シンとんぼ(7)化学農薬使用量の50%低減2022年8月27日
今回は、ADIをもとに農薬の使用基準が決まる手順をみてみよう。
農薬の使用基準は、毎日の食事を通じて摂取する農薬の量がADIを超えないようにして作られている。そこで大事なのが日本人が1日あたりに食べる量を規定する必要があるが、これには厚生労働省の国民平均の一日摂取量を使う。それは、例えば、小麦約117g、ハクサイ約29g、みかん約42g、茶約3gという具合に農産物ごとに平均的な1日あたりの食べる量が算出されている。ここから少しややこしくなるが、農薬の使用基準の設定までをかいつまんで紹介しよう。
まずは、農薬なので効果が無いと意味がないので、最も効果が出る希釈倍数を各種試験の結果をもとに決定し、その希釈倍数で作物残留試験を行って経過日数ごとの作物残留量を計測する。
その上で登録作物ごとに効果の出る希釈濃度における作物残留量がわかれば、それをもとに登録作物毎の作物残留量合計がADIを超えないように作物ごとの農薬Aの作物毎の許容残留量を決め、それをそれぞれの一日摂取量で割って、最大で残ってもよい農薬残留基準値(濃度ppm)を決定する。
実際の決定順序とは異なるが、ADIと残留基準値の関係を理解するための例を紹介しよう。
ADIが10mg/kg体重/日である農薬Aが、小麦、ハクサイ、みかん、茶に登録があり、農薬Aの農薬残留基準値(作物残留が許される上限濃度)が、それぞれ5ppm、10ppm、15ppm、20ppmとしよう。そして、それぞれの作物に農薬残留基準値上限の農薬が残っていたと仮定すると、それぞれの作物に含まれる農薬Aの量は、小麦117g(=117,000mg)×5ppm≒0.6mg、ハクサイ29g(=29,000mg)×10ppm≒0.3mg、みかん42g(=42,000mg)×15ppm≒0.6mg、茶3g(=3,000mg)×20ppm≒0.1mgとなり、合計すると約1.6mgとなる。つまり、農薬Aが残留基準値上限まで残留している登録作物全てを食べた場合の1日あたりの農薬A摂取量は約1.6mgとなり、体重50kgの人の1日あたり摂取許容量500mg(=ADI 10mg×50kg)を大きく下回ることになる。
あとは、実際の残留試験結果をもとに、最大で農薬が残留したとしても定められた作物ごとの許容残留量を超えないように散布回数や収穫前使用日数を決めていくことになる。
と整理してみたものの、ADIから農薬の使用基準が作られる仕組みはかなり複雑でわかりづらいものだ。ただ、農薬の使用基準って、もともと100倍の安全を考慮して設定しているADI(1日あたり摂取許容量)をもとにして、それすら超えないように決められており、まさに石橋を叩いて渡る的に農産物の安全性を担保しようとしている点は評価できる。
あとは農薬使用基準を守って正しく生産すれば農作物の安全は担保されることになるだろうが、この点は、世界一勤勉で真面目な日本の農家であればまず間違いないだろうとシンとんぼはみている。
重要な記事
最新の記事
-
地域を守る闘いに誇り 元農林中金副理事長 上山 信一氏(1)【プレミアムトーク・人生一路】2025年4月1日
-
地域を守る闘いに誇り 元農林中金副理事長 上山 信一氏(2)【プレミアムトーク・人生一路】2025年4月1日
-
JA全農が新規採用職員入会式 石川佳純さんが激励 279人に辞令2025年4月1日
-
ベトナム産米、2万トンの日本向け輸出計画 国産米に近いジャポニカ米 きらぼし銀行支援2025年4月1日
-
政府備蓄米 第2回入札は100%落札 60kg2万722円2025年4月1日
-
米卸の在庫 集荷業者外からの仕入れ増える 2月末2025年4月1日
-
全国の総合JA数 496 4月1日現在2025年4月1日
-
【農業機械安全性検査新基準の解説】機械の側から危険な作業をなくす 農研機構に聞く(1)2025年4月1日
-
【農業機械安全性検査新基準の解説】機械の側から危険な作業をなくす 農研機構に聞く(2)2025年4月1日
-
7年産米概算金は先物市場の価格が参考に【熊野孝文・米マーケット情報】2025年4月1日
-
活力ある土づくり実践集団連絡協議会研修会を開催 JA全農山形2025年4月1日
-
山あいで育った「宇和茶」の甘みと香り 遠赤外線製法でじっくり乾燥 JAひがしうわ2025年4月1日
-
ササニシキのDNA継ぐ新たな神話 大崎耕土が生んだ「ささ結」 JA古川2025年4月1日
-
北総台地で育った「べにはるか」使った干し芋 サツマイモ本来の自然な甘み JA成田市2025年4月1日
-
和歌山の旬を産地直送で「ココ・カラ。和歌山マルシェ」オープン JAタウン2025年4月1日
-
JAみやざき「Tege Mahalo(テゲマハロ)」リニューアルオープン JAタウン2025年4月1日
-
【人事異動】農林中央金庫(4月1日付)2025年4月1日
-
【役員人事】農林中金アカデミー(4月1日付)2025年4月1日
-
埼玉県で開催予定の第75回全国植樹祭に木製品寄贈、木育授業も実施 農林中金2025年4月1日
-
300名にプレゼント「農作業スタートダッシュ応援キャンペーン」4/1から開催 デンカ2025年4月1日