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主食用以外の用途開発 コメの持つ機能性成分を全て使うという発想【熊野孝文・米マーケット情報】2022年9月6日

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化粧品のことについては疎いので、この分野に触れるのは気が引けるが、有機米を原料にして製造したバイオエタノールを使った化粧品は国内ばかりでなく海外でも販売されるようになっている。その化粧品分野に今度は籾殻の成分を活用した化粧品が人気になっているそうである。籾殻には20%程度のシリカが含まれており、これを水溶性にして化粧品の原料にしているとのこと。シリカは化粧品だけでなく様々な用途に使える可能性があるとのことで、籾殻を含むコメ全てを微細粉化する製粉機で高機能性原料として提供するという事業に乗り出した企業がある。

気流粉砕機の構造気流粉砕機の構造

(株)静岡プラントは、籾米を丸ごと全粒粉にするという機械を作っている。サイクロンミクロンと名付けられたこの製粉機は、機内に高速回転するセラミックで作られたインペラが装着され、このインペラが旋回気流を発生させ、穀類を超微細に粉砕することが出来る。粉粒の大きさは1000分1ミリと言う微細なもので水に溶かせば点滴にも使えるほど。

同社はこれまで、いわゆる米粉製粉機としてこの機械を製造・販売してきたが、籾殻に含まれる水溶性シリカが注目されていることに着目、糠や胚芽に含まれるビタミン、食物繊維等が米粉に取り入れられれば、機能性食品として新たな市場が出来ると判断、籾の全てを粉砕するという全粒粉にすることにした。

同社が作成した「もみ丸ごと全粒粉説明資料」によると、まず、籾米の構造として外側が籾殻で、その内側に果皮、種皮、湖粉層といったぬか層があり、下部に胚芽、中が胚乳(白米)である。一般的には籾摺りして籾殻を除き、玄米を搗精して白米を食べるという製造工程を辿るが、この行程での歩留りは約70%になる。ぬかは古くからこめ油やぬか漬けの原料など様々な用途に使われているが、籾は炭水化物が8割、ケイ酸が2割含まれているにも関わらず3割が有効活用されず廃棄されている。使われている用途と言えば土壌改良材や肥料、家畜の飼料、敷料等が多い。この他、炭化処理して水の浄化剤などに使われるケースもあり、全てが無駄に破棄されているわけではないが、同社では粉末化してより付加価値の高い商品の原料として活用できるのではないかと考えた。

籾殻を食品として活用しているところがないわけではなく、籾殻を微細粉したパウダーをミラクルパウダーとして売り出しているところもある。このパウダーをヨーグルトに混ぜて食べると必要な食物繊維が摂取できるという商品。また、水溶性シリカには保水機能があるという事でアトピー性皮膚炎の人向けにスキンジェルを商品化した薬品会社もある。

自治体の中には、富山県射水市のように植物性非昌質シリカの大量生産に乗り出したところもある。「もみ殻シリカテクノロジー」と題して、籾殻バイオマスを大きく進化させ、「田園の鉱山」として籾殻バイオマスを大きく進化させるというビジネス戦略。

このプロジェクトで非昌質シリカ灰を製造することに成功、この用途として肥料としてイチゴや水稲の肥料として使用されている。ケイ素には生体の再生・構築・補強・支持を手助けすることや不要物質の吸着排出、抗菌、抗ウイルスの作用も報告されていることから肥料以外では化成品資材、吸着剤、ろ過材、飼料、コスメ用途など幅広い用途への活用が考えられている。

静岡プラントは現在、籾米を製粉した「全粒粉」の商品サンプルを様々な分野に配布しているが、幸いなことに学校給食関係者などからその機能性が評価され使用してみたいという問い合わせが来ているという。もう一つ付け加えたいのは米粉製粉機と言うと道の駅にあるような小型のものを想像しがちだが、同社の気流粉砕機はインペラの大きさにより、小型から大型まで製粉能力を変えられことで、小さいものは直径が15センチほどだが、受注が決まった最新のものでは80センチもあり、これで年間3万トン製粉できるものもある。

同社が全粒粉というコメの機能性を最大限引き出すという商品製造にこだわった動機は、なによりもコメの需要を増やしてかつ付加価値のある商品を世に送り出し、稲作農業に貢献したいという思いがあったからで、この全粉粒のサンプルを受け取った様々な業種がその機能性を評価して新たな商品を開発すればコメの需要は間違いなく広がる。

コメの需要を「主食用」と言う括りだけにしていてはコメの消費は減る一方である。主食用米を減らすために年間3500億円もの税金をつぎ込むぐらいなら、こうした主食用以外の用途開発を支援した方がコメの末来を明るくするに違いない。

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