NATOの焦り【森島 賢・正義派の農政論】2022年7月4日
NATO(北大西洋条約機構)が焦っている。ウクライナ紛争が行きづまっているからである。ロシアを口汚く罵っているし、中国を敵に回そうとしている。
だが、それは行き過ぎではないか。NATOは軍事同盟である。政治家や評論家がそのように言うのならまだしも、NATO軍は政治の分野にまで入り込んでいるのではないか。暴走してはいるのではないか。はたして、文民統制が行き届いているのか。
さて、NATO軍の行きづまりの原因であるが、それは、NATOの東方拡大、世界制覇という戦略目的の不正義にある。この不正義は隠せない。だから、月日は味方をしない。月日が経つにつれて不正義が広く暴露され、正義が広まり、NATOは、ますます不利になる。だから焦る。
上の図は、世界のGDPの中に占める、米欧などNATO加盟30か国のGDPと、中国やロシアなどBRICs(新興国)5か国のGDPの割合の、今後の推移を予測したものである。
2016年は、NATOのほうが、やや多かった。だが、2030年にはBRICsのほうが多くなる。2050年になると、BRICsのほうが、はるかに多くなる、という予測である。
ここから読み取れることは、NATO諸国の衰退とBRICs諸国の興隆である。
◇
軍事力の源泉は、経済力にある。
NATOの焦りは、ここにある。経済力と、それが源泉になる軍事力の優劣が逆転するまでに、あと数年しかない。米欧の天下は、あと数年で終わりを告げるだろう。そして、国際秩序は、新しく再編されるだろう。
歴史を長期的に見たとき、NATOは、その舞台から放逐されようとしている。そのことを、ひしひしと感じているに違いない。ウクライナ紛争は、最後の悪あがきになるだろう。
その後に、どんな世界が待っているか。
◇
NATOの、したがって、米欧の天下の終焉は、米欧の文化の終焉である。そして、米欧型の自由と民主主義は、次の型の自由と民主主義に交代する。
それは、どんな型の自由と民主主義になるか。
これまでの、米欧型の自由は、格差と分断を結果した。その基礎に、生産段階における搾取の自由があった。
また、これまでの、米欧型の民主主義は、国民全体のための民主主義ではなかった。自由な搾取によって経済を牛耳る大資本家のための民主主義だった。
次の型の自由と民主主義は、これらを否定するものになるだろう。
◇
それは、社会構造の土台になる生産段階における、搾取のない自由と民主主義である。
そしてそれは、それぞれの国の前史になる、さまざまな共同体の歴史の錬磨のなかで育て上げた、さまざまな型になるだろう。
そして、そのそれぞれを、各国が互いに口汚く罵倒しあうのではなく、地球共同体の一員として、互いに尊重しあい、友情をもって、慎み深く批判しあうものになるだろう。
日本は、いまの、搾取を基礎におく米欧型の自由と民主主義を否定して、どんな型の自由と民主主義にするか。日本には、身近に搾取とは無縁の農協の、良い見本がある。
(2022.07.04)
(前回 コロナ対策の協同組合主義的な改革)
(前々回 コロナ対策は中国に学べ)
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