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コメ政策の大転換は待ったなし 輸出用米対策も急務【熊野孝文・米マーケット情報】2022年8月2日

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農水省が7月27日に開催した食糧部会で示したコメの需給基本指針を見て、つくづく思うのは「いつまでコメの市場をシュリンク(縮小)させる政策を続けるか」と言う事である。
“主食用”と称するコメの価格を上げるために3500億円もの莫大な税金をつぎ込んで転作を推進して供給量を絞り、価格上昇を目指し、その一方で需要はついに700万tを切る水準まで縮小するという見通しを示している。市場をシュリンクさせてコメの価格を上げることが正しい政策と言えるのか?この本質的問題を問い直さないと日本のコメ産業は取り返しがつかない状況に追い込まれるのではないか。

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先週、東京ビッグサイトで開催されたお米・穀物産業展で、コメの新しい需要を開拓できる可能性がある商品が複数展示・紹介された。「ミライ・オニギリ」と言う商品は、アスリート向けにコメにアミノ酸を加えた商品で、筋肉作りに最適なアミノ酸値にしたもので、一般社団法人食アスリート協会が監修している。この他、コメを主原料にした植物性チーズも紹介され、展示ブースでは試食する人の列が出来ていた。これらの商品は農水省の判断では主食用ではないとのことなので、これらの食品がいくら売れようともコメの需要には反映されない。しかも冷凍米飯も主食用ではないと判断されているので、冷凍米飯市場がいくら拡大しようともコメの需要とはみなされない。つまり農水省のいうコメの需要とは炊飯して食べるコメのことを指しているのである。こうした需給見通しにいったいどういう意味があるのか?

ミライ・オニギリを紹介した会社は、コメを原料としたストローも商品化している。ストローは主食用ではないのでコメの需要にはカウントされない。コメを原料にしたバイオプラスティックを製造している会社は将来的には50万tという需要を見込んでいるが、これも主食用ではないのでコメの需要にはカウントされない。極めつけは輸出用米である。輸出用は国外に出すので、コメの需要とはカウントされない。穀物の需給見通しを作成するのに輸出を需要とカウントしないのは日本だけである。

カウントしないだけなら良いのだが、輸出用米は新市場開拓米の括りの中に入っており、助成金の支給が受けられるので、今、困った問題が発生している。

それは輸出産地が新市場開拓米の括りの中で輸出用米として農水省の認可を受けるには6月末までに営農計画書を提出しなければならない。産地側としては昨年末の早い段階に4年産米の輸出用米の生産量を決める。ところがその後、ウクライナ紛争による穀物の高騰や中短粒種の一大産地であるカリフォルニアが旱魃により生産量が大幅に減少、輸出余力が乏しくなったことからこれまで日本米を輸入したことの無い国から日本の輸出業者にオーダーが入り始めたのだ。しかし、産地側はすでに6月末に輸出用米の認可申請を済ませており、新規の需要には応じられない事態になっているのだ。

食糧部会と同じ日に開催された自民党の米の需要拡大・創出検討プロジェクトチームが配布した資料の中に「2030年を目途に約50万tの市場拡大を目指す」とし①低価格米等への供給8万t②小麦粉の代替24万t③輸出8万~16万tと記されている。

この資料に「これまでのコメ政策については、真にマーケットインではなく、米粉の利用促進などについても、プロダクトアウトの発想で取り組んで来た商品は失敗を重ねてきている」と記している。そこまでわかっているのならなぜコメ政策を大転換しないのか?

研究機関の将来予想では、日本の稲作農家は1995年に201万戸いたが、2020年には65万戸、2025年には37万戸、2030年には10万7000戸になると予測している。また農研機構の予測では2025年には、現在の稲作面積を維持するためには1戸平均で東北で43ha、関東38ha、北陸37ha、九州に至っては69haの面積を耕作しないとならないというデータを出している。

与党がコメの需要拡大に取り組む姿勢を見せているのは大いに結構だが、需要をカバーできるだけの生産余力が今後とも維持できるのかと言う大問題がすぐそこまで来ている。少なくとも国が最大の政策目標に掲げている日本産農産物・食品の輸出拡大を推進するというのならコメの輸出の制度的な足かせを見直し、収穫前の事前審査で認可するのではなく、輸出した実績に応じて新市場開拓米として認可すればよい。そうすることによって産地のみならず輸出業者も縛りが無くなった分、輸出にダイナミックに取り組めるようになり、飛躍的に輸出量が増えるだろう。

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