国葬問題にみる米欧型民主主義【森島 賢・正義派の農政論】2022年9月12日
安倍元首相の国葬問題が、世間を騒がせている。野党や多くのマスコミは、多額の国費を使って国葬を行うことに反対だ、としている。つまり、カネの問題に矮小化している。
だが、これはカネの問題ではない。民主主義の問題である。
多くの世論調査の結果をみると、国葬に賛成の国民は半数以下である。日本が民主主義国なら、国葬をやめるべきである。だが、政府はやめようとしない。
では、仮に、賛成が半数より1人でも多ければ、国葬にすべきか。肯定するのが米欧型の民主主義である。日本は半数より少なくても肯定するのだから、米欧型の民主主義でさえない。
これに対峙する民主主義がある。それは、賛成が半数より僅かな人数しか多い、というときには、すぐに結論を出さないで議論を続ける、という民主主義である。それが村落の民主主義である。共同体型民主主義といってもいい。農協など、協同組合型民主主義といってもいい。
上の図は、安倍氏の国葬についての世論をみたものである。主な5つの結果であるが、全てが「反対」か「評価しない」という回答のほうが多い。
これをみれば、民主主義国の政府なら、断念するだろう。だが、政府は強行する姿勢を崩していない。せめて、再検討したらどうか。
◇
これは、カネの問題ではない。費用は16.6億円というから、1.25億人の人口で割り算すると、1人あたり13.3円にすぎない。
与野党で、また多くの国民を含めて再検討を行えば、カネの問題ではなく、安倍氏の政治家としての評価にまで、深く理解し合うことができるだろう。それは、安倍氏が活躍した、ここ十数年の、日本の政治の評価にもなるだろう。
もちろん、与党には与党の評価があるだろう。野党には野党の評価があるだろう。それを徹底的に議論し、国民に示したらどうか。それを、互いに理解しあいながら、そして大多数の人が弔意を表したい思っているのだから、大多数の人が納得するように葬儀の形を決めればいい。
◇
ここで紹介したいのは、ある農協の組合長選挙のときのことである。
この農協で、ある組合長が、選挙で93%という大多数の支持を得て当選した。選挙中には、組合の運営について徹底した議論が行われた。
選挙直後の新組合長の挨拶は、「不支持の7%の人たちにも納得してもらえるような運営をしたい」というものだった。
これこそ、米欧型民主主義に対峙する、共同体型民主主義であり、真の民主主義ではないか。
安倍氏の国葬問題にかかわる政治家は、この組合長を見習ったらどうだろうか。
【追記】昨日の沖縄知事選で玉城デニー氏が絶対得票率29%(投票率58%X得票率51%)で圧勝した。各野党は、ここから何を学ぶか。
(2022.09.12)
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(前々回 コロナ対策の共同体間格差)
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