シンとんぼ(5)化学農薬使用量リスク換算に使われるADIとは?2022年8月13日
みどりの食料システム戦略⑤化学農薬使用量(リスク換算)の50%削減(2050)というKPIのリスク換算の計算の仕方とはどういう仕組みなのだろう?
前回、50%削減のKPIはリスク換算値の合計を減らすことだと言ったが、実際のところどういう計算で行われているんだろうか?
リスク換算値は、農薬の有効成分ごとに定められているADIをもとに計算するそうだ。
ADIとは、Acceptable Daily Intake の略で一日摂取許容量というものだ。人がある物質(ここでは農薬の有効成分)を毎日摂取し続けた場合でも健康に悪影響が出ない量のこといい、mg/kg体重/日という単位で表される。例えば、人が健康に生きていくために許容される塩の摂取量は1日あたり5g(WHO基準)だが、この数値から日本人の平均的な体重を50kgとしてADIを計算すると5g=5000mg÷50kg=100mg/kg体重/日となり、この量なら毎日摂り続けても健康に影響が出ないということだ。ただ、現代の日本人の1日あたり塩分摂取量は12gだそうで、これは体重50kgの日本人が体重1kgあたり240mg摂取していることになりWHO基準の2.4倍にのぼる。日本人の健康を守るためには、農薬の使用量を半減するよりも塩の摂取量を半減させることの方が効果ありそうだよね。
おっと横道に逸れたが、ではADIというのはどのようにしてつくられるのだろうか?
ある物質を一生涯毎日摂取し続けて健康に影響がない量を探るなんて、寿命の長い人間でやろうとすると、ものすごい時間がかかるし、ましてや倫理上、人体実験になるのでできるはずもない。ではどうやるのか? そこでマウスやラットといった実験動物の登場である。
この動物実験で、NOAEL(Non Observed Adverse Effect Level無毒性量)という実験動物が一生涯食べ続けても大丈夫だった(健康影響が無かった)量をまず導き出す。その後、この値に実験動物と人との種の違いにより10倍、人と人との個体差を考慮してさらに10倍と合わせて100倍の安全係数をかけて、人が一生涯食べ続けてもなんら健康被害が出ない量としてADIが算出される。例えば、物質Aの動物実験結果から導き出されたNOAEL(無毒性量)が100mg/kg 体重/日であったとすると、それを人間に当てはめるために設定する物質AのADIは1 mg/kg 体重/日(=100mg÷安全係数100)となるのだ。農薬も化学物質であるのでADIの決め方も同じだが、農薬は成分ごとに決められたADIを複数の登録作物の摂取量に応じて分配し、その分配された量を超えないように使用基準を決めるので、1つの登録作物に散布された農薬が仮に残留して人の口に入ったとしても、その量はADIよりもさらに低いレベルになる。詳しくは別の機会に紹介しようと思うが、このあたりが、直接口に入る医薬品などとは異なるところだ。
このように農薬には2重3重に安全性を高めるよう仕組まれているので、登録農薬を使用した農産物を一生涯食べ続けても健康に影響が出ることはないだろう。実際に、農薬を使用した農産物を食べ続けて健康被害が報告された例はないと思うのだが・・・とんぼが知らないだけかな?
重要な記事
最新の記事
-
【注意報】水稲に斑点米カメムシ類 県内全域で多発のおそれ 高知県2024年7月16日
-
【注意報】イネカメムシ 県内全域で多発のおそれ 鳥取県2024年7月16日
-
30年目を迎えたパルシステムの予約登録米【熊野孝文・米マーケット情報】2024年7月16日
-
JA全農、ジェトロ、JFOODOが連携協定 日本産農畜産物の輸出拡大を推進2024年7月16日
-
藤原紀香がMC 新番組「紀香とゆる飲み」YouTubeで配信開始 JAタウン2024年7月16日
-
身の回りの国産大豆商品に注目「国産大豆商品発見コンクール」開催 JA全農2024年7月16日
-
秋元真夏の「ゆるふわたいむ」鹿児島県で黒酢料理を堪能 JAタウン2024年7月16日
-
【役員人事】ジェイエイフーズおおいた(6月25日付)2024年7月16日
-
【人事異動】ジェイエイフーズおおいた(4月1日付)2024年7月16日
-
日清食品とJA全農「サプライチェーンイノベーション大賞」で優秀賞2024年7月16日
-
自然派Style ミルクの味わいがひろがる「にくきゅうアイスバー」新登場 コープ自然派2024年7月16日
-
熊本県にコメリパワー「山鹿店」28日に新規開店2024年7月16日
-
「いわて農業未来プロジェクト」岩手県産ブランドキャベツ「いわて春みどり」を支援開始2024年7月16日
-
北海道で農業×アルバイト×観光「農WORK(ノウワク)トリップ」開設2024年7月16日
-
水田用除草ロボット「SV01-2025」受注開始 ソルトフラッツ2024年7月16日
-
元気な地域づくりを目指す団体を資金面で応援 助成総額400万円 パルシステム神奈川2024年7月16日
-
環境と未来を学べる体験型イベント 小平と池袋で開催 生活クラブ2024年7月16日
-
ポーランドからの家きん肉等の一時輸入停止を解除 農水省2024年7月16日
-
JAタウンのショップ「ホクレン」北海道産メロンが当たる「野菜BOX」発売2024年7月16日
-
「野菜ソムリエサミット」7月度「青果部門」最高金賞2品など発表 日本野菜ソムリエ協会2024年7月16日