世論調査が伝える民意【小松泰信・地方の眼力】2022年8月3日
毎日新聞(7月16日付)の「首相日々」によれば、15日の午後6時31分から、東京・日比谷公園のフランス料理店「日比谷パレス」。山田孝男毎日新聞特別編集委員、小田尚読売新聞東京本社調査研究本部客員研究員、芹川洋一日本経済新聞社論説フェロー、島田敏男NHK放送文化研究所研究主幹、粕谷賢之日本テレビ取締役常務執行役員、政治ジャーナリストの田崎史郎氏と会食。
昨夜、アベちゃんと飲んできた
拙稿「国民の総意は地方紙にこそあらわれる」も加えて編まれた『地方紙の眼力』(農山漁村文化協会、2017年)を謹呈した方からいただいた礼状(2017年5月31日消印)に、興味深いことが記されていた。
-(前文略)「地方紙の眼力」有難うございました。まったくのところ、日本の大手マスコミは、国内向けにも海外にも大誤報を、発信し続けているのかもしれません。批判がなく、ただ単なる発表ジャーナリズムになっている。だから「読売新聞を熟読せよ」などという大宰相が登場するのだと思います。
毎日新聞に山田孝男なるエライさんがいて、2年前ぐらいだったか、私の取材に来て、冒頭「昨夜、アベちゃんと飲んできた」というので「アベちゃんって誰ですか?」と聞いたら総理でした。「どこで?」「椿山荘で」「総理の会費はいくら」「ま、2万円ぐらい」「誰が払うの」「もちろん、こっちですよ」
第二次安倍内閣が誕生してから、首相がマスコミの社長と椿山荘で毎晩、会食をしたのだそうです。山田孝男さんは毎日新聞の社長のお伴で同席したということでした。
その後、何かで見たところによると、安倍ちゃんのお仲間の中に山田孝男の名がありました。
首都圏の新聞と地方紙の一番の違いは、そういうことではないでしょうか。首相の度々の外遊に同行すれば、批判的な記事は書けないでしょうし、目線が首相と同じとはいわないまでも、大衆、読者からは離れていく。その典型が農政で、安倍農政を批判しているマスコミはないと私は思っています。赤旗は読んでいませんので知りませんが。(以下略)-
岸田首相も安倍氏の教えを踏襲し、大手マスコミを食い散らかそうとしている。お腹を痛めぬよう、整腸戦略をお忘れなく。
国民の過半数が反対する国葬
『農ある世界と地方の眼力5』を出版するために、2021年度分の当コラムを再読している。やはり、安倍晋三元首相のしてきたことは、農政だけを取り上げても、到底国葬に値するものではないことを確認した。死に方がいかなるものであろうと、それとこれとは、まったく別の話。ましてそれ以外にも未解明案件多数で、この国の「民主主義」を、これでもか、これでもかと蹂躙した方。「国葬」を提案する連中の気が知れない。未亡人はじめ遺族は、「そ~っとしといて」と、叫び出したいはず。常識があればの話だが。
東京新聞(8月2日付)は、共同通信社が7月30、31両日に実施した全国電話世論調査(対象有権者2,386人、回答者1,050人)の詳報を伝えている。(以下、強調文字は小松)
国葬に関する回答結果の概要は次の2項目。
(1) 安倍氏の国葬(全額国費負担)については、「賛成」17.9%、「どちらかといえば賛成」27.2%、「どちらかといえば反対」23.5%、「反対」29.8%。大別すれば、「賛成」45.1%、「反対」53.3%。
(2) 国葬に関する国会審議については、「必要だ」61.9%、「必要だとは思わない」36.0%。
この数字を見れば、茂木自民党幹事長にも、「国民から国葬をすることについて、いかがなものかという指摘がある」ことがおわかりいただけるはず。まだ、認識できないとすれば、別の意味で問題ですね。
長崎新聞社が7月25、26両日に実施したアンケート調査結果(回答者1,040人)は、もっと刺激的だ。
4択で、「反対」63.8%、「どちらかというと反対」11.8%、「賛成」15.7%、「どちらかというと賛成」5.6%。大別すれば、「反対」75.6%、「賛成」21.3%。圧倒的に反対多数。
反対の理由としては、森友、加計両学園、桜を見る会の問題について「(安倍氏や政府の)虚偽答弁や不誠実な対応は国民に大きな政治不信を招いた」といった批判が多かった。憲法解釈変更による集団的自衛権行使の一部容認などは「国会で議論を尽くしたとは言えない。強引な政権運営は民主主義を軽んじた」との指摘も。安倍氏銃撃事件をきっかけに浮上した宗教団体「世界平和統一家庭連合(旧統一教会)」と政治家の関係への疑念もあったこと、等々が紹介されている。
この旧統一教会問題と政界の関わりについては、共同通信社の世論調査でも問われている。結果は、「実態解明の必要がある」80.6%、「実態解明の必要はない」16.8%。多くの国民が実態解明を求めていることが推察される。
「民主主義を断固として守り抜く」気があるなら、民意を尊重し、国葬は無し。岸田首相、どこか間違っていますか。
外交努力と憲法順守
ロシアのウクライナ侵攻を受けて安倍氏が、2月27日のフジテレビ番組で、北大西洋条約機構(NATO)加盟国の一部が採用している、米国の核兵器を自国領土内に配備して共同運用する「核共有」政策について日本でも議論すべきだとの考えを示し、多くの波紋を呼んだ。
東京新聞(8月2日付)は、日本世論調査会が実施した平和世論調査(6月14日から7月25日、対象有権者3,000人、有効回答者1,768人)の詳報も伝えている。
まず「核共有」の議論を進めることについては、「進めるべきだ」20%、「進めるべきではない」56%、「分からない」23%。
「非核三原則(核兵器を持たず、つくらず、持ち込ませず)」については、「堅持するべきだ」75%、「堅持する必要はない」24%。
「専守防衛(相手から攻撃を受けて初めて反撃する。自衛のための必要最小限の装備を保有)」については、「維持するべきだ」60%、「見直すべきだ」39%。
「敵基地攻撃能力(相手国のミサイル基地を攻撃する能力)」を持つことについては、「賛成」36%、「反対」33%、「分からない」30%。
これらから、国民の多くは好戦的ではないことが分かる。
そのことがより明確に出ているのが、「戦争回避のために最も重要なこと」についての回答である。
「平和に向け日本が外交に力を注ぐ」32%が最も多く、これに「戦争放棄を掲げた日本国憲法を順守する」24%が続いている。外交努力と憲法順守を合わせると56%。これが民意の核心部分。3番目に「軍備を大幅に増強し他国からの侵攻を防ぐ」15%が続いていることを念頭に置き、平和憲法の順守と国際平和に向けた外交努力に注力する。これが、唯一の戦争被爆国の使命である。
「地方の眼力」なめんなよ
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