(295)残る力【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2022年8月19日
お盆休みが終わると夏も後半、秋の気配が色濃く出てきます。読もうと予定した本は半分も読み終えていませんが、もう一度、気を取り直さないとね。さて、少し昔話を。
高校時代、筆者が通っていた高校では第二外国語として英・独・仏・露・中、が選択できた。同級生たちの何人かはフランス語やドイツ語を選択し、そのまま第二外国語で大学受験をしていたようだ。筆者自身は英語ですら四苦八苦していたため、第二外国語も英語という極めて無難な選択をしたつもりだった。
しかし、その結果、ほぼ毎日英語の授業が複数コマあるような時間割になり、悲惨な高校時代を送ることになった。だが、不思議なことに高校時代に学んだ内容で現在も明確に覚えているのは、この第二外国語の英語の授業(高2と高3)の「内容」である。
高2の第二外国語の英語では、E・フロムの『自由からの逃走』の縮刷版が教科書だった。縮刷版とはいえ100頁近くはあったと思う。英語自体に苦労していたのに、例えば「権威主義的性格」などという日本語で聞いても想像力でいかようにも解釈可能な内容を初めて英語で学んだ時は頭がクラクラした記憶がある。分厚い正式な翻訳版を入手してじっくり読みつつ進めたが、非常に大変かつ面白かった記憶がある。
担当は当時の教頭先生だったが、一種の趣味のような授業であり解説の多くも英語よりは内容に関するものであった。筆者は文法や書き換えは非常に苦手だったため、こうした授業は肌に合った。大変申し訳ないが第1外国語の教科書の内容は全く覚えていない。
高3の第二外国語ではキリスト教文学を履修した。こちらの教科書はJ・バニヤンの『天路歴程』である。筆者はキリスト教徒ではないが、これは面白かった。第1に、1学年360人の同級生にもかかわらず、履修者が数人しかいなかった。第2に、神道と仏教が生活習慣化した世界で育った普通の高校生にとって、全く異なる世の中の見方を少しだけ解説してくれたからだ。このクラスはほぼ講義のみのため、生徒たちは聞いているだけだったが、ここだけは覚えている。「たとえわたしは死の影の谷を歩むとも、わざわいを恐れません」というところだ。キリスト教徒であれば有名な箇所(詩編:23-4)なのだろうが、当方は聖書に触れたこともなければキリスト教世界など全くわからない時だ。
授業中は我々を見ながら常に遥か遠くを見ているような感じで滔々と話す先生を見て、ザビエルが日本で布教を始めた頃の日本人は自分たちみたいな感じだったのかなどと日本史との関係ばかり考えていた思い出がある。
そういえば、高1の英語の授業で使われたテキストは、マルティン・ルサー・キング・ジュニアの「I have a dream.」である。今でもこのスピーチの最初の10行くらいは覚えている。
後年、さまざまな仕事や経験を経て大学で経営や企業倫理を教えるようになったが、その中で、あらためてこうした文献を読み直す機会に恵まれた。あれほど苦しんだ『自由からの逃走』が意外と普通に読めたり、『天路歴程』で使われている多くの聖書の引用をそれなりに現代社会の生活と結び付けて考えたり、「I have a dream.」の中の言葉の一部を間違えて覚えていたり...多くの気づきがあった。
中学1年で初めて英語を学んだとき、最初の教科書に出ていたのは確かBenとLucyという男の子と女の子だった。名前は憶えているが、その後の教科書に何が書かれていたかは全く覚えていない。だが、先に挙げたようないくつかの、いわゆる教科書ではないテキストから得た知見や気づきは今でも残っている。
これが恐らく時間という試練を耐え抜いた文章の力なのであろう。そう思うと、『源氏物語』や『平家物語』、『枕草子』や『方丈記』の冒頭など、多くの日本人がある年齢になると丸暗記した文章の力というものは凄いものだ。
**
さて、今の高校生たちが数十年後に思い出す文章は何なのでしょうか。
重要な記事
最新の記事
-
旧暦・新暦の2回あった行事【酒井惇一・昔の農村・今の世の中】第334回2025年4月3日
-
宮崎都城市が5年連続1位 2023年市町村別農業産出額 農水省2025年4月3日
-
【現場で役立つ基礎知識】全農土づくりセミナー総合討論から 水稲の高温対策へ基本は根張り重視(1)2025年4月3日
-
【現場で役立つ基礎知識】全農土づくりセミナー総合討論から 水稲の高温対策へ基本は根張り重視(2)2025年4月3日
-
越後姫プレゼントキャンペーン開催中 応募は4月20日まで JA全農にいがた2025年4月3日
-
乳しぼり体験と牛乳の飲み比べ「AKASAKAあそび!学び!フェスタ」に初登場 JA全農2025年4月3日
-
JA全農「スキみる」マッチョによるスキムミルクレシピの料理動画を公開2025年4月3日
-
開発途上地域の農林水産業研究を紹介 一般公開イベント開催 国際農研2025年4月3日
-
「令和7年3月23日に発生した林野火災」農業経営収入保険の支払い期限を延長 NOSAI全国連2025年4月3日
-
子どもの収穫米を子ども食堂に提供 新しいカタチのフードドライブ 相模原市2025年4月3日
-
「放牧をまんなかに。」 ファームエイジが新ロゴとタグライン 創業40周年記念ロゴも2025年4月3日
-
横浜ビジネスグランプリ2025で奨励賞受賞 YD-Plants2025年4月3日
-
AIとスマホで農作業を革新するFaaSサービスを開発 自社農場で実証実験開始 アグリスト2025年4月3日
-
亀田製菓とSustech PPAによる屋根上太陽光発電を開始2025年4月3日
-
遠隔操作で農業ハウスの作業効率を向上「e-minori plus」新登場 ディーピーティー2025年4月3日
-
【人事異動】全国酪農業協同組合連合会(4月1日付)2025年4月3日
-
【役員人事】 マルトモ(4月1日付)2025年4月3日
-
セール価格での販売も「春のキャンペーン」開催中 アサヒパック2025年4月3日
-
餃子に白ごはん 永瀬廉の食べっぷりに注目「AJINOMOTO BRANDギョーザ」新CM2025年4月3日
-
酪農・畜産業界データ統合プラットフォーム「BeecoProgram」コンセプト動画を公開 丸紅2025年4月3日