シンとんぼ(2)CO2ゼロエミッション化はヒートポンプ拡大で2022年7月23日
「みどりの食料システム戦略」KPI2030年目標(農林水産省)によると、最初のKPIは、①農林水産業のCO2ゼロエミッション化(2050)である。これは、2030年までに、基準年(2013年)の農林水産業における燃料燃焼によるCO2排出量1,659万トンの10.6%にあたる175万トンを削減するというものである。175万トンというのは、2021年10月に閣議決定された地球温暖化対策計画で削減目標値である。その達成のために、施設園芸や農業機械、漁船の省エネルギー対策における既にある技術を拡大させ、技術自体もより効率の良いものに進化させるとしている。
では、農水省があげている既存の技術というのは、具体的に3つ挙げられているのでその導入効果を検証してみたい。
まず施設園芸ではヒートポンプの導入である。ヒートポンプというのは、少ない電力で冷媒の圧力を上げ下げし、その際に生じる温度差を活用して熱交換する冷暖房技術である。つまり、燃料を燃焼させることなく施設の加温ができるので、その分CO2を削減できるというものだ。ただ、ヒートポンプを動かす電気を作るのには、火力発電の電気も使用するので、ヒートポンプの導入によるCO2削減率は50%前後と大きく期待できる技術である。導入が進めばあっという間に目標達成できそうだが、ヒートポンプの導入には10aあたり約100万円弱程度は必要となるので、導入効果が得られる作物は、いちごなどの高単価なものに限られるんじゃないかな。また、現在の施設設置面積は約4万ha程度であるが、そのうちヒートポンプを導入して収支が合う作物は限られると考えられるので、費用が壁となって導入が進まない可能性がある。本気でヒートポンプで最大限のCO2削減効果を発揮させるためには、今の補助率1/3補助ではなく、もっと大胆な補助が必要なんじゃないかな?
次に、農業機械である。これは、自動操舵システムを利用したトラクターや田植機などを使用することで、効率の良い作業を行うことができ、その分燃料消費が減らせるというわけだが、田んぼ畑の形状によって効率は変わるので、すべての田畑で減らせるわけではないだろう。何より、導入には多額の費用が必要なので、導入できる農家は限られ、結果として導入によるCO2削減効果は低くなるんじゃないのかな。機械の導入による削減効果は、従来と変わらぬ価格で電動農機や水素化農機が供給できるようになるまで待つしかなさそうだ。
最後は漁船にLED集魚灯等の導入を促すというものだ。これも集魚灯を使用するのは、イカ釣りなどの限られた漁であり、すべての漁で使うものではないし、LED集魚灯を点灯させるための電力は、漁船の燃料消費によって得られるものなので、LED導入によるCO2削減効果はそう大きくなさそうだ。漁船も電化や水素化が進まないと大きな削減効果は出てこないだろうな。
というわけで、当面は農機や漁船の電化・水素化が進むのを期待しつつ、できるだけ多くのヒートポンプを普及させるのが2030年KPI達成の近道のようだ。いずれにしろ、ヒートポンプや自動操舵農機、LED集魚灯1台あたりのCO2削減効果を明確に示してながら、それに基づいて、KPI達成のためにどの技術をどの位普及させる必要があるという具体的な目標を示す必要があると思うがどうだろう?
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