コロナ対策の共同体間格差【森島 賢・正義派の農政論】2022年8月29日
表題の「共同体間格差」は「都道府県間格差」のことである。「県間格差」といってもいい。
あえて「県」といわずに「共同体」といったのは、「県」が持っている中央政府の下部機関的性格ではなく、「県」が持っている「共同体」的性格に焦点を当てたかったからである。
それは、「協同組合」的性格といってもいい。そして、それは死語となりつつある「社会主義」的性格といってもいい。それがコロナ対策のなかで見られる。
いま、コロナ禍のさなかにあって、多くの県は、切磋琢磨しあい、持っている力を十二分に発揮して、対策に当たっている。切磋琢磨は、国民の意志から離れ、官僚主義に陥りやすい社会主義的な組織にとって、不可欠のものである。各県は、官僚主義をどう乗り越えているか。
ここで、各県のコロナ対策の実態をみるのだが、その成果には濃淡がある。
上の図は、コロナによる災禍を、県ごとの人口10万人あたり死亡者数でみたものである。
通常は、感染者数でみるのだが、政府は感染の当初から検査を制限し、ごく一部しか感染を認めていない。そうして、コロナ禍の全体像を隠し、軽微に見せ、対策の失敗を隠蔽しようとしてきた。
それゆえ、コロナ禍の全体像を見るには、死亡者数でみるしかない。死亡者は隠せない。だから、全体像を忠実に反映している。
さて、この図をみると、新潟のように、5人という少ない県もあるし、大阪のように、67人という多い府もある。その差は、13倍である。
なぜ、これほどの大きな差があるのか。
◇
コロナ禍にみられる県間の差には、自然的および社会的な、様々な原因があるだろう。その中で、大きな原因に、コロナ対策の県間の差があると考えられる。
このことは、各県に、コロナ対策についての裁量の、大きな余地があることを意味している。
県民のために、この裁量を活用した県は、コロナ禍を小さく抑え込むことが出来てきたし、活用しなかった県は、コロナ禍を大きくした。
これは、県間の切磋琢磨の結果である。そして、これは、県民のために、という強い意志の結果でもあるし、それを実現できる民主的な医療組織が成し遂げた結果でもある。
◇
こうしたことは、中央政府という中央集権的な大きな組織では不可能だろう。コロナ禍の現場から遠く離れているからである。
それは、県という共同体のなかで、はじめて可能になる。県という規模が、民主制を発揮できる最適規模なのだろう。
そのためには、権限と財源を、中央政府から地方政府である県という共同体へ、大幅に移譲することが不可欠である。そうすれば、互いに切磋琢磨しあいながら、学びあいながら、目的を達成することができる。
このことは、コロナ対策だけに限らないだろう。他の多くの社会活動の分野にも当てはまるだろう。
その先には、共同体という半独立的な基礎組織で構成する連邦国家がある。それは、わが国の農協組織との強い親和性がある。
(2022.08.29)
(前回 日本のコロナ死者数は主要国で最多)
(前々回 米欧型自由は偽物)
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