【JCA週報】民度を超える国家はない(2009)(松岡公明)2022年8月8日
「JCA週報」は、日本協同組合連携機構(JCA)(会長 中家徹JA全中代表理事会長、副会長 土屋敏夫 日本生協連代表会長)が、各都道府県での協同組合間連携の事例や連携・SDGsの勉強会などの内容、そして協同組合研究誌「にじ」に掲載された内容紹介や抜粋などの情報を、協同組合について考える資料として発信するコーナーです。
今回は、「にじ」2009年冬号に、当時の常務理事であった松岡公明氏が執筆された「民度を超える国家はない」です。
民度を超える国家はない
財団法人協同組合経営研究所 松岡公明常務理事
金融危機から世界的な景気悪化のなか、雇用・失業問題、格差・貧困問題が顕在化。失業者数363万人、自殺者数も3万人超。新聞に載ったデータや「100年に一度の危機」というフレーズだけではすまされない現場実態がある。
これらの問題、考えるに「ブラックボックス」があまりに多い。塩野七生氏が紹介したカエサルの「自分の見たいものしか見えない」という人間本性の問題もあろう。刹那、刹那の移り気な社会ムードの問題もある。ダメダメ症候群のマスコミの増幅も手伝って、政治も経済も社会も、問題の解決へなかなか収敏していかない。大きな政府か小さな政府かというような極論と極論のぶつかり合いと二分法的思考の限界も見えてきた。
そして、世の中、自分の立場や経営さえよければいいという「タコツボ化」現象が蔓延している。いろんな犯罪事件にしても「わがまま」が横行。激安合戦のなかで、100円もしない食料品が並んでいるが、「こんな値段で生産者は再生産できるのだろうか」というまともな想像力さえ働かなくなっている。人間の尊厳も、労働の価値も、「孤立」「対立」「競争」のなかで埋没している。人の痛みや社会不安のリスクが共有化されていない。
病気の治療と同様、問題の「発生主義」では痛みもコストも大き過ぎる。「無関心は罪悪である」(マザー・テレサ)。ブラックボックスとタコツボをぶち壊して、「見える化」「気づく化」「考える化」「リスクの共有化」を推し進めていかないと暮らしも地域社会も取り返しのつかないことになる。社会的にも、予防医学的なリスクマネジメントを採り入れるべきだろう。「新たな協同の創造」すなわち協同の発見と協同の場づくりを通じて、協同組合がそうした役割を担えるのかどうか。
「民度を超える国家はない」。今日の危機的状況のなかで、協同組合セクターへの期待が高まっているが、協同組合陣営の「民度」も競争激化のなかで相当揺らいでいる。協同組合としての自覚と現場主義、環境変化に対応したイノベーション。学習活動による組合員・職員教育と徹底した地域密着型の実践で陣営の「民度」を高め、協同組含としての本質や価値を深めることが地域社会の「民度」の向上、健康な地域づくりを促すという好循環をつくりたい。
財団法人 協同組合経営研究所 協同組合経営研究誌「にじ」2009年冬号 No.628より
JCAは、「学ぶとつながるプラットフォーム」をめざしています。
重要な記事
最新の記事
-
飼料用米多収日本一 山口県のあぐりてらす阿知須 10a当たり863kg2025年3月3日
-
【特殊報】ナシ胴枯細菌病 県内で初めて発生を確認 島根県2025年3月3日
-
政府備蓄米売り渡し 入札 3月10日に実施 農水省2025年3月3日
-
新潟県の25年産米概算金「コシ2.3万円」 早期提示に歓迎の声 集荷競争、今年も激化か2025年3月3日
-
米の集荷数量 前年比23万t減に拡大 農水省2025年3月3日
-
米価高騰問題への視座【森島 賢・正義派の農政論】2025年3月3日
-
【次期家畜改良目標】低コスト、スマート農業重視 酪農は長命連産、肉牛は短期肥育2025年3月3日
-
【改正畜安法の現状と課題】需給対策拡大が焦点 問われる「国主導」2025年3月3日
-
あなたたちは強い〝武器〟を持っている JA全国青年大会での「青年の主張」「青年組織活動実績発表」講評 審査委員長・小松泰信さん2025年3月3日
-
JA農業経営コンサルタント 15人を認証 全中2025年3月3日
-
【人事異動】農林中央金庫(4月1日付)2025年3月3日
-
農業用バイオスティミュラント「エンビタ」とは 水稲育苗期にも効果 北興化学工業2025年3月3日
-
アミューズメント施設運営「ティスコ」株式を譲受 農林中金キャピタル2025年3月3日
-
「2025ローズポークおいしさまるごとキャンペーン」でプレゼント 茨城県銘柄豚振興会2025年3月3日
-
福岡ソフトバンクホークスとのオフィシャルスポンサー契約更新 デンカ2025年3月3日
-
ファーマーズ&キッズフェスタ2025 好天で多数の参加者 井関農機は農業機械体験2025年3月3日
-
【今川直人・農協の核心】産地化で役割が高まる農協の野菜取り扱い2025年3月3日
-
野菜がたっぷり食べられるカレー味「ケンミンカレー焼ビーフン」新発売2025年3月3日
-
第164回勉強会『海外市場での植物工場・施設園芸の展開』開催 植物工場研究会2025年3月3日
-
春の山梨の食材の魅力を伝えるマルシェ 5日から国分寺マルイで開催 雨風太陽2025年3月3日