日本のコロナ禍は最悪状態【森島 賢・正義派の農政論】2022年9月5日
多くの人たちの関心は、いま、国葬問題や旧統一教会問題に、向けられていて、コロナ問題は、影を薄めている。
だが、日本のコロナ禍は、コロナが始まった以後の最悪の状態にある。それだけではない。世界のなかで、最悪の状態である。
こうした状態を、政府は見ようとしない。つまり、コロナの感染者の全数把握をやめようとしている。それだけではない。感染者になったが、隔離を拒否され、自宅で蟄居させられている人びとに対して、治療の手を抜こうとしている。
こんな非人道的なことが、あっていいものか。
上の2つの図のうち、上の図は、感染が始まって以後の、死者数の推移である。いま、その数は、毎日のように最多記録を更新している。まことに、痛ましい限りである。
コロナ禍を見るとき、通常は感染者数でみるのだが、政府が把握している数は、実際の感染者数の一部でしかない。実際の感染者数を隠している。だから、感染の全体像は見えない。それゆえ、死者数で見るしかない。
下の図も死者数である。世界の主要国のうち、人口が1000万人以上の国について、最近1週間の1日あたり平均死者数を、人口100万人あたりで見たものである。日本は、主要国のなかで最悪である。
このように、日本のコロナ禍は、いま、最悪の状態にある。
◇
何が原因して、こうした惨状をもたらしたのか。
それは、直接には、検査と隔離と治療の不足にある、という。これは、直接にかかわる医療関係者の努力不足、という問題ではない。
予期できない流行だから、当初の不足は、やむを得ないだろう。だがその後も、いっこうに改善しようとしない。そうして、最悪の状態にしてしまった。これは、医療体制の問題である。
だから、これは政治の問題であり、社会の問題である。
◇
検査や隔離には費用が必要だ。が、資本主義のもとでは、出資者は利益を求める。また、治療のためのワクチンと治療薬の開発には多額の費用がかかり、しかも経済的なリスクが大きい。だが、資本主義のもとでは、出資者は経済的なリスクを嫌う。
こうした経済のありかたに問題がある。これは、資本主義という宿痾をもっている社会に、深く根ざしている。
◇
コロナと真正面から対峙できるものは、資本主義ではない。「新しい資本主義」でもない。コロナ禍を、まったく違った価値観で、社会観で、根本的に否定するものである。そうした社会に変革することでのみ、コロナ禍を最小限に抑えることができるだろう。
そしてそれは、コロナのような医療問題だけではない。農業問題、教育問題、地球環境問題に共通するものである。
最悪状態なのは、コロナ禍だけではない。いまや、日本社会の全体が最悪状態にある。
だが、それに立ち向かう政治集団もないし、社会集団もない。
(2022.09.05)
(前回 コロナ対策の共同体間格差)
(前々回 日本のコロナ死者数は主要国で最多)
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