では雪は下から降ると言われている。西からの季節風にあおられた雪が横殴りに吹き付けるのである。

海岸に出てみると、夏の鏡のような海とはその形相をまったく異にした茶色っぽい灰色の海、荒々しく高い波が絶えず打ち寄せ、それで水平線は平らではなく、大きな波ででこぼこになっている。

この風で打ち上げられた砂がたまって海岸に砂丘が形成される。この砂が季節風で舞い飛ぶ。これを防ぐためにつくられた松林が砂丘を延々と覆う。

この防砂林で砂は防げるが、風は平野を吹き抜ける。しかし、水田地帯である上に雪があるので土が飛んだりはしない。それでも仙台のようないぐねがあっていいはずである。ところがそれが見られない。散居村ではないからだ。20~30戸が密集して集落を形成している密居村なので、お互いに身を寄せ合うことで風を防ぐのである。また雪囲いをするが、これでも風を防ぐ。もちろん、神社や寺を西側において木々を植えて防風林にしたり、北西の側に位置する家ではその裏に木々を植えたりするが、仙台平野のような屋敷林は見られない。

日本海側と太平洋側、こんな違いがあるようだ。

(注)1999年に東北大を定年退職、その後北海道網走市にある東京農大生物産業学部に7年間勤務した。

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