コロナの敗北宣言【森島 賢・正義派の農政論】2022年8月1日
コロナの第7波が襲っている。前の第6波よりも激しく猛威を振るっている。だが政府は、行動規制や営業規制を行わない。補償なしの、タダで自粛せよ、という。
これは棄民政策であり、コロナ対策の実質的な敗北宣言である。
それに加えて、医療が逼迫しているから、受診を自粛せよ、という。これは、先人たち、ことに農村の先人たちが打ち立てた、輝かしい国民皆保健制度の破壊であり、反国民的な挑戦である。
医療が逼迫しているのなら、国民に受診の自粛を求めるのではなく、国民の要求に応えて医療を充実し、医療体制を民主的に再編し、整備すべきである。
上の図は、コロナの隔離、治療状態を、第6波が始まった年初から示したものである。隔離され、不充分ではあるが治療を受けている入院者などの数と、自宅などに放置されている感染者の数の推移を示している。図は、この2つの数の目盛りが1桁違うことに注意されたい。
最近の数をみると、入院などで隔離されている感染者は5.5万人、自宅などにいて隔離されていない感染者は134.8万人いる。つまり、96.1%の感染者が、自宅などに放置されている。
この他に、政府からは認定されていない有症状・無症状の感染者が、多数いる。その人数は、どれ程か。それを推定する資料はない。政府は、知ろうともしない。政府にとって不都合だからである。
◇
この図をみて分かることは、多くの感染者が自宅療養という名のもとで、自宅に蟄居させられ、治療を受けられないでいることである。
この人たちは、重篤化の不安に苛まれている。それだけではない。市中で、大きな感染源になって、感染を拡大している。
◇
もう一つ重大なことは、この図に隠されている事実である。
これは、厚労省が公表したもので、いわば公認の数字である。だが、実際には、これ以外の感染者が大勢いる。
このことは、最近の陽性率の異常な大きさから分かる。先週の1週間の陽性率は、67%だった。つまり、検査した100人のうち67人が陽性だった。これは、検査数の決定的な少なさを示している。そしてこれは、検査体制の絶望的な脆弱さを示している。
◇
この陽性率の異常さを、仮の数値例で示そう。
検査した人の全員が陽性になった、と仮定するとどうなるか。
そうすると、陽性者は、いまの67人から100人になる。つまり、1.5倍になるだけである。100人検査して101人以上が陽性になることは、あり得ない。だから、検査数を増やさないかぎり1.5倍以上になることは、あり得ない。だが、政府は増やそうとしない。
つまり、これは厚労省公認の感染者数であって、実際の感染者数は、これをはるかに超えているだろう。検査数が、あまりにも少ないからである。
これまでの政府のコロナ対策は、このように、実態を無視したものだった。その結果、敗北した。
◇
検査体制もダメ、隔離体制もダメ、治療体制もダメ。つまり、感染症対策の基本的な体制の全てが腐って、異臭を放っている。これでは、絶望するしかない。敗北しかない。
だが、絶望してはいられない。どうすればいいか。
検査、隔離、治療の、いまの体制を、いったん解体し、腐朽した異臭物は葬るしかない。そうして、叡智を集め、新しく構成するしかない。
その上で、ワクチンの開発、治療薬の開発に全力を注げ。いまからでは遅い、などと言ってはいられない。
やがて、第7波を超える大きな第8波が襲って来るかもしれない。それに対する備えが、いまの日本にはない。コロナの蹂躙に身を任せて、耐え忍ぶしかないのである。
(2022.08.01)
(前回 米欧型の自由の崩壊)
(前々回 コロナ対策の秘かな大転換)
(「正義派の農政論」に対するご意見・ご感想をお寄せください。コチラのお問い合わせフォームより、お願いいたします。)
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(123) -改正食料・農業・農村基本法(9)-2024年12月21日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践 (40) 【防除学習帖】第279回2024年12月21日
-
農薬の正しい使い方(13)【今さら聞けない営農情報】第279回2024年12月21日
-
【2024年を振り返る】揺れた国の基 食と農を憂う(2)あってはならぬ 米騒動 JA松本ハイランド組合長 田中均氏2024年12月20日
-
【2025年本紙新年号】石破総理インタビュー 元日に掲載 「どうする? この国の進路」2024年12月20日
-
24年産米 11月相対取引価格 60kg2万3961円 前年同月比+57%2024年12月20日
-
鳥インフルエンザ 鹿児島県で今シーズン国内15例目2024年12月20日
-
【浜矩子が斬る! 日本経済】「稼ぐ力」の本当の意味 「もうける」は後の方2024年12月20日
-
(415)年齢差の認識【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2024年12月20日
-
11月の消費者物価指数 生鮮食品の高騰続く2024年12月20日
-
鳥インフル 英サフォーク州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入を一時停止 農水省2024年12月20日
-
カレーパン販売個数でギネス世界記録に挑戦 協同組合ネット北海道2024年12月20日
-
【農協時論】農協の責務―組合員の声拾う事業運営をぜひ 元JA富里市常務理事 仲野隆三氏2024年12月20日
-
農林中金がバローホールディングスとポジティブ・インパクト・ファイナンスの契約締結2024年12月20日
-
「全農みんなの子ども料理教室」目黒区で開催 JA全農2024年12月20日
-
国際協同組合年目前 生協コラボInstagramキャンペーン開始 パルシステム神奈川2024年12月20日
-
「防災・災害に関する全国都道府県別意識調査2024」こくみん共済 coop〈全労済〉2024年12月20日
-
もったいないから生まれた「本鶏だし」発売から7か月で販売数2万8000パック突破 エスビー食品2024年12月20日
-
800m離れた場所の温度がわかる 中継機能搭載「ワイヤレス温度計」発売 シンワ測定2024年12月20日
-
「キユーピーパスタソース総選挙」1位は「あえるパスタソース たらこ」2024年12月20日